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Case.9 ──復讐──

ケイト・ウィーバーから一通の電話が入る。それはかつて中東の作戦で自身を拷問し、仲間を残虐な方法で殺害したテロ組織〝マズバハ〟の本拠地が漁港の埋立地にあるという情報だった。ブルーは仲間に何も言わずに暴走してしまい…

ブルーことエリス・アンフォーチュン一等巡査は戦友の形見である1966年式のシボレー・コルベットに乗って買い物に出かけていた。

まず最初の行先は食品から銃器まであらゆるものが揃っているウォルマートだ。

ブルーはこれまで作ってもらったクレジット・カードを一度も使ったことが無かったが、極貧の今、作戦を決行するのに頼れるのはこれしかないと考えたのだ。

そこでギリシャ産の濃縮オレンジジュース、アイロン接着のベルクロ、プラスチック製のガソリン携行缶、ケーブルタイ、クライロンのオリーブドラブ色の缶スプレー、金属製のパイプにブラックテープ、釘、銀一色のシンプルな外観をしたジッポライターとそのオイル、導爆線、チープカシオ、はんだごて、糸はんだ…様々な物を無造作にかごの中へと入れていった。

クレジットカード決済の最中、店員が明らかに買うものがおかしいことに気づいて決済を止めようとしていたが、この場面では自身の持っているバッジが最大限に役に立った。

同施設内にあるウォルマート・ガスでコルベットと携行缶への給油を済ませると、次に到着したのは昔LE6920ライフルを購入した時に訪れた退役軍人が経営している銃砲店だ。

そこではマグプル製のマグリンクを1つとP-MAGを10本、タラン・タクティカル・イノベーションズ製のマガジンベースパッドを10個とブラックヒルズアミュニション製の50発入り62グレインの高級弾薬を10ケース、キンバー1911用のウィルソン・コンバット製8連弾倉を6本とクリティカル・ディフェンス製の45ACP弾薬を3ケースとガイズリー製のピカティニーレール対応の着剣装置に放出品のM9銃剣、ヘリコンテックス製のダブルマガジンインサートを二つとフェロー・コンセプツ製のバックパネル、クライ・プレシジョン製のマルチカム・ブラックのコンバットシャツを上下にSAPI規格のクラス4アーマーを二枚と黒のドーランを購入した。

合計で凄まじい金額になったが全て36分割にして購入した。どっちにしろ、このマズバハ襲撃計画でブルーは死ぬ覚悟を決めていた為、ちっとも惜しくは感じなかった。

店主は「コヨーテや豚と戦争でもするのか?」と尋ねてきたが、「もっと危険な生物と戦争をする。」と返した。

ブルーは買い物を済ませてCLAWの本部へと帰ると武器庫の中で早速準備を始めた。

まずはP-MAGのベースパッドの中側をマイナスドライバーで押し付けながら外してタラン・タクティカル製のベースパッドを取り付けた。多少重量が重くなるが、これのおかげで弾倉の自重落下のスピードが速まる上に装弾数が5発増えるという圧倒的なアドバンテージを得ることができる。最初に装填する二本はマグリンクで繋げて再装填を瞬時に行えるジャングル・スタイルに変えた。

そうして改造したP-MAGと1911用のマガジンに弾を込めた。ブルーはこの弾を込める瞬間に充実感を感じていた。

かつて戦場で弾切れを起こして一度部隊が危険な状態に陥ったことがあったが、その時空輸で運ばれてきた補給物資に入った弾薬を込める瞬間は今でも忘れられない瞬間だ。真鍮同士がぱちぱちと当たるこの音は雨音や心音に匹敵する落ち着く音なのだ。

次に買ってきた濃縮オレンジジュースとガソリンを混ぜ込んでナパームを作り上げた。これを購入した導線とチープカシオをはんだごてを使って糸はんだで繋いで時限式のナパーム爆弾が出来上がると、コルベットのダッシュボードの下にそっと入れた。

ブルーは形見であるコルベットを自動車爆弾にしていた。

戦場で死ねず、結局この車に乗ることが無く自死を選んだ友に代わってこのコルベットが悪党に天誅を下し、やがて燃え尽きたコルベットが〝向こう側〟で元の持ち主であるハリソン伍長に会えると信じていたからだ。自分もどうせ向こう側に行くのだから、今度こそ二人でハイウェイをぶっ飛ばそうと心の中で思った。

そして武器庫に保管されていた埃を被った5.56mm弾の弾頭を外して鉄パイプの中に釘と一緒に放り込んで導火線を挿すと、ブラックテープで封をして即席のパイプ爆弾を10本ほど作ってベルトに備え付けたダンプポーチに無造作に放り込んだ。

次に自身が着用しているACPDの支給品であるファーストスピア製のシージRプレートキャリアのSAPI規格のアーマーをレベル4の物へと入れ替えると、背面のベルクロを剥がしてヘリコンテックス製のダブルマガジンインサートを取り付けた。これによって後ろ側のカマーバンドの繋ぎ目にM4用の弾倉を4本携行することが可能になる。

背面にはマガジンを3本装填したフェローコンセプト製のバックパネルの前側にアイロンでベルクを設けてタイラップを使って強引にシージRの背面にあるモレーパネルに貼り付けた。

最後にライフルだ。ブルーは今までずっと支給されたやや古い型番ののHK416Dを使用していたが、ずっと海兵隊で16インチと14.5インチを使い続けてきた大柄な彼女にとって10.3インチの416はあまりにも短く感じていたのだ。

そこでブルーは416の薬室が空であることを確認すると、テイクダウンピンをマガジンで押し込んで取り外すと、自前のERGOレール付きLE6920のアッパーレシーバーと交換し、フルオート射撃可能な14.5インチのフランケンカスタムを作り上げた。

