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勿忘草  作者: アイス
15/21

九州旅行最終日

よろしければご覧ください。

 「これ、おいしい、亮介君食べる」


 「あっ、食べたい」


 目は窓の外を向きながら、先ほどよったサービスエリアで買った長崎限定と書かれていたお菓子を受け取った。自動車の自動運転システムを使っているので手を添えているだけで勝手にハンドルが動いて速度を調節してくれる。行きも使えばよかったと後悔するほど便利だった。


 「すご、ビワの味がする。あんまり食べたことないけど」


 「はは、そりゃあするでしょ。ビワ味って書いてあるんだし。でもほんとにおいしいね。戻ったら買ってみる?」


 「ビワを?」


 「うん」


 「いいね、売ってたら買おっか。でもネットでは買わなくていいかな。偶然巡り合えたらで」


 「そうだね」


 結花はそう言いながら顔を前に戻して、さらにもう一つ取り出して口の中に放り込んだ。そして渋滞などにひっかかることもなく無事に福岡まで戻ってくることができ、先にレンタカーを返すことにした。


 「はい、大切に使っていただきありがとうございました。またのご利用心からお待ちしております」


 破損した場所が無いか等の確認が終わった後、深々と頭を下げる店員にお礼を伝えた後店の外に出た。


 「これでレンタカーも返し終わったし、身軽になったね」


 目を細めながら伸びをする結花を横目に、運転で凝り固まった体を同じようにしてほぐした。


 「あとは職場とかにお土産とか買っていくよね?それ今から見に行く?」


 「あっ、それはそうなんだけどさ、せっかく旅行に来たんだから普段やらないようなことしたいんだけどいい?」


 「うん、別に私はそれで構わないけど、したいことって?」


 「ゲームセンターに行って、費用とか考えずに遊びたいんだけどいい?」


 「何それ。でもおもしろそうだねそれ。行こ!」


 携帯のアプリで調べると徒歩で十分程度の場所にゲームセンターがあってそこに行くことにした。

 

 結花がゆっくりとこちらを見ながら言った。


 「それにしてもゲームセンターでお金を気にせず遊ぶなんてちょっと大人になったからこそできることって感じがしてすごくいいなって思うな」


 「そうかな?」

 

 「そうだよ。私はできなかったからさ、そういうこと。もし、してたらちょっとは変わってたかなとか思うけど、いまさら言ってもねって感じもする」


 こちらを見て話していた結花だったが、途中で前を向いてどこか投げやりな様子でそう語る姿に言葉を返すことができなかった。


 「ごめんね、なんか湿っぽい話方になって。とにかく今は大丈夫だからそんな顔しないでいいよ」


 そんな顔とはどんな顔なのだろうか。携帯で確認してみるがいつもと何も変わらなかった。


 「亮介君、それよりほら見てよ。あそこじゃない?」


 顔をあげて確かめてみると想像していたよりも大きな建物だったため、思わず携帯を見てみたが間違いではないようだった。建物が広く敷地内の駐車場には奥の車が停めてあり、店は繁盛しているようだ。


 「なんか、思ってたよりも本格的な場所だね」


 「確かに、想像してたのよりも大きいな。とりあえず入ろ」


 「そうだね」


 自動ドアが開き中に入ると、店の中はメダルが機械から流れ出る音やユーフォ―キャッチャーの音で賑わっていた。


 「わっ、すごい音」


 「家の近くのパチンコ屋みたい」


 今までに経験したことのないような空間に僅かに抵抗感を覚えつつも、とりあえず中に進んで行った。店の中を見回っている間に、次第に音も気にならなくなりそれと並行して高揚感も感じれるようになった。


 「これしてみない?」


 「いいじゃん、しよ」


 まずは目についた最近流行りのアニメのフィギュアが入った台に挑戦することにした。だがいくら投資しても取れそうになく、惜しいというところにすら到達できなかったので割と早い段階で諦めて別の台にすることを決めた。


 「私、これしてみたいな」


 結花がそう言って立った台の中にはどこでも買えるような駄菓子の詰め合わせが商品として飾られていた。


 「これ取るの、子どもの頃のちょっとした夢だったんだよ」


 そう言う彼女の姿は幼い子どものようだった。これまで小さな子どもたちを相手にしてきたから分かる子どもが持つ底なしの明るいエネルギーがそこにあり、全力で今この瞬間を楽しんでいる様子だった。


 「もー取れない!」


 怒ったように言う彼女を見つめていた。


 「亮介君もやってみてよ」


 不意を突かれ緊張したが、どうやらばれなかったらしい。結花に言われるがままに台の前に立ち中を覗き込むと最初の位置からかなりずれており、あと数回で取れそうだった。


 「これ、あとちょっとで取れそうじゃない」


 「えっ、だったら私がしたいな」


 「うん、いいよ。俺が横から言うからやってみて」


 「オーケーちょっと早めに言ってね」


 アームに集中してみてまずは結花がX軸を揃えた。そしてその後Y軸方向に移動してきたので今度は俺の出番だった。


 「ストップ、ストップ!」


 「どうだろ、行けたかな」


 二人でゆっくりと下に降りてくるアームをのぞき込むように見ていた。どうやら場所は完璧だったようだ。アームは景品をがっちりと掴み揺れても落ちることなく、手元まで運ばれてきた。


