ラーメン食べてテーマパークへ
よろしければお読みください。旅行編開始です。
改札を抜け空を見上げると太陽が燦々と輝きながら、何もない空間を埋めるように枕にしたらきっと寝心地良いだろうなという感想を抱かせる雲が漂っていた。
「うーん」
両手をからめ上に大きく伸びをして全身のコリをほぐすように背伸びをしている彼女の目には小さな涙が浮かんでいた。
「よし、それじゃあ、まずはレンタカー借りに行くからついてきて」
携帯の地図アプリに映し出された目的地までの距離は徒歩で八分と示されており、それに従いながら進んでいった。
「ところで、この後すぐお昼食べにいくよね?」
「そうだけど、他に食べたい物でも見つかった?」
「いや、そうじゃないんだけど。ちょっとお手洗いに行きたくて」と少し恥ずかしそうに彼女は言った。
「それなら、先にコンビニでもよろっか。今から行く道すがらにあると思うし」
「うん、ありがと」
そうして歩き始めて少ししてすぐにコンビニが見つか中に入った。
「それじゃあちょっと待ってて」
店内で彼女と別れた後、お手洗いだけ借りて店を出るのは気が引けるので何か買うものを決めておこうと歩き回りいくつかの商品をカゴの中に入れた。
「おまたせ」
後ろから聞こえてきた声に振り返りつつ何か買うかを聞いた。
「そうだな、私これにする」
カゴの中には烏龍茶が入れられた。
「亮介君も何か買わないの?飲み物」
「そうだな、俺はコーヒーでいいかな」といつも飲んでいるブランドの物を手に取って入れた。
「それ、すきだね。家でもよく飲んでるし」
「うーん、好きってほどではないんだけど、なんか働き始めてからさ急においしく感じ始めたんだよ。学校だとほぼ毎日飲んでるし」
「そうなんだ」
その瞬間少し浮かない顔をしたような気がしたが、すぐにいつもの彼女に戻っていた。
「それじゃあ、私買ってくるからカゴ貸して」
伸ばされた手にカゴを渡すとレジまでどんどん突き進んでいくその姿を眺めていた。今回の旅行ではいくつかのルールを決めており、今回の旅行の代金は旅行が終わった後に二人で割り勘にするというもので、かといって毎回どちらか一方が奢っているような形は少し気まずいところがあるので、交代で払っていこうと決めていた。最初はそうした小さな額は俺が払うと言ったのだが、頑なに彼女が譲らなかったのでそういうことになった。あとで計算するのも手間だろうとも言ったがそれも誰かと旅行に行く醍醐味だと言われ今回のような形になった。だから次のラーメンは俺が払うことになる。
「お待たせ、はいこれどうぞ」
「ありがと」
袋の中から取り出されたコーヒーの缶を受け取るとキャップを回して蓋を取り、乾いていた喉に流し込んだ。苦味の中からコーヒーの匂いが鼻を通り抜けるように香ってくる。
飲み物を飲みながら二人でレンタカーを借りに行った。予約はしてあるので最低限の保険や注意事項などを聞かされたあとすぐに車を貸してもらうことができた。車に乗り込みボタンを押すとすぐにエンジンが動き始めた。
「出発しても大丈夫そう?」
「うん、いいよ」
助手席に座りシートベルトを締め終わったのを確認してアクセルを踏み込み、そこで働く店員の誘導に従いながら路上に出たが、ナビをセットするためにすぐに車を路肩に停めた。
「これでよしっと」
携帯に表示された住所とナビに映っている目的地の住所が同じことを二回ほど確認して登録して言った。
「それじゃあ、運転よろしくね」
「ああ、でも運転あんまり慣れてないから何かあったらごめんな」
「いきなりそんなこと言わないでよ!」
