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Case.3 ──銀行強盗──

借金で首が回らなくなっていたブルーは生活費を得るべく銀行に金を借りにいくが断られてしまう。しかし、そんな最中〝デリンジャー銀行強盗団〟によって襲撃され、息を潜めていると彼らの動きが明らかに元特殊部隊であること悟り…

ある日の任務だった。それはなんて事の無いロシア製の七・六二ミリRPD軽機関銃を所持した麻薬密売人への強襲であり、今回は通常のアニマル市警スワットを装って軽装の現地警官を守るために遂行する任務のはずだった。

エマはシバの常にアクセル全開の運転に疲れ切っており、今回は事件現場と距離が近いこともあって別のドライバーにグルカの運転を任せることを考えていた。

シバサン以外で装甲車の免許を取得しているメンバーの候補はブルーとアンジーであったが、ブルーは過去にグルカを使った車両追跡で追突を繰り返してきた前科があったため、選出されたのが前回の任務でダッジ・チャレンジャーの運転を担っていたアンジーであった。

「は?僕のチャレンジャーを擦った挙句、オイルフィルターまで抜いたヤツに運転を任せるわけ?あの後エンジンが故障して夜通しで全部分解清掃しなきゃいけなかったし、擦った部分の板金代も僕の貯金から出す羽目になったんだよ。何ドルかかったと思う?」

その決定にシバは心底不満そうな表情をしており、腹を抱えて笑っているアンジーに対してファック・サインをしていた。

いつもの通り全員プレート・キャリアを着用し、完全武装でテラダイン・グルカに乗り込むとアンジーは現場まで百キロ前後のスピードで飛び出していた。

シバは永遠と「止まってるのと変わらない眠いスピード」だと愚痴っていたが、それに同じく常に時速百五十キロの運転に耐えてきたCLAWメンバーは感覚も麻痺しており、シバと同じ感想を抱いていた。

だが、このときはまだ知る由もなかった。重さが約9トンある防弾装甲の鉄塊が時速百キロのスピードでぶつかるとどうなるかを考えてもいなかった。

「こちらジョンソン巡査部長。奴はやたらめったに撃ちまくってて応戦できない。スワットはまだなのか!」

犯人はRPD機関銃をランボーのような腰だめ姿勢で構えてあたり一面を指切りによる点射で乱射していたが、いつしか弾が切れると機関銃を捨ててトム・クルーズのような姿勢で全力疾走をし始めた。

「あっ、あッ!やつは弾切れみたいだぞ。捕まえるぞほら、逮捕、逮捕ーッ!」

ジョンソン巡査部長は旧式のベレッタを片手にダンキン・ドーナツの食べ過ぎででっぷりと肥えた腹をゆさゆさと揺らしながら、脂汗をかいて犯人を追いかけていたが、その時だった──


「ギェーーーーーーッ!」


時速百キロで突っ込んできた重さ八トンの鉄塊はブレーキで止まり切れずに制動力で建物の陰から飛び出してきた犯人の体を大きく突き飛ばすと、細胞という細胞を物理的な圧力で完全に破壊し、犯人は断末魔を上げながら吹き飛ばされコンマ数秒宙を舞った後に近くにあった民家のドアに叩きつけられ、文字通りの〝染み〟と化し、飛散した一部はジョンソン巡査部長の口の中に飛び込んできた。ジョンソン巡査部長は三十年間警察官として生きてきた中で最も食人鬼に近づいた警察官となった。最も、その直後に腹の肉を落とすような勢いで途轍もない量の嘔吐をし、この経験がトラウマになって大好物のワイフが作るビーフ・ステーキが食べれなくなった。結果的に健康診断で肥満と診断されることはなくなった。

物凄い物音でその家に隠れていた婦人は思わずドアを開けると、ぺとりと地面に内容物がひしゃげた〝犯人だったもの〟が落ちるさまを目撃し、とてつもない金切り声で悲鳴を上げ、その声が事件終息の合図となったのだった。


「…やっっっっべぇ…」


アンジーは途轍もない量の冷や汗を搔きながらフロントガラスが真っ赤になったグルカを助手席に座っていたブルーと共に降りる。今までアンジーは勉強というものには無縁であったが、この時ばかりは頭が冴えわたってどんな哲学者やら博士号を持つ教授やらにも負けないぐらいの思考を巡らせていた自信があった。

「…なぁ、ブルー。除細動器持ってないか。」

「…意味ないと思う。」

「そうか。じゃあお前が悪いな。」

「えっ?」

CLAWの通常任務であればこの程度の殺人は大したことないとして警部が通常の法執行として処理するのだが、アンジーは一般人や多くの警官に轢殺の瞬間を目撃されたことがマズイことを理解しており、その責任を過去に通常のスワット隊員だった時期に犯人を必要以上に叩きのめして後遺症を負わせ、減給処分や降格処分に頻繁になっていたブルーに押し付けようとしていた。