そしてファンクションチェックを行い、ディスコネクターがきちんと作動するか空撃ちをして確かめた。仕上げにガイズリーの着剣マウントをERGOレールに取り付けた上で、ダストカバーを閉めて上からOD色の塗装を斜め縞模様になるように吹きかけ、M9銃剣を先端に取り付けジャングルスタイルのP-MAGを装填して決戦用のライフルが仕上がった。頭の中で海兵隊時代に教官に叩きこまれたライフルマンズ・クリードを詠唱した。

全ての準備を終えるとブルーの携帯に着信の振動が来る。ブルーはその電話を取ると相手はデリンジャー強盗団のケイト・ウィーバーだった。

「エリー、お前から受け取った携帯電話を調べた。奴らは港にあるポート・オブ・アニマルシティの近くにある漁港に潜伏しているようだ。私の情報筋によればそこで低賃金で働かされている中東系移民の従業員を装った連中がマズバハの構成員だ。そうやってアメリカで働く貧しい移民として自分たちを偽装し、腹の中ではアメリカへの復讐を第一に考えてるってわけだ。それに従業員が噛んでいるとすればある程度違法な密輸にも関与できるしな。お前の脅しでイサド・アル・ガイーブは今日到着の船で国外へ逃げようと考えていて、今日は他の関わりのない従業員は皆休みになってるんだ。チャンスは今日しかないぞ。」

「わかった…刺し違えてでもアイツを始末する。ケイト、助かった。」

「いや、礼は良い。こっちだってお前に見逃されたおかげで豚箱に入らずに済んだしな。検討を祈るぞ軍曹。グッドラック。」

ツーツーと電話が切れると武器庫の中にアンジーが入ってきた。

「おい、ブルー。お前何してんだ。どう考えてもお前にそんなものを買う余裕なんて無いよな?ルフィナもお前が様子がおかしいって言ってたぞ。まるで戦争にでも行くみたいだってな。」

「黙れ。」

「なんだよそよそしい──」

ブルーは思い切りアンジーの顔面に拳を叩きこむとその拳は頬にめり込んで思い切り地面に叩きつけられた。その衝撃で奥歯は折れて口に刺さって出血し、血を吐いた。

「これは私の戦争だ。誰にも邪魔はさせない。それにお前は、ずっと私の邪魔ばかりしてきた!私はお前をずっと友達だと思って接してきたが、常に私を裏切ってきたじゃないか!お前のせいで何度減給処分になったと思う!?それにお前はあんな新人と仲良くつるんで私に全く接してくれなくなったじゃないか!他の連中も私にだけ冷たい。助けを求めても冷たい反応ばかり…もう生きることにも耐える事にもうんざりしてるんだ!私は戦場で死ぬ!」

「悪かった…悪かったよ…私はお前を信頼してた。だから罪を擦り付けたりした。面白半分でな…行き過ぎたことしてたな…」

「謝ればいいと思ってるのか!」

ブルーの膝蹴りがみぞおちへとめり込むと、一瞬呼吸ができなくなった後に視界がブラックアウトしそうになったが、なんとかコルベットに張り付いて深呼吸を繰り返しアンジーは意識を保った。考えてみれば今までブルーに殴られたことが無かったため、これほど殺人的な威力があるとは想像もつかなかったのだ。本気でやり合えば殺される…そう直感した。

「カハッ…ケホ…たしかによ…私はお前に罪を擦り付けたから人のことは言えないと思う…だが、人付き合いが苦手だって昔言ってただろ?だから私も無理にお前を巻き込まないようにしてたんだよ…それにお前だって自分から人を遠ざけようとしてたことがあったじゃないか…でもお前は人を頼ろうとしない…何度もいうが擦り付けたことは謝る。だが、今のお前はただのめんどくさい寂しがり屋なんだよ。」

「私がお前に罪を擦り付けられたとき、銀行に行ったけど断られた。それに仲間にだって断られた。どれだけ私が勇気を出したと思ってるんだ。でも誰も答えちゃくれなかった。これじゃあ自分を頼る以外に無いじゃないか。勇気をあっけなく打ち砕かれ、挙句の果てには臭いと罵倒された。こんな私が生きてたってもうしょうがないじゃないか…それにちょうどいい死に場所がすぐそこにあるんだから。」

「死ぬなんて言うんじゃねえよ…私だって寂しいだろうが…なんだかんだでお前とはもう長い付き合いじゃないか。なあ、だから死ぬなんて言うな。何をしようとしてるのかだけでも教えてくれよ…頼むから…頼む…私だって結構無理して感情抑えてんだから…」

アンジーは普段の飄々とした態度を崩すと瞳から涙を流し始めた。クロウが死んだときもポールが死んだときもデイヴが死んだときも泣かなかったアンジーが泣き始めたことにブルーは動揺した。

「昔の仲間はみ~んな死んじまって…お前まで失いたくないんだよ…私がお前に罪を擦り付けたのは憎しみを持ってもいいから私に関心を持ってほしかったんだ…私と繋がっててほしかったんだ…行き過ぎた真似をしたってのはわかってる…私も人のことは言えない。お前と同じでめんどくさい女なんだよ…」

「…だとしてももう遅い。ノスフェラトゥ、カム。」

ブルーは用意した装備品を助手席に積んでノスフェラトゥと共にコルベットに乗るとその場を後にした。




アンジーは武器庫の中でただ一人、三十分ほど呆然としていた。ドラッグでもたばこでも酒でも抑えきれない感情が心の中で爆発してただただ涙を流すことしかできなかった。

そんな時だった。タイラーが武器庫の前に訪れると涙を流して頬に痣があるアンジーの隣に座った。

「おい、相棒どこ行ったかと思ってたが、どうして泣いてるんだ?大丈夫か?」

「ブルーがさ…死ぬっていうからよ…私の旧友がみんないなくなっちまうって思うとすげー寂しいんだ…デイヴもポールもこの前殺されて…私以外クロウに関わった人間がみんな死んじまうなんて嫌だ…嫌だよ…」

