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勿忘草  作者: アイス
16/22

終結

よろしければご覧ください。

 「おはよ、そろそろ着くよ」


 耳に届く優しい声に導かれて目を開けた。


 「ん?」


 「もう、寝ぼけてるの」


 結花は穏やかにほほ笑んでいる。


 「ああ、いやありがと。もう着いたんだ」


 「うん、そろそろ降りる準備しないといけないけどできそう?」


 窓の外は暗く、建物を照らす光が次々に飛んでいきレーザーのようだった。結花の問いかけにぼやけた頭で考えて何とか頷くことはできた。だがすぐに行動に移すことはできず少しの間ぼーっとした後ようやく体を動かすことができた。時計を見ると八時を過ぎていた。


 「ちょっとお腹減ったな」


 「そうだね」


 結花は黙々と準備を進めていたが棚の上にあげたお土産やカバンは奥の方まで移動していたらしく取れない様子だったので代わりに取った。


 「ありがと」


 「ごめん、ちょっと奥に入れすぎたかも」


 下車する準備ができたので再び椅子に座り込む。そして30分が経った頃に車内にアナウンスが流れた。どうやらついたらしい。周りから聞こえてくる音が次第に騒がしくなってくる。


 「それじゃあ、そろそろ行こっか」


 「ああ」


 新幹線が駅に着くよりも先に席をたった。


 無事に到着することができホームに降り立つと二日ほど離れていただけなのに不思議と懐かしさを感じた。それは結花も同じらしく、駅のホームをキョロキョロと見回しほんの一瞬だけど気が抜けた様子になったのを見逃さなかった。

 

 「あとちょっとだね。忘れ物無い?大丈夫?」


 ポケットやカバンの中を一応確認したが特に忘れている物は無かった。それにもし、置き忘れていたとしても携帯や財布以外なら正直どうでもいいと言えばどうでもよかった。


 「大丈夫そ。それじゃ行こっか」


 「うん」


 新幹線から降りた後は普段使っている電車に乗り込み、20分ほど電車に揺られ住んでいる町までもどってくることができた。


 「何食べる?」


 「うーん。私は何でもいいよ。亮介君が食べたいもので」

 

 夜道を歩きながら二人で店を探していた。今住んでいるところは繁華街のような場所とは違ったので、九時頃になると店が閉まり始め食べたい物と言ってもチェーン店ぐらいしか選択肢に無いのが事実だった。


 「俺もなんでもいいな。あっハンバーガーとかどう?」


 「ハンバーガー?」


 「なんか急に食べたくなってきた」


 「そうなんだ。うーんいいよ。何か新作とか出てるかな?」


 食べるものが決まり、店までの道中は何を食べるかの話で盛り上がった。そして結花は新作や期間限定とかの言葉に弱いらしくメニューを確認しながら結局その時の限定商品を食べることに決めていた。そして店に到着して店内で各々が食べたかった物を注文し席についた。夜のチェーン店は昼とは違いゆっくりと時間が流れていく感じがあった。いつもなら騒がしいキッズスペースも今はがらんとしており、寂しさが感じられ、店内の灯りもそれに合わせたかのように薄暗く落ち着いた色になっている。


 「久しぶりに食べたけど、おいしかったね」


 「たまに食べるとすごく美味いんだよな」

 

 「分かる。毎日はいらないけど偶に無性に食べたくなるのはなんなんだろね」


 満腹になり特に意味の無い会話を続けながらゆっくりと歩いているとマンションの姿が見え、歩く速さが自然に速くなる。


 「ただいま」


 マンションのエントランスを通りすぎ、エレベーターに乗り部屋の前までようやくついた。扉を開け中に入ると暗く電気をつけようとして手を伸ばそうとしたときには既に彼女がスイッチに手をかけていた。


 「どうする、お風呂先に入る?」


 「ううん。先に入っていいよ」


 「ありがと、それじゃあ入ってくるね」


 彼女が風呂場へと姿を消した後、荷物を少し整理することにした。まずはお土産の袋を取り出し持っていくときに忘れないように普段使っているリュックの側において置き、自分たちの分はテーブルの上に置いて間違わないようにした。その後、着替えなどを洗濯機の側に置いてあるカゴの中に放り込んだ。風呂場からはシャワーの音と共に結花の鼻歌が聞こえてくる。風呂場から居間へ行き、冷蔵庫から一本ビールを取り出し蓋を開けた。爽快な音が響きコップに注いでいると結花が風呂からあがってきた。


 「あっ、私も貰える?」


 髪の毛の水分を吸い取るように丁寧に拭いている結花の姿に少しドキッとしたが、平静を装ってすぐにもう一つコップとビールを持ってきて注いだ。


 「飲むの珍しいね」


 「そうかな?あっ、ありがと」


 コップを手に取り喉を鳴らしながら飲むその姿はどこかのCMのようだった。


 「普段、あまり飲まないじゃん」


 「確かに言われるとそうかも。でも前は飲んでたよ」

 

 「そうなんだ」


 確かに言い飲みっぷりではあった。


 「ちょっとお酒で失敗したことがあってね。それから控えるようにしてるの。でも今日は特別」


 そう言って残った分を口の中に納めていった。


 「亮介君も入ってきたら。シャワーだけどすっきりするよ」


 促されるがままに風呂場に行き、着ている服を脱いで中に入った。疲労のせいだろうか一杯しか飲んでないのにやけにアルコールのまわりが良い気がする。


 「着替え置いとくね」


 扉の向こうに結花の姿がシルエット状になって現れた。


 「ありがと」


 「はーい。どういたしまして」


 扉が閉まる音を聞きながらシャンプーを流し落としすぐにあがった。


 「もうあがったの?」


 「ああ。すっごい眠い」


 「そう。それじゃあ寝よっか。私も片付け明日にしよ」


 床に膝をつき片づけをしていた結花は反動を付けて立ち上がり、部屋まで俺を連れて行ってくれた。


 「それじゃ、お休み」


 「お休み」


 部屋の扉が閉まり人の気配が無くなり音がしなくなった。ホテルのベッドも寝心地の良いものだったがやはり家で使っている物が一番いい。今日は布団の中に包まって眠ることにした。

次回からはまた日常編です、よろしければご覧ください。日常編は亮介の職場での話にしようかなと考えています。

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