「…私殺してな──」

「嘘をつくのか!このサイコ・キラー!悪魔!サタン!ナチ野郎!クズ!レイシスト!」

そんな会話をしている中、グルカの後部座席に座っていたエマたちが出てくるとあたりの惨状に頭を悩ませていた。

「げぇっ、何やってんだお前たち…せっかく、せっかく私が安全運転で行きたいから運転手を交代しようって言ったのに…運転もマトモにできないのかぁっ!」

「違うんだ。ブルーが奴をひき殺せって、いきなり急ハンドルしたんだ。私は悪くない。」

「だから言ったじゃん。僕に運転させれば絶対事故らないってさ。じゃあ、今度から僕が専属ドライバーだね。いいよね?」

「ああ!そりゃいいが、その前にフロントガラスの血と肉片はお前が洗えよ。私はまっぴら御免だ。」




エリス・〝ブルー〟・アンフォーチュンはスキッド・ロウにある家賃五十ドルのマンションに住んでいた。

このマンションは最悪も最悪で辺り一面は朽ち果てていつ崩れてもおかしくなく、壁の塗装は剥がれて大量の蜘蛛の巣があり、壁にはゴキブリが張っていて周りではジャンキーたちが力なく横たわり、あまりの治安の悪さにゴミ収集車すらも来ない為、ゴミ袋が積み重ねられてまるでタワーのようになっている。淫売の女がオーイエスと派手な喘ぎ声を上げながらそこら中で野外プレイを楽しみ、その垂れた体液からキノコが生えているような場所だ。

ブルーの隣人は片や朝六時になるとノルウェーのブラック・メタルバンド〝メイヘム〟のフリージング・ムーンを大音量で流し、メロイック・サインをしながら手首をずたずたに切り裂いて大声で喉が枯れるまで絶叫する悪魔崇拝者であるヘンリー、片や「ワシはベトナムに従軍していた。あの時は楽しかったなぁ。ベトコンの目の前でソイツの妻子供を犯した後にブラック・ライフルで頭を吹っ飛ばしたんじゃ!あの時のベトコンの表情はたまらなかった…!そのあとソイツも撃ち殺して天国で再会させてやったんじゃ!また戦争にいきたいのぅ…もっと人殺しをしたい…のぅ?若き海兵よ。」と永遠と自身が過去に起こしたつまらない戦争犯罪を武勇伝として語り続ける半身麻痺の小汚い白人至上主義者アンクル・ボブであった。

ブルーが住んでいる部屋もひどいもので入居した時点で既に中でカルト宗教の信者が自殺を図った後の事故物件であり、入居して数か月はきちんと清掃や壁の張替えまで自分で行っていたが、度重なる減給処分や裁判に敗訴したことによる負債で精神的に追い詰められて自活能力を失ってしまい、気が付けばネズミやゴキブリが跋扈していてゴミ屋敷となっていた。

今は水道もマトモに通っておらず、修理業者を呼んだこともあるがこの近辺に車を停めた直後に車両を強奪された挙句、身ぐるみ剝がされて裸で街中に放置されてしまい、それ以降スキッド・ロウ近辺の仕事は引き受けないようになってしまった。

また、鍵が壊れている為に疲労困憊で帰ってきた日に誰とも知らぬ人間が小汚いベットの上で眠っていたこともある。

彼女はそんな状況の中でいつも毎朝浴槽で起きると自分が手にしている四五口径のピストルを口に咥え、いつも自分が何のために生きているかについて考える。

いつも何故自分は戦場で生き残ってしまったのかと、何故自分ではなく前任者が殺されてしまったのかと自問自答し、亡くなってしまった海兵隊の戦友たちに思いを馳せるが、そんな彼女を現実世界に繋ぎとめていたのは彼らを虐殺したテロ組織〝マズバハ〟と〝ロス・クルティード〟に対する怨みであると毎朝再確認していた。

自分を現実へと繋ぎとめる確認を終わらせると、ウォルマートで購入した味のしない安物の豆缶をナイフで粗雑に開封して中身を汁ごと飲み干し、空いた缶をその辺に放り捨てると、汗で錆びついたトレーニングマシーンで嘔吐しそうになるぐらい徹底的に体をいじめ抜いて筋力維持に励んだ。

トレーニングが終わると、銀行に行くためにスーツに着替えることにした。

というのも昨日アンジーに押し付けられた轢殺の過失によって生活が全く立ち行かなくなってしまったからだ。

元々ブルーは巡査部長で給料は毎月六千五百ドルほど貰えていた高給取りだったが、PTSDの再発によるミスで降格され巡査になっており、この時点で給料は四千五百ドルにまで戻っていた。また、中東系の麻薬の売人をテロリストと誤認し、後遺症を負わせるほどに痛めつけた結果、減給処分が下って今月の給料は二千二百五十ドルまでに落ち込み、今回の件が原因で給与がさらに減給処分となりその半額である1125ドルにまで落ち込んでしまったのだ。また、彼女は自分の母親や元婚約者の夫から裁判を起こされており、弁護士費用と慰謝料の支払いや過去の怪我による病院代等を諸々合わせた負債で毎月の生活はカツカツだったのである。