アンジーはタイラーに抱きついて胸の中で涙を濡らすと、ただの喧嘩ではないと気づいたタイラーはぎゅっとハグを返した。

「大丈夫だ相棒…ブルーを死なせたりなんかしない。それにウチの巡査部長は仲間は絶対に死なせないプロ中のプロだ。何かブルーの動向に手掛かりはないのか?彼女を救わなきゃいけない。」

「へ、へへへ…なあ、さっき私はお前にシビックのキーを借りたよな?」

「あぁ、買い出しに行くっていうから。」

「あいつにぶん殴られた時にしれっとコルベットの中にキーを投げ込んでおいたんだ。ただ私が考えなしに殴られるわけないだろ…」

「でかしたぞ、相棒!シビックのキーに仕込んだ盗難防止デバイスか!」

「へへ…へへへ…」

「よし、そうと決まればブルーの軌跡を辿るしかないな。そうと決まれば相棒、前の任務で私のスーパー・デューティが壊れて困ってるんだが…替えのライフルはあるか?」

「…!」

アンジーは武器庫の奥へと入ると隅で埃を被っていた巨大な黒いペリカン・ケースを取り出してさっきまでブルーが作業していた机の上に置いてケースを開けると、周りについている埃が空中に舞うのと共に中からFNハースタル製の7.62×51mm弾を使用する綺麗なSCAR-HアサルトライフルとシージRプレートキャリアが姿を現した。

「マジかよ、イカすな…というかこんな銃があったのか!?」

「それは前任者のクロウ・S・マーロンが使っていたライフルだ。奴は指揮能力こそピカイチだったが、フィジカルや射撃能力にはそれほど富んでなかった。故に近距離で確実に獲物を仕留められる高威力の弾丸を使用する銃器を好んでたんだ。今は過剰威力だとか反動が強すぎるだとかで7.62mmの弾薬を使うケースが減ってるから、誰も使わないままここに忘れ去られてたってわけさ。そうそう錆びたりはしないだろうが、一応数か月に一回メンテしてたから十二分に使えるはずさ。」

タイラーはSCAR-Hを受け取るとチャージングハンドルを引いて備え付けられているエルカンスコープを覗くと、地面に向けて空撃ちをした。

いつも使っていたスーパーデューティとは違うライフルの重みと感触に胸が躍った。

「ただ、いつも使ってるプレートキャリアじゃポーチに7.62mmの弾薬は入らないから、この前任者が使ってた物を借りよう。見た感じ私と同じSサイズだろ?カマーバンドを調整するだけで良さそうだ。」

「よし、やっとくよ。相棒は早くボスにこのことを知らせてくるんだ。」

「ラジャー了解!」

タイラーはそういって武器庫を後にするとすぐにプレハブにいるエマに報告し、全員に召集が掛かった。

「今から数十分前にブルーが単独で漁港に乗り込んだ。標的は不明だがこの前一緒に同行していたルフィナの情報から、おそらくこの前の事件で病院を襲ったマズバハの集団が標的だと考えられる。だとすると非常にまずい。あそこの漁港は大手のスーパーと業務提携をしているから従業員が無数にいる。たとえ素人であってもほぼ全員が敵だと推定すると単独で生き残れる可能性は例え歴戦の軍人でも限りなく低いだろう。それに埋立地で繋がっている陸地以外が独立しているから、包囲作戦も私たちの乏しい装備では難しい。逆に言えばそいつらを壊滅させることができればマズバハはアニマルシティから消えてなくなる。ブルーを生きて取り戻すことを最優先にして動くぞ。シバサン、グルカならここまで何分で着く?」

「10分…いや、5分で間に合わせてみせるよ。」

「上出来だ。もう既に戦闘は始まっているだろう。手遅れになる前に素早く動くぞ。アンジー、お前は狙撃だ。先だってブルーが危ないときに守ってやれ。」

「当たり前だろ。私のデルタ5なら絶対当たるさ。」

「ルフィナ、お前は優先してブルーを助けろ。お前の俊敏さがあればCQBは敵なしだ。」

「わかってますわ!それに、この前言ったこと謝らないといけませんもの…」

「ナイトウッド、お前は私と一緒に現場を指揮しろ。そしてそのSCARライフルの重みをしっかりと感じろ。それを持ってたやつもまた、私たちと同じ立場の人間だったわけだからな。先人から学ぶんだ。」

「わかってます、巡査部長。」

「よし、わかったなら出発だ。シバサン、今日は最速でぶっ飛ばすんだ!」




15分前、ブルーは海岸沿いの目的地の手前に就いていた。

あたりはカリフォルニアカモメの声がこだましていて、船の汽笛の音が静かに流れていた。

今日でみんなやこのコルベットとお別れだと考えていると、何やら穏やかな気持ちになっていた。

ようやく、ようやく、辛い人生から抜け出せて意味のある死を遂げられると考えた。

助手席に座っているノスフェラトゥにゆっくりと顔を当ててその匂いを嗅いだ。ノスフェラトゥもまた、私と同じ仲間を殺された者の一人だ。

「戦って一緒に死のう。」そうノスフェラトゥに囁くと意味を理解しているのかはわからなかったが、軽くブルーの顔を舐めた。

ブルーはコルベットのミラーを見ながら懐に仕舞っていた黒いドーランが入ったコンパクトを開くと、海兵隊にいたころを思い出しながら顔にフェイスペイントを施した。

そして、ファーストラインとカスタマイズしたプレートキャリアを着ると、スリングを使ってライフルを胴体前側に携行し、首のスロートマイクを引きちぎってコムタックのヘッドセットを無線に繋げ、上からオプスコアのファストヘルメットを被って顎のストラップを付けると、助手席にあるナパーム爆弾の時限装置を30秒に設定し、アクセル全開でコルベットを走らせた。

