表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/3

プロローグ




何も無い空間でくるくるくると彼女は踊る。



上も下も右も左もない、真っ暗な空間。



鈍く光る鎌を手に黒い髪を舞い躍らせて、くるくるくるくると回り、踊る。



その頬を濡らしながら、か細く唄いながら、規則もなくステップもなくただただ思うがままに、くるくると踊る。




心優しき一人の死神。




流す涙は死に行く人を送る導となり、



唄う言葉は魂を優しく包み込む。




人のことが大好きな死神。



今日もまた、1人で泣きながら、踊りとも言えない踊りを踊ってる。











静かな夜だった。

月明かりの無い、新月の夜。星明りだけが部屋を照らしていた。



『………だれ…?』



真っ白い部屋の中央、簡素なベットに寝ている少年が、ふと視線をドアへと向ける。



『…おねぇさん、だぁれ?』



『誰、かしらね。好きなように呼べばいいわ』



黒いフードに星明りを受けて鈍く光る鎌を手にした少女が静かに言う。

彼女はベットの脇に立って少年を見る。



『ぼく、しぬの?』



『……えぇ。迎えに来たのよ』



『おねぇさん、ないてるよ。かなしいの?ぼくがしぬから?』



『泣いてなんかないわ』



『なかないで、なかないでおねぇさん。ぼく、おねぇさんがむかえにきてくれてよかったよ。ぼくのためにないてくれる。おかあさんもおとうさんもみんな、ぼくのためにないてくれる。これいじょううれしいことはないよ』



にこっ。っとあどけなさの残る顔で笑う少年。

少女はただ無言で頬を涙で濡らしながらも鎌を少年にあてがう。



『ぼくはね、うまれてきてよかったとおもったよ、おねぇさん。さいごにそばにいてくれて、ないてくれてありがとう』



静かに泣きながら少女は鎌を振り下ろした。

穏やかな顔でベットに横たわる少年にそっと触れて部屋をでた。



『…どうか安らかなる眠りを……私には祈るしかできないけれども』






命を刈り取る私が祈るなんておかしいかもしれないけど、どうか





死した人たちに安らぎと安息を与えてください




全てのいとしい人々に、残酷なまでに平等な愛と慈悲を与えてください





私の流した涙の数だけ




罪が許されればいい




私の流した涙が、人の心を洗ってくれればいい





どんな人でも、私は最後に傍で泣いているから





世界に愛されていることを知ってください





世界に望まれていることを知ってください




私は、傍にいます




命尽きるその瞬間まで・・・







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