あまりの困窮振りにCLAWの他のメンバーに金を貸してほしいと懇願したが、


「残念だけど力にはなれない。というか君は福祉にもっと頼らないといけない。お願いだから早く然るべき社会福祉を受けてくれ。」

「私の今の銀行口座の残高を教えてやろうか。二十五セントだよ!ギャハハハ!」


「私は金の貸し借りはしない主義だ。夜飯ぐらいならおごってもいいが…私が作るタコスでも食うか?味には自信があるんだ。」


「やだ。」


「お金の前に…大変申しあげにくいのですが…あなたお風呂に入ってますの?前から思っていたのですが、ずっと生ごみの臭いがするんですわ…単刀直入に申し上げますと…臭いんですわ。」


と断られてしまった。

そのため、重い腰を上げて銀行に金を借りに行こうとしているのだ。

スーツは警察官になる数年前の就職活動を終えてから一切使用しておらず、埃を被っていて首元は汗で黄ばんで変色していた。数年ぶりに着てみると全くサイズがあっておらず、完全にぱっつぱつといった状態だった。

そんな中、朝七時になるとドアを叩く音が聞こえてくる。

ドアを開けるとそこにはヘンリーがいた。ヘンリーは喉を潰し自傷行為を行う〝サタンへの祈祷〟が終わると、いきなり静かになって朝食を作り始め、毎回その料理をあたりの人に配る習慣を持っていた。

当人にとってはそれがサタンの意思であり、所謂布教活動の一種のようであった。

「サタンを崇め、奉り、信じましょう。サタン万歳!」

ブルーは毎回ヘンリーの作った料理を貰っていたが、彼女は無神論者であるためそれらを聞き流して食事だけを口に運んでいた。今日はブリトーだったが、やはり何故だか味が薄く感じる。

食事が済んだ後は比較的治安の良い隣町にある貸ガレージに行き、そこで戦友の形見である赤いシボレー・コルベットに乗る。

スキッド・ロウ近辺ではこの手のヴィンテージカーはすぐに盗まれて海外に持っていかれてしまうため、守るためにわざわざ遠くのガレージに仕舞い込んでいるのである。

それに乗ってアニマルシティ銀行に到着すると融資の申請窓口に行って書類にサインをしていく。

ブルーは学校に行っていなかったために幼少期からマトモな教育を受けておらず、ある程度の読み書きを習得したのは十七歳になってからであり、ペンを握ったことはおろか書き順すらあやふやになっており、二十九歳になった現在でも筆記体を読むことができず、「b」と「d」やカンマとピリオドとコロンの違いが判らなくなる時がある程度には読み書きが苦手で、診断こそ受けていないがディスレクシアの可能性が高かった。そんな状態でまるでグラフを書いているかのようなガタガタの字を書いて書類を提出した。

彼女は女性の銀行員に二階の相談部屋へと連れていかれると、きちんとした店であつらえたスーツをびっしりと決め、髪を七三分けできちんと整えてホワイトニングを欠かしていないような銀行員がそこで待っていた。小汚い格好をしたパツパツでしわと埃だらけのスーツを着た髪がボサボサの大女を見て、物凄く引き攣った表情をしながら応対にあたっていた。

「えーとあなたがえーと…エイイス…エイイス…アンエーテュム?エイイス・アンエーテュムさん?珍しい名前ですね。」

「…エリス・アンフォーチュンです。」

「あー…えーと随分と綴りをお間違えになってますね…えーとお住まいはスキ…スキ…スキッド・ロウ…あっ…」

「…」

「えーと、こほん。すいません。今回は融資の相談という風に伺っているんですが。どのような要件ですか?ご職業は?」

「警察です。負債と減給処分でお金がなくて生きていけないんです。」

「警察官で減給処分?あっ……えーと、そもそも融資ってご存じですか?」

「知りません。お金を貸してくれるんですよね?」

「あのー、そういった個人様に向けたお金の貸し借りは借金ですね…融資はこれから起業したい方とか新事業を立ち上げたい企業様が行うものでして…」

「じゃあ、借金でお願いします。」

「えーと…その少し調べた感じお客様の信用情報がほぼ皆無なのですが…クレジットカード等はお持ちで?」

「…作り方がわかりません。」

銀行員は「こんなやつをどう応対しろというんだ。」と言いたげな表情で完全に頭を抱えており、当のブルーは無知すぎるあまり何故金が貸してもらえないのか理解できていないような状態だった。

「言い方が悪くて申し訳ないのですが、あなたのような方は国の然るべき支援制度を受けた方が良いと思うのですが、生活保護制度とかはお受けに…?」

「申請しにいきました。でも警察官のような公務員は生活保護制度の対象にならないと言われました。」

「…じゃああなたの個人資産のシボレー・コルベットを売り払うというのは…?一九六六年式なら今ならヴィンテージ・コレクターに数十万ドルで買い取ってもらえる資産価値が──」