1速、2速、3速、4速とスピードを上げて旧式の車が出せる最高速に到達すると同時に、ドアを開けてノスフェラトゥを抱えながら飛び降りた。

漁港の入り口にいた警備はとてつもないスピードで突っ込んでくる車を避けると、入り口に突っ込んでそのまま自動車爆弾がさく裂し、コルベットの表面の赤い塗装はそのまま黒煙を伴った赤い炎へ昇華されるに至った。

周りにいた数名の警備はその爆発に巻き込まれて一瞬のうちに即死すると、遺体はすぐさま炭化して消え失せた。

ブルーはそんな黒煙の中を一酸化炭素を吸わないように素早く移動すると、カスタムしたM4ライフルを構えながら前進した。

あたりに駆けつけてきた中東系の男たちはフル装備のブルーを見るや否や危機を察し、腰に隠し持っていたトルコ製のクローン拳銃を構えようとするが、一瞬のうちにM4ライフルのフルオート射撃でハチの巣にされ、地面に体中の体液をぶちまけた。

そんな即死した遺体をブルーは丹念に確認射殺し、銃声で集まってきたAKを持った連中を指切りバースト射撃で薙ぎ払うと、ジャングルスタイルのマガジンを左側の物に切り替えて再装填した。

ここは漁港であるため、輸送用のコンテナが最大限に遮蔽物として活用しながら索敵を行った。

「ノスフェラトゥ、アタック!」

ブルーは手に持ったリードを離すと、人間では到底出せないスピードで走り出したノスフェラトゥは困惑している従業員の一人の喉を噛み千切ると、あたりの鮮血の雨を降らせて一心不乱に血を啜っている。

その従業員の悲鳴で駆け付けた雑兵を一人、また一人とM4ライフルのフルオート射撃で屠っていくと、マガジンキャッチボタンを押してジャングルスタイルマガジンを投棄し、プレートキャリアの前面に刺さっている35連マガジンを再装填してボルトキャッチを押すと、ライフルをハイレディポジションで保持し、近くの建物まで全力疾走。それにノスフェラトゥも追走する。そうして加工場の壁で停止するとガラス部分を割ってダンプ・ポーチに入ったパイプ爆弾を点火し、室内に投げ入れると多数の肉片と砂があちらこちらへ飛び散る音が聞こえた。

入り口を開けると中には死体の山があり、その従業員たちは魚の腹の中に麻薬を詰めている痕跡があった。

静かに歩きながらまだ損傷が浅く即死しているか不明瞭な肉体の首を銃剣で切り裂いて着実に安心を得ていく。

あたりからする血の鉄の臭いがブルーが昔いた戦場を思い出させた。

そしてブルーは久しぶりに本当の自分が目覚めていると認識した。

ブルーは元々、荒れた環境で育っていたこともあり、シニア・ハイスクールに通う年齢になるまではハッキリ言えば研がれ切ったナイフのように荒れきっていて、自分に少しでも敵意を向けた人間を反撃できないほど暴力を加えたりすることを当たり前のようにしていた時期があった。自分が父親にそうされていたからだ。

そんな性格が友を失い、教官にしごかれ、人生がどん底に落ちていき、心の病に侵され、年齢を重ねて人生観が変わったことで以前とは真逆なほどに大人しくなっていったのだ。

しかし、どれだけごまかしても自分が狂気に満ちた父親の血を引いていることは明確だった。何故なら、この正当化された一方的な暴力にブルーは陶酔感を感じていたからだ。

殺していい奴を好きなだけ殺せる、これだけ楽しいと感じることは他に無かった。

ブルーはそう感じながら工場内の遺体が動かなくなったことをチェックすると、裏口にあるドアを開いた瞬間、一人の大柄な男がブルーに飛びかかってきた。

自分より大きい人間に押し倒されたブルーは、ライフルを取ろうとするが圧倒的な力で右腕を押さえつけられると左手で首をギリギリと絞められた。

だが、すぐさまノスフェラトゥがその男の腕に噛み付くと、辛抱溜まらず手を離した男の腹に銃剣を突き刺して35発全てをフルオートで撃ち込むと、腹の肉は完全になくなって、一瞬綺麗な地平線が見えた。

内臓をぶちまけながら動けなくなった遺体をかわすと、弾倉を捨ててまた新たなマガジンを一本装填してプレスチェックを行った。

そうして物陰に隠れていると何やら奇妙なことに気づいた。

前側の建物から明らかに装備が他と一線を隔す連中が手慣れた動きであたりを探索し始めていた。

その連中に見覚えがあった。過去にシバサンとルフィナが追っていた事件に関わっていた謎の部隊かもしれない…そう思った。

ブルーはM4ライフルをコンテナに押し付けてゆっくりとACOGサイトで狙いを定めると、先頭にいる一人の額を銃撃した。

一人で倒れた瞬間、敵は全員がブルーのいる方向を撃って撃たれた隊員を引きずりながら散開して車線が通らない場所へと移動した。

「間違いない。奴らは私と同じプロだ。」ブルーはそう直感すると、なるべく射線の通らない場所から制圧射撃の要領でフルオート連射で弾をばらまいて釘付けにし、徐々に距離を詰めるように移動すると、再度ダンプポーチに入っていたパイプ爆弾を二本ほど投擲してその部隊たちがいる場所を吹き飛ばした。