彼女が強めに左肩を叩いて来て、それが合図となって再び道路の流れに身を任せるように合流していった。信号が赤になり青に変わる。ナビゲーションシステムの音声に言われるがままにハンドルを右に左に切り返す。信号が再び赤になり車の動きを完全にとめると横に座る彼女の姿を眺め奇妙な感覚を得た。底にいるはずなのにそこにいないようなそんな感覚。二人で旅行しているのにまるで一人旅行に行っているような気分になり思わず彼女に話しかけた。
「あっ、そういえばさ最近どう?」
「最近、いや特に何もないよ。どうしたのいきなり?」
「いや、なんでもないんだけど、新幹線の中では俺ばっかり話していたから今度は西宮さんの話も聞いてみたくてさ」
「うーんそう言われても特に面白い話もないけど、いつも通り亮介君を見送った後は部屋の掃除とか買い出しとか、あっそう言えば前行ったスーパーで店長お勧めってポップが書かれてて、山のように積み重なって売ってあったけど、それがらっきょで嘘つけと思ったことぐらいかな」
「確かに、らっきょっがお勧めってなんか変な感じ」
「でしょ、あっ信号変わったよ。それに後少しで着くってさ」
言われて前を向きなおすと信号は確かに青になっていた。その後しばらくした後ナビが目的地まで連れてきてくれた。その店は九州では有名な豚骨ラーメンのお店らしいが今住んでいるところの近くで見たことは無かった。車を駐車場に止め扉を押して入ると店内には濃厚な豚骨の匂いが漂っており口の中に唾液が溢れだした。
「すっごい、いい匂い。私これまで豚骨って言うと臭いイメージしかなかったんだけど間違ってたみたい」
食券機の前でトッピングを何にするか前のめりになりながら考えている彼女の後ろ姿を眺めながら、店内を見渡した。
「私これにする」と渡したお金を投入し目当ての商品の名前が書かれているボタンを押した。値段は近所で食べられるラーメン店よりも少し高く、そのうえ豚骨一本で勝負しているようで他の醤油ラーメンなどは無かった。彼女は食券を大事そうに取り出し順番を譲ってくれた。
食券機の前に立ちいくつかのトッピングと替え玉の食券を手に彼女が座っている丸椅子の横に並んで座った。彼女は何かを熱心に考えながら書き込んでおりそれを眺めていると店の店員が同じ物を手渡してきて中身を確認すると麺の硬さやニンニクの量など色々客好みに変更できることが分かった。
「ニンニクかーどうしよっかな。臭くなるかな」
一人呟きながらアンケート用紙に向き合っている彼女の悩みを解決するように言った。
「さっき、豚骨だからタブレット買っておいたから大丈夫だと思うよ」
「えっ、ほんと?やった!」
その言葉を聞いて彼女は安心したようにニンニクありに丸を付けた。以前からの食生活を少し見ている身からするとその光景に少し違和感を感じたが、彼女の横顔を見るとそんなものはすぐにかき消された。
その後食べていた客が店を退店するとしばらくして店員が呼びに来た。席に着くとそこには仕切りがあり、隣に座っている客が見えないような構造になっていた。だがせっかく一緒に旅行に来てるということもあり「仕切りを外さないか」と提案すると快く了承してくれ、二人でこれまで知らなかった新鮮な状況を楽しみながら先ほど注文した食券をテーブル前に置き商品を待った。
「うわー凄い良い香り」
店先から漂ってきていた匂いの基が目の前にあり、色も鮮やかで嗅覚だけでなく視覚からも食欲を刺激した。
「いただきます」
二人で手を合わせて、まずはレンゲを手に取りスープを一口、口の中に運んだ。濃厚な豚骨の味と風味で満たされていき、続けて麺をとり一息で音を立てて啜るとスープと絡んだ細い麺が瞬く間に脳に次をお代わりさせた。
「ふー」
食べ終わるまで彼女とは一言も交わさなかったけどそのことに何の不満もなかった。むしろ一度食べ始めたら食べ終わるまでは一人黙々と没頭することが正しいことのように感じられた。
「おいしかった。西宮さんはどうだった?」
