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勘違いの代償

作者: 爱丽丝
掲載日:2026/03/19

短めの短編小説です。

最初の勘違いは、ほんの小さなものだった。

「最近さ、あの子とよく話してるよね」

何気ないふうに言ったつもりだったのに、声は少しだけ尖っていた。

彼は一瞬だけ考えてから、

「まあ、席近いし」

とだけ答えた。

それだけなのに。

私は勝手に、“否定しなかった”ことに引っかかった。

ああ、やっぱり。好きなんだ、あの子のこと。

本当は、違ったのかもしれない。

でも私は、確かめなかった。

代わりに、勝手に決めつけて、勝手に距離を取った。

「最近、冷たくない?」

帰り道、彼がそう言ったときも。

「別に」

素っ気なく返した。

違う。

冷たくしたかったわけじゃない。

ただ、期待してるって思われたくなかった。

でも

「……なんかあったなら言えよ」

その言葉すら、私は曲げて受け取った。

“面倒くさいな”って、思われてる。

そう感じてしまった。

それから私は、さらに間違えた。

わざと、彼の前で他の男子と話した。

楽しそうに笑ってみせた。ほら、私だって平気だから。

そんなつもりだったのに。彼は、何も言わなかった。

ただ一度だけ、少しだけ困ったような顔をして。

それだけで、私はまた決めつけた。

ああ、興味ないんだ。私なんて、どうでもいいんだ。

 気づけば、私の中の“彼”は、どんどん都合よく変わっていった。優しかったはずなのに、冷たい人に。

不器用だったはずなのに、無関心な人に。

本当の彼なんて、もう見ていなかった。

「ねえ、あの子のこと、好きなんでしょ?」

ある日、我慢できなくなって聞いた。笑いながら。

どうでもいいみたいに。でも本当は、違った。

否定してほしかった。必死で。

「……は?」

彼は、明らかに困った顔をした。

「別に、そういうんじゃないけど」

その曖昧な答えを、私はまた、間違えた。

「ふーん。じゃあ、頑張りなよ」

「……何を?」

「だから、付き合えばいいじゃん」

言った瞬間、空気が止まった。

彼は、しばらく何も言わなかった。その沈黙が、怖くて。

私はさらに、余計なことを言った。

「応援してるし」

終わった、と思った。そのとき、初めて。

「……お前さ」

低い声だった。

 今まで聞いたことのないくらい、冷たい。

「ずっと何言ってんの?」

 胸が、ぎゅっと潰れた。

「別に俺、あいつのこと好きとか一回も言ってねえけど」

「でも――」

「全部お前の中の話だろ」

何も、言い返せなかった。

「勝手に決めつけて、勝手に機嫌悪くなって」

彼の声は、静かなのに刺さった。

「で、急に突き放して」

「……そんなつもりじゃ」

「じゃあ、どういうつもりだよ」

答えられなかった。本当のことなんて、言えなかった。

好きだった、なんて。今さら。

「……もういいわ」

その一言で、全部が崩れた。

それから彼は、本当に私と話さなくなった。

避けられてる、ってはっきりわかるくらいに。

そして数日後。彼があの子と一緒にいるのを、見た。

前みたいに自然じゃない、少しぎこちない距離。

それでも、確かに並んで歩いていた。

ああ。

これでよかったんだ。

だって私は、自分で選んだんだから。

勝手に疑って、勝手に傷ついて、勝手に突き放して。

最後に、本当に突き放された。

帰り道。

スマホを何度も開いて、閉じた。謝りたかった。

全部、勘違いだったって。ちゃんと聞けばよかったって。

でももう、遅い。

「……ほんと、バカだな」

涙で滲んだ画面に、彼の名前はもうなかった。

最初の勘違いなんて、小さかったのに。

それを認める勇気がなかったせいで、

私は、全部を失った。


勘違いで決めつけないように...

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― 新着の感想 ―
切ない話ですね。これは救われないですが、まあ主人公がちょっとカスというか思春期真っ盛りで、こんな反応になるのは仕方ないかな、と言った感想です。うむ、色々考えさせられますね。勘違いというのは恐ろしいもの…
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