「ノスフェラトゥ、ゴー。」

安全を確認するためにブルーは再度ノスフェラトゥに指示し、煙の中を移動させて30秒ほど待ち、無事にノスフェラトゥが帰ってきたことを確認すると兵士たちの遺体へと駆け寄った。

その兵士たちはTANカラーのクライ・プレシジョン製JPCプレートキャリアを着ていて、ホルスターもきちんとサファリランド製のものを使用しており、装備しているライフルもモデルこそ違えどACPDで採用しているものと同じである高級品のガイズリー・スーパーデューティの8インチの.300 ブラックアウト弾モデルであった。

イオテックの拡大鏡が取り付けられ、トリガーまでカスタマイズされており、確実に特殊作戦用で使用することを想定した装備で、民間用のピストルモデルかSBRモデルがベースになっている。

ブルーは死体が着けていたバラクラバを取ると一人目はメキシコ人であり、おそらくロス・クルティードと関わりがある私兵集団なのではないか?と考えたが、二人目を脱がせるとフランス系、アフリカ系、ベトナム系と様々な人種が選出されており、迷彩服やパッチの類を付けていないことから、どこかの民間軍事会社であると推測した。中にはブルーと同郷であるアメリカ海兵隊のタトゥーを入れているものまでいた。

しかし何故民間軍事会社がテロリストを守っているのか…?という疑問が頭の中を駆け巡っているが、その考えは銃声によって一気に吹き飛んだ。

10人単位で編隊を組んだ兵士が一斉にブルーに向かって射撃を開始し、何とか物陰に逃げるも一発の銃弾がブルーの被っていたヘルメットへと着弾し、思わず顎のストラップを外して脱ぎ捨てた。

物陰からブラインドファイヤで1マガジン撃ち込み、パイプ爆弾を2個投げつけたが、流石にさっきの戦闘で学習したのか、上手く距離を取って当たらないように回避していた。

周りで定期的な銃声が聞こえる中、先ほどのヘルメットの着弾で頭の皮膚が少し切れたのかブルーの頭には血がだらだらと垂れていたことに気づいた。

「もうおしまいなのか…」とブルーは心の中で呟いた。絶望的で圧倒的に不利な状況だった。

このまま戦っていて数人を屠ることができても、おそらく残った連中に距離を詰められて殺されると思った。

だが、抵抗を辞めず物陰からちまちまと姿を出し、ヒット&アウェーで銃撃を返して2、3人を仕留めることには成功するが卓越した技術を持った連中は次々と距離を縮めていく。

最早終わりかと思った次の瞬間、ヘッドセットから通信が聞こえてくる。

「おい、ブルー諦めるんじゃない。」

その声と共に明後日の方向から飛んできた銃弾が一人の兵士に着弾すると、予想外の攻撃に敵は戸惑い始める。

次の瞬間、聞き覚えのあるアンチラグシステムの銃声のようなマフラー音が聞こえてきて、ブルーの後ろから援護射撃が始まった。

両方から挟まれた兵士たちは瞬く間に掃討され、目の前にグルカが停まると中からエマとタイラーが出てきた。

「おい、ブルー助けに来たぞ。」

タイラーはそういうとブルーに手を差し伸べた。

「…助けなんて頼んでない。」

ブルーは気まずそうに不愛想に返すが無理矢理体を起こされた。

「ブルー、水臭いじゃん。それに一人でテロリスト掃討なんて馬鹿なんじゃないの~?なんのために僕たちがいるんだって話だよ!」

「そうですわ。それと…あの時臭いなんていって申し訳なかったですわ。」

「…今する話か?それ…まあいい。ブルー、私たちも手伝おう。向こうから無数の物音が聞こえるからまだ敵はいるはずだ。連中はマズバハだろう?まずは情報共有を頼む。今私たちは推測でしか動いていないんだ。」

「…私はイサド・アル・ガイーブというテロリストを追ってる。ここにいるのはそいつを守ってるマズバハだけだと思ってた。けど違った。そこにいる死体を見て。」

「単なるテロリストにしてはアメリカ製の装備で統一されているな。近頃のテロリストはアメリカ軍から奪った装備を活用していると聞くが、これは新しすぎる。それにいろんな人種がいるな…わざわざ聖戦にいくとは思えない連中ばかりだ。」

「元海兵隊までいた。思うにシバサンやルフィナの一件に出てきた謎の部隊がそいつらなんじゃないかと思ってる。手慣れてるプロだ…きっと民間軍事会社の類だと思う。」

「了解した。何かしら大きな手掛かりが得られるかもしれないな。いくぞ。」

「それと…」ブルーはエマを静止した。

「なんだ?」

「船着き場の客船に潜んでるイサド・アル・ガイーブは私の獲物。コイツを殺さないと私の無念は晴れない。コイツだけは私にやらせてほしい。」

「…わかった。」

そう話してるとアンジーから通信が入る。

「おいボス、再会を喜ぶのはいいが3時方向から敵が迫ってるぞ。」

「わかったアンジー援護を頼む。各自陣形を組め。シバサン、グルカで追走して盾になってくれ。ブルーを船まで送り届ける。」

全員は「了解」と返し、ブルーはノスフェラトゥをグルカの後部座席で休ませると、空の弾倉を落として背中に差しているマガジンをM4に装填した。

「コンタクト!3時方向以外にも建物の二階にいるぞ!」

「任せろ!」

タイラーはSCARで銃撃すると7.62mm弾の強烈な反動が肩へと伝わった。

軍でも採用されているエルカンスコープは正確にターゲットへと着弾すると、倒れた兵士はそのまま下の階へと落ちていった。

「この銃、悪くないじゃないか!」

そのまま船着き場まで制圧射撃をしながら移動していく。

船着き場の周りには兵士たち以外にもマズバハの構成員たちもいたが、防弾ベストを付けてもいない連中はただただ銃弾の餌食になるしかなく、瞬く間に死体の山と化していった。