「…できません。自殺した戦友の形見なんです。彼は三代に渡って引き継いできたこの車が自慢で、帰国したら一緒に運転してぶっ飛ばそうと約束していました。だが〝とある任務〟で半身不随となり、クラッチもアクセルもブレーキも踏めなくなった。そんな彼に私は代わりに運転して一緒にハイウェイをぶっ飛ばそうと約束しました。ですが帰国した直後に彼は四五口径の一九一一ピストルで後頭部を吹っ飛ばして自殺していました。何故ならその車は彼の治療費に充てるために家族に勝手に売却されていたからです。約束を守れないと悟った彼は生きる意味を失ってアメリカが誇る最も偉大なピストルでの自死を選びました。数日放置されて腐敗した遺体の元に置かれていた彼の遺書を読んで死の理由を知った私はその売り払われた個体を死に物狂いで探し出して──」

「あー、あー…わかりました。はい、すいません!ごめんなさい!でも今回の借り入れは不可です。ごめんなさい、私たちに貴女は救うことができません!今回の話はこれまでと──」

その瞬間だった。銀行のあらゆる電気が消えると中から大きな声が聞こえてきた。


「紳士淑女諸君ごきげんよう。我々は強盗だ。大人しくしていれば危害を加えることはないと約束しよう!銀行員の皆様方も盗られた金は政府が保証してくれるだろう!何も心配することはないぞ。姿勢が辛ければ座ったり横になっても構わない。抵抗の意思は見せない方が身のためだ。通報用のボタンは全て電力をカットして封じてあるから押しても無駄だ。あなた方はバットマンやスパイダーマンではないのだから、落ち着いて目を閉じていてほしい。そうでなければアメリカが誇る最強の殺人兵器M四ライフルの五・五六ミリの弾薬があなた方の体を引き裂くことになる。」


強盗は総勢四人ほどでスーツの下に型落ちになった海兵隊用のインターセプター・ボディアーマーを着込んでおり、顔はそれぞれペイントされた防弾マスクで覆われていた。

ライフルはフィリピン製や中国製のフルオート・レシーバーに短銃身で軍用の物に構成が近いダニエル・ディフェンスのマーク一八やブロウネルズのHK四一六、やBRN一八〇のアッパー・レシーバーを組み込んでいるもので、隠し持つ際に上着に干渉しないようにするためかアクセサリーは最小限に留まっていた。

「キャー!デリンジャー強盗団様よ!こんなところで会えるなんて光栄だわ。」

追っかけと思しき女はデリンジャー強盗団と口にした。

デリンジャー強盗団はここ最近になってアニマルシティで活動している強盗集団で、「誰も殺さない」「貧民に金を配る」「振る舞いが紳士的」の三つから、過去に同じ強盗行為を起こしていたジョン・デリンジャーから名前を取ってデリンジャー強盗団と呼ばれるようになり、現在は貧困層に絶大な支持を得ている集団である。彼らの仕事の多くは事件後に発覚するためにアニマル市警においても対処が困難な相手として頭痛の種になっていた。

「あいつらデリンジャー強盗団か…我々銀行員がどれだけ死に物狂いでこの金をため込んだと…」

「シーッ。下がって。あなたは私が守ります。」

「あぁ…そういえばあなたは警察官でしたね…頼りになります。」

ブルーはサファリランドのインサイドパンツ・ホルスターから私物のM四五A一を引き抜くとバレルブッシングを小さく押して薬室の中に弾が入っているかを確認した。

彼女は軍時代から一九一一系列の四五口径を使用し続けており、警官になって以降も自費でアメリカ海兵隊の刻印にバツ印が付いている放出品を購入して使用している。何度も使い倒しているために銃口周りは煤汚れで真っ黒になっており、いくつかのスライドの角部分はタンカラーの塗装が剥がれて地の金属色が露出している。この銃は海兵隊を退役して以降もまた海兵隊員であるブルーの手に渡ってアメリカを内外の敵から護るという使命に〝常に忠実<センパー・ファイ>〟であり続けているのだ。現在勤務中は〝前任者〟の遺したキンバーと共にブルーの愛銃として腰に下げられている。

ブルーは静かに扉を開けると二階の隅から下の階にいる強盗たちを逐一チェックしていた。周りの警官や警備員は皆タイラップで手足を縛られており、ピストルは弾倉を抜いた状態で奪われていた。

強盗の一人はダイヤモンドコーティングがなされた巨大なドリルを袋から取り出すと金庫の扉に設置して掘削を開始し、大声で「九十秒!」と声を上げると全員それにハンドサインで返事をしてあたりの警戒を続けていた。

ブルーは腰ポケットに仕舞っているギャラクシー製のスマートフォンでたどたどしくエマに「中央銀行 強盗  M四 重武装」と打ってメッセージを送信した。


「ブルーから連絡だ。アニマルシティ中央銀行に銀行強盗が現れたようだ。全員ライフルで武装しているらしい。急行するぞ。シバサン、とっととグルカを出すぞ。人を轢くのだけは注意しろよ!」

