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猫と金髪  作者: co
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 このあたりではそこそこの私大で順調に単位も取得し、就職も決まり卒論ももうすぐ完成。

 順風満帆の学生時代最後のクリスマスを間近に控え、バーテンのバイトで貯めた金と引っ掛けた女子を上手くやりくりすべく、坂本卓也22歳は自慢の1LDKの掃除に勤しんでいる。

 ここの賃貸アパートは間取りが変わっていて女子に評判が良い。

 なんか、無駄な感じが贅沢に見える。

 だそうだ。

 なんでも水廻りの効率を考えていない間取りらしく、LDKと寝室に平行して風呂トイレが並んでいる。

 専門家が見れば、勿体無い、と間違いなく言われるらしい。

 そんな無駄なアパートの2階に坂本は住んでいる。

 もちろん家賃は安くはない。

 だから学生はあまり入居していない。

 二階建てで全6部屋に、学生は2人。

 もう一人は生意気にも国立大学の1年生が、坂本の隣の角部屋に入居している。

 もちろん角部屋は、坂本の部屋よりも家賃が若干高い。

 もちろん、空き部屋がここしかなかったからここに入ったまでのことで、もし他の部屋が、坂本と同じ家賃の部屋が空いていればそこに入っていたはずだ。

 なにしろ国立大生だ。貧乏な国立大生だ。

 貧乏な国立大生が一体どうしてこんなアパートに来るんだ!と結局怒りを膨らませてしまうのだが、その新入生は礼儀正しくタオルを持って挨拶にきたので許してやることにした。


 12月も半ばを過ぎて冷え込みも厳しくなり、バイト先のバーのエアコンもかなり設定温度を上げている。

 大きな店ではないが客の入りはコンスタントにあり、赤字ではない。

 それはバーテンである自分の力も大きいはずと坂本は自負している。

 なぜなら、自分はモテる。

 自分目当ての女性客は後を引かない。

 時々気に入ったり気が向いたりするとお持ち帰りすることもある。

 付き合う相手が複数なのはいつものことで、しかしスケジュール管理は完璧なので修羅場の経験はない。

 今現在付き合っている相手は、不倫相手も含めて4人。

 イブに会う約束は二人としている。

 時間差デートは坂本の腕の見せ所であり、もう綿密に段取りは組んである。

 と言っても、一人は店に来てもらいそのまま相手の部屋へなだれ込み、その後シンデレラ候で急用を捏造して自宅へ急行して待たせているもう一人とクリスマス。

 不倫相手とはその後のクリスマス当日にデートし、残りの一人はイブイブにデートすると言う体力にモノを言わせる強攻策。

 そのイブイブが今日。

 バイト前に迎えに来る彼女と同伴出勤するのだ。

 つまりバイト前にまず一度本命でもない彼女を裸に剥いちゃうということだ。

 俺って最低、と笑みを噛み殺して坂本は部屋の掃除に勤しんでいる。


 日が傾いてきて部屋が暗くなり、そろそろ電気をつけようかと窓辺で室内を振り向いたときにメール受信の音がした。

 そろそろ彼女が来る頃だから、とまた微笑んでメッセージを確認した。


『ごめ~ん、明日お店に行けなくなっちゃったから今からプレゼント持っていくね fromマリ』


 え~~~~~~~っ????!!!!!

 え~と、マリ、マリは明日店で会う予定だった彼女だ、これから来る彼女はマユ、明日ここで待ってるのがマイ、奥様がマナ。

 何の因果か知らないが、坂本はマのつく名前の女に弱い。

 そんなことはどうでもいい。これからマユがくるのにマリまで現れるのは非情にマズい。

 慌ててメールを返す。

『今日は忘年会で遅くなるから部屋にはいないよ。プレゼントはまた今度でいいよ』

 かなりの速度で打ち込み速攻で送信したのだが、メールというのは相手が読んだかどうかの確認が取れない。

 まずいなぁ……。

 メールを読まなかったり読んでもここに来る可能性が無くはないから、マユが来たら出かけるか。

 せっかく掃除したのに無駄になるけど、ま、明日もマイが来ることは変わりないんだし。

 つるべ落としに日が落ちて、暗くなった窓辺でため息をついたときにチャイムが鳴った。

 マユだ。

 微笑んで玄関に向かい、途中で部屋の電気をつけようかとスイッチに指を置いた時に外から携帯の着信音が鳴った。

 聞きなれたメール着信音。

 聞きなれた、坂本の彼女の誰かの着信音。どの彼女かが判らない。


 もしや、


 もしやそれは、マリの携帯?そして今着信を響かせたメールは、俺が出したもの?

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