やがて到着した増援が距離を取りながら近づいてくると、シバサンは運転席側を開けてグルカをクリープ現象で徐々に動かしながらドアにライフルを依託しながら盾にして銃撃した。

「船からも出てきやがった。イサドの護衛だ!」

「この距離なら任せてくださいまし!」

ルフィナはスーパーノヴァにアーマーピアシングのスラグ弾を装填すると、遠距離に不向きなショットガンの照準に四苦八苦しつつも、イサドの護衛の頭を木っ端微塵にしていき、綺麗な白い船に汚い血の染みを作っていった。

「再装填する!」ブルーはそういうとまた新しいマガジンをM4に装填してフルオートで撃ちまくった。もう戦いが始まって1時間は撃ち続けたM4の銃身は手袋越しでもわかるほど高温に熱していた。

「ブルーみたいに弾いっぱい持ってくれば良かった!20発はちょっと少ないかもな!」

「7.62mmはそんなもんだ!ばら撒くよりも丁寧に使うんだ。」

「了解!」

CLAWと謎の部隊たちはどんどんと距離が近づいていった次の瞬間だった。

ブルーの近くにあった船用の重油タンクに銃弾が当たると、徐々に出火し始めた。


「ブルー、危ない!」


エマはそう叫ぶとブルーの前に前進し、次の瞬間にグルカの横で大爆発が起きると勢いよく吹き飛ばされてアニマル湾の中へと着水した。

「ボス!…ボスーーーーー!」

エマが吹き飛んだ刹那、ブルーの頭の中にはかつての仲間が目の前で死んだ時の光景がフラッシュバックした。海兵隊時代の虐殺された友、クロウが死んだこと、ポールの遺体、トラウマを思い出して呼吸が苦しくなった。

「マズい、ボスが!あのままだと装備の重みで沈んじゃうよ!アンパサンド1ダウン!アンパサンド1ダウン!」

「あっ…あぁっ…私のせいだ…私の…私の…」

「狼狽えるなブルー!私が行く!」

タイラーはライフルをルフィナに手渡してクイックリリースを外してシージRを脱いで一呼吸すると、そのまま船着き場からダイビング姿勢を取ってそのまま海の中へと綺麗に着水した。

タイラーを守るためにアンジーは第二次世界大戦時のイギリス軍が如く、デルタ5で古めかしい速射を行ってなるべく距離を離すように努力した。

タイラーは黒い無限に続く海の中を必死に捜索した。

船着き場付近のアニマル湾の深さは25mほどあり、沈み切ってしまえば助けることはできないため、必死にエマが発している空気の気泡の軌跡を辿った。

そうしてもう息が限界も近づきそうな頃、ようやく水中の中で衣服が焦げてぐったりとして沈んでいるエマを発見した。

何とかエマの体を掴もうとするが、もどかしく自分が手を動くスピードを水が全力で邪魔してきたが、遂にエマの着ているプレートキャリアを掴むことに成功すると、動かないエマに口づけして何とか自分の酸素を分けようとしたが、逆にエマの口内の酸素で自分の息がつながる結果となった。

そのまま気力を取り戻したタイラーは全力でエマを引き上げてプレートキャリアと巻き付いたライフルのQDスイベルを取り外すと、漁港のコンクリートをつたって上へ上へと昇って行った。

そうやってようやく浮上すると、車を停めたシバサンが牽引用のロープを取り出して海へと放り込み、近くにあった係船柱に括り付けるとタイラーは火事場の馬鹿力でエマを抱えながら陸へと這い上がった。

「ボスは!?」

「引き上げた!対爆姿勢を取ったのとプレートキャリアで塞がれて運よく破片は刺さってなかったみたいだが息をしてない…AEDはここにはない…心臓マッサージと人工呼吸をする。カバーを頼むぞ!」

そういうとタイラーはエマのコンバットシャツを破いて首の下に敷き、気道を確保すると心臓を真上から強く刺激を与え、辛抱強くマッサージを開始し、何度も口付けをして空気を送り込んだ。

だが、エマが蘇生する気配は見えず、やがてタイラーの動きは焦り気味になり、冷や汗が止まらなくなっていく。

「巡査部長!起きてください!あなたはこんなところで死ぬような人間じゃありません!どうか、どうか死なないでください…!」

段々タイラーの目に涙が溢れ出してくる。どれだけ強く心臓を圧迫してもエマはぴくりとも動かなかった。何度も何度もマッサージするが少しだって動こうとはしない。

「タイラーさん…エマさんは…」

「うるさい!巡査部長が死ぬわけがない!諦めたら終わりなんだ。目の前の救える命を救えないんじゃ私は警官失格なんだ!」

諦めずに顔を真っ赤にして辛抱強くタイラーは心臓マッサージを続けた。


「巡査部長…巡査部長…!起きろ!起きてくれ!頼む!エマ!私はあんたに教わってないことがたくさんあるんだ!それに死んだらアレックスさんやリタちゃんはどうなるんだ!へばってないで返事をしてくれ!あんたが私をこんなところまで連れてきたんじゃないか…!なら最後まで面倒見るのは当たり前のことだろうが!いい加減起きろ、起きろ!起きろーーーーーーっ!」