喉を鳴らしながら口の中の味をリセットし終わるとコップを置いた。
「おいしかった!正直ここまでとは思ってなかった。量もちょうどよかったし」と言い再度口元にコップを持っていった。
その後二人で店を出て車に乗り込み、今日のゴール地点であるホテルに向かって進み始めた。初めてに近い高速道路での運転に怯えながらも、時間が経つにつれて次第に周りの速度に慣れていき、気が付けばアクセルをべた踏みしてみるみる内に車は加速していった。車内には聞いたことあるような無いような,男女が次々に流れる流行りの曲に対してコメントしていた。
「そろそろサービスエリアよる?」
隣で窓の外の流れていく木々を眺めていた彼女に向かって声をかけると長く伸びた髪を耳にかけながら振り向いた。
「うん、お願い!」
車を左車線に移動させて、速度を少し上げた。サービスエリアに着くと乗っている車の何倍もある大きさのトラックの間をすり抜けながら駐車スペースを探した。
車を停め、降りると心地よい風が肌を撫で凝り固まった体を一気にほぐしていった。
「ちょっとお手洗い行ってくるけど西宮さんはどうする?」
「私も行こっかな。でそのあとちょっと中みたいかも」
「おけー分かった。それじゃあ中集合でいい?」
客が入っていき開閉する自動ドアを指さして言った。
「うん、それじゃあ後で」
お手洗いを出た後、中で再び合流して少し見て回り、小腹が空いたのでちょっとした食べ物を買って車に戻った。
「あと少しかな」
「そうだね、あと一時間ぐらいで着くと思うよ」
「あと少しだけど運転よろしくね」
「了解」
エンジンを入れアクセルを踏んで再び高速道路の流れに乗り込んだ。そこから一時間ほど特に問題もなく予定通りにホテルに着くことができた。ホテルの中に入りチェックインをして部屋の中に入ると、しわ一つない白いベッドやシャワールームの場所を確認して最後に窓の外を二人で眺めた。ホテルの部屋は14階にあり、明日行くテーマパークの一部を見ることができ、パーク内にはいまだ多くの人たちがいた。
「この後、どうする?夜まで少し時間あるし」
時計を見ると時刻は五時を過ぎており、あと一時間ほどの猶予があった。
「そうだね、まあ後一時間ぐらいだし部屋で待ってたらいいんじゃない?荷物の整理とかもしておきたいし」
彼女はそう言って白いベッドに飛び込んだ。
「これやって見たかったんだよ」
トランポリンで遊ぶようにベッドを浮き沈みを繰り返していた。
「亮介君もやってみなよ」
「えっ」
「いいから、いいから楽しいよ」
そう言われて隣に用意されたもう一つのベッドの上に飛び込んだ。こんなことをしたのは久しぶりだったので思いのほか楽しく感じられた。
「ほらね、ホテル来たらこれやらないと」
「確かにこれはやらないといけないな」
ゆっくりと反発が無くなっていくのを感じ終わると上体をあげてベッドの上に座りなおした。彼女はいまだに横になったままだった。特に話すこともないのでそのままの姿勢で少し時間をつぶした。
「よし、それじゃあ時間もあとちょっとあるし、下で売店でも見に行こっか」
「えっ、荷物の整理は?」
「ん、そんなの後でいいじゃん。とりあえず行こ!」
「あっうん。分かった」
ここ一か月ともに過ごしてきたが、彼女は人のことを考えて行動できるタイプの人らしい。それと同時に同じくらい人を振り回す才能にあふれていると感じた。今回の旅行だって考えてみれば彼女の発案だった気がする。だが今こうして旅行に来てよかったと思っているところ、彼女の意見にはのっておくことが良い気がする。
「それじゃあ行くよ」
先に扉の前に行き、出てくるのを待ってくれその後部屋から二人で出てエレベータで下っていった。
ありがとうございます!次回もよろしければご覧ください!




