万年筆
萎えてしまったけれど・・・・・・いちおう、見つけてみるか。
乗りかかった船よ。
荷物をまとめて出発する。
駅で列車を待っていると、いつの間にかきていたジュリオ爺さんに声をかけられた。
「地図の行き先ならこれだよ。昨日聞きそびれたが、エミコは何を書いているんだったかな」
「だからあ、歴史ものですって」
ジュリオ爺さんは、懐から高価そうな万年筆を私に握らせた。
「こんなのいただけない」
「まあまあ、受け取っておきなさい。きっとキミの役に立つだろうから」
ジュリオさんは何者なの。
ただの知り合いにここまでするなんて、変だわよ。
それも・・・・・・昨日会ったばかりで。
ジュリオさんは、窓越しにこういったわ。
「君なら世間で出ているカエサルの遠征ものより、大航海時代やルネサンスの物語より、いいものがかける気がするんだよ。それはいわば、保険だな。うははは」
保険とはなんですか、保険とは・・・・・・。
「わかりました。それじゃあ、利子は多めに返しますよ」
「利子なんかいらんよ。わしはお前さんに確実な成功とスポットライトを約束させることができるからのう」
「え・・・・・・」
尋ねようとする前に、列車は発車の時刻を迎えた。
イスに深く腰掛けると、アナウンスが流れた。
「本日はアムステルダム行きの列車をご利用になられて、まことにありがとうございます」
待て・・・・・・。
アムステルダムって、全然違う方向では・・・・・・。
ジュリオさん、嘘つき・・・・・・。
なぜアムステルダム・・・・・・?