 「やったー!」


 「よかった!」


 排出口から持ち上げた景品を見ながら二人で喜んだ。ただの駄菓子だがそれでも嬉しいことに変わりはなかった。


 「よし、次行こ!」


 「そうだね!」


 それからはぐるぐると目にはいった景品の台に二人で挑戦し、取れたり取れなかったりしてそのたびに一喜一憂してその時々を満喫した。


 「はー楽しかった」


 「だね、来てよかったね」


 取った景品を袋に詰めてベンチに座っていた。トータルで10個ほどの景品を取ることができた。中には何故取ったのか分からないような物もあったが、それでも店でお金を出して買うのとは違う満足感を感じることができた。


 「それにしても、亮介君メダルゲーム得意なんだね」


 「そう?たまたまじゃない?」


 笑いながらそう言うと彼女もつられて笑った。


 「にしてもだよ。まさか十枚から五百枚以上増やすなんて思わなかったもん」


 「確かに、自分でも驚いてる。初めてかも一台の機械からメダルを出し切って店員さんを呼ぶことになったの」


 「私も初めて見たよ。小さい頃はたくさんメダル持ってる人羨ましかったけど、まさかそんな状態に亮介君がなるなんて」


 「ねっ、なんか運が良かったのかも」


 「そうかもね」


 自販機で買ったコーヒーを飲みながらダラダラと感想戦のような時間が過ぎていった。


 「そろそろ、ここ出てお土産買いに行こっか」


 「もうそんな時間?」


 「うん、今大体夕方の四時ぐらいだからそろそろお土産買いに行った方が良いかも、帰りの新幹線は六時頃だからね」


 「そうだったけ。それならそろそろ出よっか」


 店の外に出ると灰色の雲が、延ばされたピザ生地のように空に広がっており、急ぎ足で駅まで向かった。駅周辺は多くの人でごった返していて真っすぐ歩くことができず右に左に人を避けながら、さながら弾幕シューティングゲームのようだった。


 「すっごい人だね」


 駅構内の店に入ってからも人の多さで酔ってしまいそうになるほどだった。


 「だね、とりあえず見て回りたいんだけど大丈夫?」


 「うん、ついて行くから大丈夫だよ。ところでお土産には何にするの?」


 「そうだな、とりあえず全員分にはちょっとしたお菓子のつもり。明太子のお煎餅とかありそうじゃない?」


 「いいじゃんそれ。ところで自分たち用には何か買っていく?」


 「そうだな、何かいいものがあれば買って帰ろっか」


 「よし決まり、それじゃまずは亮介君のやつからだね」


 しばらく店の中を歩いていると先ほど言っていたようなものがあったので、候補のうちの一つに入れて次から次に見回っていった。だが見れば見るほど何がいいのかよく分からなくなってきたので、後ろからついてきている結花の方を見て相談したら、最初のがおいしかったと言われたのでそれにすることに決めた。


 「よし、数も十分あるしこれでいいかな。それから自分たち用のも買えたし」


 袋の中には同じお土産が二つ入っていた。結局あの後、自分たちのお土産を選ぼうと色々と試食して回ったが、学校にもっていくお土産が一番おいしいと思え、そのことを伝えると偶然にも結花もそう思っていたらしく最終的に同じものを学校用と自分たち用で買うことに決めた。


 「これで、やるべきことは終わったね」


 時計は五時半を回っており、そろそろ新幹線のホームに向かわなければいけなかった。


 「そだ、夜ご飯どうする?帰ってからにする?」


 「どうしよっか。正直今お腹空いてないんだよね」


 「そう?なら戻ってからにしよっか。それでいい?」


 「いいって、それは俺のセリフのような気がするけど結花さんが良いならそっちの方が良いな」


 「それなら、戻ってからにしよっか。あっでも飲み物とかは買っておいた方が良いかもね。あの改札の向こうにコンビニあるから行っとこ」


 まだ少し時間があったが俺たちは改札の中に入り、お手洗いなどを済まして新幹線が来るまでの時間をゆっくりと過ごしていた。そして時間が来て帰りの新幹線が来て乗り込んだ。自分たちの席に座ると自然と窓の外に視線が移り、この数日間の思い出が頭の中を駆け巡っていった。楽しかった思い出、後悔した思い出、そのどれもに今同じように窓の外を眺めている彼女の姿があった。結花は待っていてくれと言っていた。俺はその言葉を信じて待っていようと思う。きっとその先の答えが俺の望むものでなくても今回の旅行で自分の思いを告げることができたことに後悔することはないだろう。それぐらい俺の中では結花の存在は大きな物になっていた。


 「楽しかった」


 横に座る結花がそう言ったような気がして隣を見ると彼女の顔は髪に隠されていて詳しくは分からなかったけど、どこか温かい気持ちになった。そしてしばらくすると右腕が少しだけ重くなった。

 

ここまで読んでいただきありがとうございます。次回は短めに家に帰るまでの様子を書きたいと思いますのでよろしければご覧ください。これで旅行編は終わりになります。

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