「アンジーと違って僕が事故るわけないじゃーん。ね、バカアンジー。」

「うるせー。」


ブルーはいくらなんでもフルオート火器で武装した5人相手に装弾数七発のピストルと二本の予備弾倉で挑むのは無謀と考え、強盗たちが事を済ませるまで待機していた。

強盗たちは金庫が開くや否や驚くべき早業で金庫の金をバッグの中へと詰めていくとそれらを重そうに抱え、人質たちに銃を向けながら足早に銀行を立ち去ろうとしていた。

強盗たちはプロのようで周りの方向をきちんと警戒しながら銀行を後にしようとしていたが、ブルーにはその動きが明らかに素人の物ではなく訓練された軍人の集団、特に特殊部隊出身の連中が行っているものだと理解できた。

強盗たちが中央銀行の片側車線に堂々と停めたアウディQ七セダンに乗り込もうと一瞬気を緩めた瞬間だった。

ブルーはM四五A一で瞬時に運転手に狙いを定めて背中を銃撃すると、ボディアーマーに着弾した際の衝撃で背中の肋骨が折れたのか倒れ込み、大声で叫び声をあげた。

「クソ、警官がまだいたのか!?奴を撃ち殺…」

「待て、なるべく流血は避けたい。私が運転する。ジャックを後部に乗せて早く逃げるぞ!この銃声で警察が来る!早くするんだ。」

「おい、早くキングの言うことに従うんだエース!」

「ちっ…」

エースと呼ばれている男は渋々ジャックと呼ばれる女を抱えると後部座席の中に乗ろうとした。

ブルーはすかさずピストルに残った三発の弾を撃ち尽くすと、ウィルソン・コンバット製の弾倉を落とし、腰に差している予備弾倉を装填して左手の親指でスライドリリース・レバーを下げると物陰に身を潜めた。

エースは銃声が聴こえた瞬間に威嚇のため、十・三インチの近接戦仕様のM四ライフルをブルーのいる方向に向けて撃ち始めた。

けたたましい五・五六ミリの銃声に耐えながらブルーは身を潜め、銃声がしなくなると扉を少し覗いた。

「なんで撃った。構うなといっただろうが!」

「うるせえぞキング!お前はリーダーのクセに玉無しなのか?何のためにフルオートレシーバーを高い金を出して買ったと思う!?」

「そりゃ脅しのためだ!殺しのためじゃない!」

強盗団が口論になっている隙にブルーは全力疾走で銀行を飛び出し、銃撃しながら自身のシボレー・コルベットの元へと向かった。

しかしその最中、付近の銃声に気づいた若い警官にFN五〇九の銃口を向けられる。

「銃を捨てろ、お前も強盗団の一人か…?」

「…私は警官だ。狙う相手が違う!エリス・アンフォーチュン巡査!腰にバッジがある。」

そう言って銃を持っていない手で上着を捲り、ベルトに固定されたアニマル市警のポリスバッジを確認すると警官はハッとした顔で畏まり銃口を下げた。

「…申し訳なかったですエリス巡査!私はウィリアム・ディクソン巡査です。今の状況は?」

「あそこのアウディのSUVが容疑者だ。奴らはフルオートのM四ライフルで武装してる!私は車に入ってるライフルを取ってくる。君もパトカーからショットガンかパトロール・ライフルを取って応戦するんだ。九ミリのピストルだけじゃ無茶だ。」

「わかりました!」

ブルーは急いでシボレー・コルベットに向かうと助手席側の座席下とグローブボックスに分割して収納したコルト・LE六九二〇を取り出してアッパーとロアを組付ける。

このライフルはブルーが海兵隊フォース・リーコン時代に使用していた物に近づけた仕様のもので、なんてことのない普通のナイツ・クワッド・レールだが、先端のフロントサイト・ポストにエルゴ製の四八五〇フォアード・レールが組付けられて拡張されており、放出品のペック・一五とタンゴ・ダウンのショート・フォアグリップ、マイクロどっとサイトが上部に取り付けられ近中戦に対応したトリジコンのエイコッグ・サイトが装着されていた。シンプルなカスタマイズだが海兵隊でM四ライフルを使い続けてきた彼女にはどんな高級カスタムも最新式のパーツも必要なかった。自分の手足の一部となったコルトのM四こそが至上であると信じていた。


<これぞ我が小銃。似たものは数あれど自分の物は一つ。これぞ我が最良の友であり命である。銃を制すことは命を制すこと。我なくして銃は役に立たず、銃なくして我々は役に立たず。ライフルは敵より先に正確に狙わねばならない。何よりも大切なのは命中弾。我々は命中させる。小銃は人間であり友だ。常に手入れを怠ってはならない。我が銃は祖国の守護者であり敵の侵略者である。我々は我が命の救世主である。勝利がアメリカの物になるまでかくあるべし──>


ブルーは用意していた四本のマガジンの内一本を装填するとチャージングハンドルを引いた後にボルトフォアード・アシストを叩いて閉鎖し、予備三本を左手に抱えた状態でハンドガードを握り前進し、銃撃を開始する。