号泣しながら力強くタイラーが心臓を叩いた瞬間、エマは口から水を吐いてゲホゲホと苦しそうに息をすると何とか息を吹き返した。

それを見たタイラーは力なくその場に倒れてエマの命が救えたことに安堵すると、状況が呑み込めていないエマの手を握った。

「あっ…けほっ…はぁ…私は生きてるのか…」

「生きてるんです。生きてます。生きてるんです!私がやってる指の本数は見えますか?」

「3本…」

「巡査部長の夫と子供の名前は?」

「夫はアレハンドロ・エストラーダ・ロペス…娘はリタ・エストラーダ・カストロ…」

「私の好きな車種は?」

「ホンダ・シビック…」

「やった、やったぁ!巡査部長が生き返った!よかった!よかった…!」

そういいながらタイラーは満身創痍のエマの体をぎゅっと抱きしめ、そんなタイラーの頭をエマは震える手で優しく撫でた。

だが安心する暇もなくアンジーから無線が入ってくる。

「感動ムードのとこで悪いが、めちゃくちゃマズいことになってるぞ!海岸からゾディアックボートが4隻も来てやがる…ざっと見た感じ30人はいるぞ。グルカだけじゃ防ぎきれないし装備だって足りない!」

「おい、ブルー!ブルー!」

ただ力なく倒れて戦意を喪失しているブルーの頬をシバサンは叩いて一喝した。

「お前が戦意を無くしてどうするんだよ!お前のためにみんなここまでやってきたんだぞ、ボスが死んだかもしれないからって何ビビってんだよ!僕がかわいがってきたグルカももうおじゃんになりそうだ!このまま戦わなかったらボスだって死にかけ損だ!自分勝手にここまで派手にやったじゃないか!わがままするなら最後まで貫き通せよバカ!」

「でも、でも…」

「でももだってもない!」


「そうだ!一人前の海兵隊がそんなことで狼狽えてどうするんだ!」


上空から大きな拡声器越しに聞き覚えのある声が聞こえると三機のシコルスキーS-70ヘリコプターがやってくると、M134ミニガンで陸地にいる敵を一掃して海上に威嚇射撃をして着陸すると、中にはチェック柄のネルシャツの上からマルチカムの装具を着た複数人の元軍人の姿が見えた。

そしてほかのヘリからは複数の武装した中国系アメリカ人がヘリボーンで降下してきた。

「イサドをぶっ殺すって決めたんだろ?借りを返しに来たぞエリス・アンフォーチュン軍曹!」

ブルーに手を差し伸べたのはデリンジャー強盗団を率いていたケイト・ウィーバーだった。

「ケイト…?なんでここに…?」

「馬鹿か。お前ひとりに美味しい真似させるわけないだろう!それに、裏の情報筋を辿っていくうちにあの謎の傭兵連中に行きついた。お前ひとりじゃ無理だと確信したから、ツテを辿って狐仙とやらにコンタクトを取ったら街の害虫を駆除してくれるならと、部下とヘリを貸してくれた。少し遅くなっちまったな。それと…この銃は返す。」

ケイトは懐からM45A1を取り出すとブルーへと手渡した。

ブルーは手に馴染む触感にどこか懐かしさを覚えたブルーは後ろ腰にあった空のホルスターに仕舞った。

「ケイトさん、ウチのボスが爆風で一回やられた。緊急搬送を頼めないか?」

「当たり前だ。よし、お前ら負傷者を担架に乗せろ!それからタイラー、あんたもこの人の身元確認のためについていってほしい。」

「わかった。」

「緊急搬送するんだ!」

狐仙の部下たちは手際よくシコルスキーにエマを乗せると、そのまま飛び去って行った。

「よし、あとは船だけだ。血祭りにあげるぞ軍曹!」

「当たり前だケイト曹長。」

「…なんか僕たちめっちゃ頑張ったのにアウェーだね。」とシバサンは小声でルフィナに語り掛け、無言でルフィナは頷いた。

「私なんて近くにすらいれねーんだぞ。」とアンジーは無線で連絡を入れた。

「気にするな!お前たちも姉妹<シス>だ!一緒に悪党をぶちのめそう!」

そういってケイトは強引に二人と肩を組んだ。

「まさか街中で銃を乱射した強盗と一緒にテロリストを掃討するなんて世も末だなぁ。」

「まぁ…こういう非現実的なことを体験できるからこそCLAWに入った甲斐があるというものじゃないですの?グレーゾーンを楽しみましょう?」

「たしかにそうだね…よし、ぶちのめすぞー!」

その場に残ったCLAWのメンバーは全員弾薬を再装填すると、ブルーとルフィナを先頭としてクルーザーへと突入を開始した。

「へっ、二人とも私らの動きについてこれるんだな!」

「当たり前だろ!元SWAT隊員なんだからな!」

そうぼやきながら5人でクルーザーを移動していると前方からAKを持った傭兵が現れて銃撃を開始しようとするが、ルフィナの放ったドラゴンブレス弾で焼かれてそのまま動かなくなった。

