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猫と金髪  作者: co
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 わずかに開いたドアの隙間から、金髪と青い目だけが覗いた。


 まず近くの女二人にちらりと目を向け、

 すぐに君島に視線を固定し、

 スっと微笑んで、言った。


 人をバカにするような、高い声で。




「帰れよ。卓也はネコなんだ。君とは合わない」




 そしてドアはパタンと閉められた。



 10秒以上、沈黙が続いた。

 君島がまず息を吐いた。

 女二人が顔を見合わせ、目を見開いて首を傾げた。

 そして真由美が叫んだ。

「なに……それ。嘘ついてたのあなたじゃない!」

 真由美が君島の腕を振り払った。


 え?何?あ、もしかして、と女二人が次々と推理を披露していく。


「卓也は私たちだけじゃなくて、この子とも出来てたってことよね?」

「しかもこの子、男なんでしょ?」

「しかも本命はさっきの外人なんでしょ!」

「あなただって振られたのよ!秋ちゃん!」

 得意気に、憎々し気に、真由美が顎を上げて君島を見下ろした。


「ばかばかしい……。ホモだったなんて」

「やだ。気持ち悪い」

「ネコって何?」

「知らないの?猫ひろしよ」

「猫ひろし?坂本君が猫ひろしって何?」

「だから、さっきの金髪が舘ひろしなのよ!」

「なんなのそれ?」

「ググりなさいよ!」


 女二人は駆け足で階段を下りていった。

 真由美だけは君島に目配せした。



「またね。私そういうの嫌いじゃないわ」



 君島だけが真っ青のまま、今の出来事をリピートしていた。

 しかし何度リピートしても同じだ。


 さっきの金髪は誰だ。

 あの青い目は誰だ。

 なんだこの筋は。

 展開は。


 ダッシュで坂本の部屋の前に立ち、そのドアを連打した。

 怒りのあまり声が出ない。

 無言の連打に坂本の部屋の中から応えはなかった。

 怒りの収まらない君島は、次に原田の部屋に向かった。

 何もかも原田の責任だと思った。

 全部原田の指図で進んだことなのだと思った。

 あの金髪も原田の差し金なのだと。


 まず呼び鈴を連打した。

 そしてドアを直接拳で連打した。

 そしてやっと声が出せるようになった。

「浩一!浩一!なんだよあれ!浩一、何やってるんだよ!」


 しばらくしてから声が聞こえた。

「やかましい」

 それから鍵が開けられた。

 ドアを開けて姿を現した原田が君島を見下ろして口を開いた。


「早かったな」


 その言葉で君島が口をつぐんだ。

 早かった、って、言うか?

 ついさっき修羅場を終了したところだ。

 聞こえていなかったとでも言うのか?


 君島が顔を上げて息を吸って、反論しようとしたときにまた原田が言葉を続けた。


「あれ?誰もいないのか?」


 再度君島は、口をつぐんだ。

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