それと同時にウィリアム巡査もM一六パトロール・ライフルを取り出して銃撃しながら前進し、周りの車のエンジンブロックに隠れながらアウディのSUVの元へと向かった。

すると強盗側もたまらなくなったのか車を徐々に動かしながら全員がフルオートによる連射で撃ち返してくる。

辺り一面にはけたたましい銃声が響き始め、市民たちは阿鼻叫喚の状態で辺り一面を逃げ回ると敵味方の識別が困難な状態となり、集まってきた他の警官たちは狙うに狙えない状態となっていた。

ブルーはLE六九二〇ライフルの轟音とチューリップハイダーによるマズル・フラッシュでいつしか心の中が海兵隊時代へと戻っており、平穏な街中よりも落ち着く状況に安堵していた。

すると既に呼び出していたグルカがとんでもないスピードで現れ、後部ハッチからぞろぞろとCLAWのメンバーが飛び出してくる。

「ブルー、状況は?」

「あそこのアウディのSUVにいる連中が強盗団だ!」

「クソ、逃げ回ってる市民だらけで撃てないぞ!」

「タイヤだ、タイヤを撃ってまずは止めろ。」

エマがそう指示を出すとアウディのタイヤは銃撃によって大きくパンクし、たまらなくなった強盗団はSUVから飛び出し、銃撃によって逃げ惑う市民たちの停止した車のエンジンブロックを盾にしながら後ろへと下がっていく。

「もういい、私のことは見捨てるんだキング。」

「いいだろ、見捨てちまえよキング!」

「そんなわけにはいかない。海兵隊は仲間を見捨てないんだエース。クイーンは制圧射撃を頼む!その隙に向こう側へ逃げる!」

キングと呼ばれる強盗はジャックの持っていた現金の入ったバッグをその辺に捨てるとジャックを担ぎながら警官に向けてフルオート射撃を繰り返していく。

「装填する!カバーを!」

「了解。」

強盗団は異様なほどに連携が取れており、マズルコンシャスやトリガー・コントロールが完璧でCLAWのメンバーも相手が只者ではないことを感じ取っていた。

「巡査部長、奴ら凄い勢いでこっちを釘付けにしてくる。フルオート射撃なのになんて精度だ…!」

「あの動き…元軍人か…それも特殊部隊…現金の入ったバッグで全力疾走してるのに全くバテていない。」

「グルカがなきゃハチの巣ですわ…!」

「あーーーーー僕のグルカがーーーー!血と肉を拭きとったばっかだってのに~!」

ブルーとウィリアム巡査は強盗団がCLAWを狙っている隙に制圧射撃を繰り返すと、彼らに気づいたエースの銃撃でウィリアム巡査は胸に五・五六弾が突き刺さると、地面にドサりと倒れ込んだ。

「ウィリアム!」

「あー、あーーー!ファック、クソ…」

銃撃が少しの間止まると強盗団はその隙に一般市民が鍵を差したまま逃げたであろう十二代目トヨタ・カローラに乗り込むとアクセル全開で逃げ始めていた。

「ウィリアム巡査、しっかりしろ!」

「俺は…大丈夫ですエリス巡査…連中急所は外したみたいだ…それよりも…行ってください。連中を追いかけて!これが俺のパトカーの鍵です。そこに停めてあるクラウン・ヴィクトリアです…!」

ブルーはパトカーの鍵を受け取ると全力疾走しながらウィリアムの指差した方向へと走り、エマに向けて大声で叫んだ。

「ボス、ウィリアム巡査の介抱を頼みます!私は連中を追いかけます!」

「わかった、死ぬなよブルー!」

ブルーはパトカーに乗り込むとエンジンをかけ、アクセル全開でパトランプを点滅させながらカローラを追いかけ始めた。

「キング、これからどうする?」

「プランBで行く。ここの近くにある下水道から逃げて、川へ出るんだ。」

「イェッサー。」

「おい、キング、パトカーが一台追いかけてくるぞ。」

「クソ、執念深い奴だ…!」

エースはカローラの窓を開けると、十・三インチのM四をパトカーに目掛けて撃ち始める。走りながらであるため大きく狙いがブレていたが、パトカーの防弾ガラスにヒビを入れるには十二分の威力で徐々にパトカーの視界が狭まっていった。

「よし、ここだ、車を停めるぞ──」

そうキングが話した瞬間、ブルーの運転するパトカーはカローラの後ろ側に物凄い勢いで追突すると、エアバッグが作動し体の衝撃が吸収されていく。

強盗たちは追突された直後にすぐにカローラから降りると近くにある下水道につながったマンホールを無理矢理こじ開けて一人ずつ中へと飛び込んでいった。

ブルーは追突の衝撃で自分の肋骨が折れ、割れたガラスの一部が浅く体に突き刺さっていたが、構わずパトカーのドアを開けてのそのそと出ると、仲間を先に逃がしていたキングに思い切り飛びついた。