「ホォーウ!ドラゴンブレス弾とはド派手だね!」

「油断しない!」

シバサンはケイトの後ろに現れたイサドの部下を射殺するとケイトはサムズアップをした。

「前方に敵が5人!」

「任せろ!」

ケイトはプレートキャリアに携行していたM67手りゅう弾のピンを抜いて敵のいる方向へと投げ込むと、爆散して傭兵たちは吹き飛んでいった。

「手りゅう弾なんてどこで手に入れたんだよ。」

「税金は納めてる!」

5人は船内へと入っていくと、四方八方を警戒しながら待機状態に入った。

「さて…おそらくイサドは地下室か二階に潜んでる。エリーと私は二階へ行くからお前らは地下を頼む。もしいたなら…私たちに任せてほしい。」

「わかりましたわ。シバサン、いきますわよ。」

「はいはい…美味しいとこ持ってくんだあ。」

三人は地下へと移動するとブルーとケイトは二階へとツーマンセルで移動した。

前で銃を構えていた護衛を射殺し、扉を開けるとそこには自爆ベスト着てクレイモア・クラッカーを握っているイサドの姿があった。

「き、貴様ら…一歩でも近づけば自爆してこの船ごと死んでやる…わしは死ぬのは怖くない…マズバハの正義が揺るぎないものだと信じているからな。」

「クソが…ここまで追い詰めて自爆ベストかよ…」

「クク…さぁ、銃を捨てて後ろを向け…死にたくなかったらな…」

「ちっ…」

二人は銃の弾倉を落として薬室から弾を抜くと、地面へと放り投げた。

そして後ろを向いてゆっくりと全身する。

「それでいい…ははは、馬鹿どもめ…命が惜しいとアメリカ人連中はすぐに逃げる…」

ブルーは動く拍子にゆっくりとプレートキャリアに付けられたPTTスイッチを押すとただ一言小さく呟いた。


「アンジー、頼む。」


その瞬間、イサドの腕は起爆スイッチごとはじけ飛び、断面から血が噴き出した。

イサドは大声を上げながら必死に手首を抑え続けた。

「あああぁぁぁぁぁああああああああああああ!」

「信頼できるスナイパーってのは心強いなエリー。」

「あぁ、だがもう時間が無い。恨みを晴らすぞ。」

そういって二人は腰に携行しているM45A1とウィルソン・コンバットの1911を抜くと、代わりばんこに手足を撃つ。

「これは、マットの分。」

「こいつはジョージの分。」

余りの痛みにイサドはただただ叫ぶことしかできなかった。

ブルーは地面に落ちていたM4からM9銃剣を取り外すとイサドの眼球を潰した。

「これはヘイデンの分。」

ケイトは近くの窓にあったガラスを割ってイサドの顔面を叩きつけると、鼻や口がズタズタになるまで何度も何度も叩きつけて顔面を原型を留めなくなるほど破壊した。

「そしてなによりも…」

ブルーは半死半生のイサドの肥え太った腹を銃剣で切り裂き、臓物を引きずり出すと窓枠に括り付けてそこから海へと投げ落とした。


「これはボスの分だ。魚の餌になって死ね。」


イサドの死体を見た途端、周りの兵士たちは逃げるように引き返していった。

そうブルーは言うと仕事を終えて疲れたのかナイフを落としてその場に寝転んだ。

「おい大丈夫かエリー?」

「…ただ…どっと疲れた…」

「すっきりしたか?私はすっきりした。」

「うん…私もすかっとした気分…」

二人は背伸びをしてリラックスすると地下の掃討を終えた3人がやってくる。

「もう、お二人ともなんで寝てらっしゃるんですか…?ってキャッ!…あ、あれ…内臓ですの…?ちょっと気持ち悪くなってきましたわ…」

「それだけ私たちの恨みは深かったってことさ…そういえばエリー、お前マットのコルベット派手にぶっ壊したろ?」

「…あっちに行くつもりだった。あっちでマットと一緒に乗り回す気だったんだ。」

「え!?10万ドルする車を自動車爆弾にしたの!?馬鹿なんじゃないの?その辺のやっすいやつでやればよかったのに。」

「お前らそんだけ疲れてるのに帰る足がないんだもんな…そこで朗報だ。」

ケイトはブルーの胸の上に車のカギを置いた。

「近くのパーキングエリアにマスタングのシェルビーGT500を用意した。お前、マッスルカーが好きだったよな?くれてやるよ…選別さ。それに私はアメ車よりドイツ車が好きだからな。」

「…ありがとう。」

「じゃあ、私は海からトンズラさせてもらうよ。前科者だしな…これだけ派手にやったからもうあたりは警察だらけだしな。じゃあ、アデュー!」

ケイトはシバサンやルフィナと行動を共にしていた元軍人と海に飛び込むとそのまま姿を消した。

ブルーはマスタングのキーを見つめて笑みがこぼれたが、そのキーをシバサンが奪い取った。

「…取らないでよ。」

「ふざけんなーーー!私たちに散々迷惑かけて美味しいとこまでもっていって、良い車まで貰うなんてずるいだろ!帰る前にマスタングでハイウェイを好きなだけ爆走させてもらうからね!」

ブルーはPTTスイッチを押して聞こえるように話し始めた。

「わかった…それとルフィナもシバサンも…ごめんなさい…私のせいでボスまで失いかけた…本当に申し訳ない。そしてアンジー…殴って本当に申し訳なかった。もうしない。もう仲間に拳なんて向けない。あの時の私はおかしかったから…」

「え!?バカアンジーぶん殴ったの?僕も一発噛ましていいかな!?」

「あれはだってお前の車じゃないしぃ…まあこれで…貸し借りはなしさ…それと…私にもマスタング貸してくれないか?」とアンジーは無線で返した。

「ぶつけられるから嫌。」とブルーは断った。




一方そのころ、ブルーたちの周りから1km離れた先で17歳ほどの南米系の隻眼の少女が照準器越しにイサドの死体を見つめていた。

「マム、イサドが死んじゃった。これで契約はおしまい。指揮の練習だったけど、社員いっぱい死なせちゃった。やっぱり私才能無いかな?」

「気にするなマヌエラ。アタシの人心掌握術があれば職にあぶれた元軍人なんていくらでも調達できる…」

「でも、派手にやったから多分あのCLAWって連中は絶対に私たちを嗅ぎ付けてくるよ。」

「大丈夫だ。アタシたちはバックにロス・クルティードがいる…」

「そうだね、マム。」

「これからはアタシたち…〝ロス・ビソンテス〟の出番さ。」


To Be Continued...

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