姿勢を崩したキングはうつぶせになって倒れると、ブルーの拳を振り落とした手を右足で挟み込んで拘束し、関節を絞められたブルーはたまらず体を回転させながら拘束を振り解くと、その隙に態勢を立て直したキングは腰に差していたウィルソン・コンバットのスーパー・グレード・コマンダー・スペシャルと向けるが、顔面を強打されてマスクが脱げ、あとに銃を下水道の入口へと投げ捨てられた。

そしてキングは視界が広まった状態で近距離でブルーの顔を見ると、何か気づいたような表情をしており、ブルーもキングの目を見て何かを確信していた。

「お前…クラヴ・マガと海兵隊マーシャルアーツを体得してるな…それにその瞳…鼻や口の形は変わってるがその目だけは忘れない…その青い目を私は知っている……!ケイト・ウィーバー、お前だな…!」

「…エリー…」




今から七年前の二〇一八年。ブルーことエリス・アンフォーチュンはアメリカ海兵隊の武装偵察部隊<フォース・リーコン>に所属し、不正規作戦に従事していた。

当時ブルーはアルファ小隊に所属しており、ケイト・ウィーバーはブラボー小隊に所属していた。

二人は毎朝MP四プレーヤーでガンズ・アンド・ローゼスのウェルカム・トゥ・ザ・ジャングルをかけて戦闘糧食に入っているコーヒーを飲みながら駄弁り、トレーニングに切磋琢磨している仲であった。

中央情報局が絡んだ極秘作戦故にこの作戦に携わった場合は除隊後に公的な軍歴の一切を消去されるという決まり事があったが二人はそれを知らされずに戦っていたのだ。

とある作戦だった。それはテロ組織〝マズバハ〟の指導者であるイサド・アル・ガイーブの抹殺もしくは逮捕という任務だった。

この作戦が終われば長きにわたる対テロ戦争に終止符が打てるかもしれないと躍起になっていたが、現実はそう甘くはなかった。

マズバハはどこから手に入れたのか当時最新式のアメリカ製追尾式ロケットランチャーでアルファ小隊を輸送していたシースタリオンを墜落させ、部隊の半数がその墜落で殉職。残ったエリス含む五人はマズバハによって拘束されると、どこかもわからぬ石造りの家に監禁され拷問を受けていた。

それは酷く凄惨なものでブルーは指先を何度も鈍器で叩き潰され、腹を何度もなぐられたことで妊娠できなくなった。他のメンバーも体の一部を切り取られた。

食事はほとんど豚の餌のようなものを与えられ、鈍器で体のあちこちを殴られた挙句、最終的には仲間通しでの殺し合いをさせられた。

その後ろでは中東圏では一般的な楽曲が永遠と流されていたが、それは文化の違う意味のわからない楽曲を永遠と聴かせることで精神を崩壊させるための拷問として中央情報局も活用している技術だった。

信頼できる仲間であったはずが闘争心をむき出しで家族の元へ帰るために皆死に物狂いで殺し合いをしていた。そこには海兵隊で最も守られるべき尊厳が存在していなかった。

エリスもまた極限状態の中で生き残るために全力で戦った。結果、自分と二等兵の時代から付き合いのある仲間の脊椎を破壊し、半身不随にしてしまったのだ。

「ごめん…マット…本当に許し、許して…ごめんなさい…ごめんなさい…」

そして他の海兵隊員の一人は拷問によって体を破壊されて動けなくなり、エリスに介錯を頼んだこともあった。

「頼む…もう楽になりたいんだ…俺は独り身だ…でもお前には夫がいるだろう?俺はもう足がこんなだ…とてもじゃないがこれ以上生きたところでなんの意味もない…頼む…俺を神の元へ送ってほしい…!」

エリスは震えた手で教官に教えられた技を使って仲間の首をへし折った。だが、殺したくないという甘さによって上手く即死させることはできなかった。エリスが介錯しようとした海兵隊員はそのまま動くこともしゃべることもできなくなり、三日三晩苦しんだ末に脱水と飢餓で死亡した。

その光景を見たエリスはこの世に神なんていないと悟り、これ以降宗教を信じることができなくなってしまった。

そうしてまた二人死に、生き残ったのはエリスと半身麻痺になったマット・ハリソン伍長だけだった。

何年も時間が経ったような感覚になっており、日に日にエリスの精神は崩壊の一途を辿った。

そうして八か月が過ぎた頃、マズバハの兵士はタラク・ピストルを抱えて瘦せ細ったエリスの元に立っていた。

ついに死ぬのかと銃口を覗いて目を閉じたその時だった。あたりから聞き覚えのある銃声がこだまする。

それはエリスが最も信じたアメリカの象徴、M四ライフルの五・五六弾とコルトM一九一一の四五ACP弾が発する破裂音だった。

タラク・ピストルを持った兵士はその銃声に気づくと部屋を後にしようとしたが、頭を撃ち抜かれるとその場で崩れ落ちて動かなくなった。

そしてマーパッド迷彩を着込んだ見覚えのある兵士が部屋の中へと入ってきた。

「エリー、大丈夫か?しっかりしろ、エリー!助けに来たんだ。もう大丈夫だ。おい担架だ!衛生兵も早く!」

それはケイト・ウィーバーを含めたブラボー小隊だった。ケイトたちは中央情報局の静止を振り切ってクビを覚悟で見捨てられていたアルファ小隊の救出に向かったのだ。

この時エリスはケイトこそが名誉勲章を授与すべきと考えていたが、この作戦は現在もトップクラスの最高機密に指定されており、世間へ認知されていない。




「ケイト…顔まで変えて何故こんなことをしている…?星条旗の前で宣誓しただろう!内外を問わずあらゆる敵から国を守ると…それなのになんだってこんなコソ泥に落ちぶれたんだ!」

「私も海兵隊をクビになった後は貯蓄でなんとか生活を賄えていたさ。退役軍人支援の企業だって設立した。だが、その金は持ち逃げされ会社も奪われた。挙句就職しようとしたら軍歴はないとのたまわれた!すべてを失った私は浮浪者に落ちぶれた。スラム街でゴミを漁って五年を過ごした。五年だぞ!仲間を救っただけでこんな屈辱はありえないだろう?だが、私と同じ境遇の人間がたくさんいることを知った。そうして浮浪者になった元軍人を集めて強盗ギャングを結成した…それにわたしたちが襲っている銀行は全てマフィアやカルテルが関わっている銀行だ。アニマルシティ中央銀行も既にロス・クルティードの支配下にあった。その証拠にマフィアが関わっている金には盗難防止の染料が仕込まれていない。私たちは市民の生活を脅かしちゃいないんだ…!」

「街中であんな銃撃戦を引き起こしてか!?」

「それはお前がジャック…いやジャスティン元一等兵の背中を撃ったからだろう!」

そんな口論を続けている最中だった。下水道から一発の発砲音が聞こえた。驚いたキングことケイトは急いで入口に飛び込むとそれを追いかけるようにブルーもまたそれを追いかけた。

「おいおいおいおい、何してるんだエース…」

そこにはクイーンの首根っこを掴んでシグ・P二二六の銃口を突きつけているエースがいた。

「ジャスティン・エルドリッジ元一等兵はここで殉職されました~。こんなお荷物抱えて逃げろなんて甘ちゃんすぎるぜ。ただでさえドリルが重いってのによ!それにコイツを消した方が分け前も増えるってもんだろう?」

そういうとエースは頭を撃ち抜かれたジャスティンの遺体を下水道の中に蹴り落とした。

「ふざけるなよエース…いやエイドリアン三等兵曹…お前はシールズとして合衆国を護ると誓わなかったのか?ヘルウィークは何のために…」

「誓った、誓ったさ。だがな、俺は無能だった。部隊でいびられつづけ〝エース〟と皮肉で侮蔑された。戦場では女子供しか殺せなかった。そんな俺にケイト、お前はまた俺をエースと呼んだ。気に食わなかったんだよ!」

「クソ…裏切りやがって…」

ケイトは腰に手をやってピストルを抜こうとしたが先ほどの戦闘で落としたことを思い出すと悔しそうな表情をした。

「それになんでお前はポリ公を連れてきやがったんだ!」

エースはそういいながらブルーに目掛けて発砲すると、ブルーの肩に銃弾が命中する。

「グッ…!」

「エリー!」

「エリー?なんだテメェ、ポリ公と知り合いだったってのか?俺たちを売る気だったのかお前は?あれだけカリスマみたいな雰囲気を出しておきながらそんな卑怯な真似をしようって考えてたのかァッ!?」

怒るエースはP二二六をケイトに向けて発砲するとケイトは血を吐きながら壁に横たわって倒れた。

「よーしよし。これで取り分はぜーんぶ俺様のモンになったってわけだ。クイーン。あんたもここで名誉の戦死を遂げようか…」

その瞬間だった。肩を撃たれたブルーはケイトとアイコンタクトをすると腰からゆっくりとM四五A一抜いてケイトのいる方向へと投げ渡した。

ケイトはピストルをキャッチするとエースの頭目掛けて二発の弾丸を発射し、目をそらしていたエースは額と眼球を撃ち抜かれ、そのまま自重で倒れ込んだ。

拘束が解けたクイーンは負傷したケイトの元へ走り、肩を持ち上げて立たせた。

「ハァ…今度からはもっと仲間を選ぶのに…慎重にならないとな…私の…怠慢だ…」

「喋らないでケイト…あの警官はどうします?顔も名前も見られてますが…」

するとブルーは目を閉じた。

「…私は何も見てない。私はお前たちと銃撃戦になり二名を射殺したが──顔は覚えてないし名前も知らない。激戦の末に〝負傷してピストルを奪われまんまと逃げられた〟。」

そのことを聞いたケイトは少し微笑むと下水道の先へと徐々に消えていった。

ブルーはたどたどしいタップでCLAWのメンバーに居場所を報告すると、そのままその場で気絶したのだった。

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