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勿忘草  作者: アイス
10/22

奇妙な時間

久しぶりの更新になります。よろしければご覧ください。

 売店でしばらく商品を物色したあと、いくつかの商品を買い込んで再び部屋に戻り、今度は身一つでホテルのレストランまで来ていた。


 ホテル内に設置されたレストランには和食から洋食、中華までと幅広い客の要望に応えるように様々な店が乱立しており、時間帯が時間帯ということもありどの店も順番待ちの列ができていた。


 「どこにする?昼はラーメンだったし」


 「和食とかどう?ほらあそこ」


 指さした先には蕎麦屋があった。基本的に麺類が好きなのだが、どうやら夜に蕎麦を好んで食べる人は少ないらしく、どの店も混みあっている様子だったが、その店は特に待つことも必要なさそうだった。


 「うん、いいんじゃない?」


 「ほんと?正直、昼がラーメンだったから断られると思ってた」


 「確かに言われてみればそうだね。でも私特に食べたい物もないし蕎麦でいいよ。それに空いてそうだし」

 最後のセリフは働いている人を気遣ってなのか、少し小さな声で囁きかけるように言っていた。


 了承も得られたということで二人で蕎麦屋の前に来た。中から若い女の店員が出てきて席に案内してくれたあと、メニューを持ってきてくれた。


 「うーん、どれにしようかな」


 「私はこれにする」


 メニューを流し読みした彼女はすぐに決めていた。


 「どれ?」


 「ん、これ、あったかいお蕎麦」


 「それだけで足りる?」


 「足りるよ。正直まだラーメンがお腹の中にいる感じがするから、一旦これでいいかな」


 「じゃあ俺は、これにしよ」


 その後近くにいた先ほどとは違う別の店員に話しかけ注文を終えると二人で向き合った。


 「明日は何時に部屋を出る感じにする?」


 「うーん。中に入れるのが確か9時ぐらいだったよね。それじゃあ8時45分ぐらいでいいんじゃない?このホテルからだと入り口まで近そうだし」


 「それもそうか。良かった聞いておいて。なんか心配性なのか知らないけどいつも必要以上に早く出ちゃうんだよね」


 「そうなんだ、でも多分大丈夫だと思うよ」


 それからほどなくして注文している物が届いた。机の上に容器が置かれた瞬間、出汁の香りが漂い始め胃が活動を再開し始めるのを感じた。


 いただきますと手を合わし二人で香り豊かな蕎麦を頬張った。啜る音が耳に心地よく次々に手を出してしまう。気が付けば麺は無くなっており、一緒に頼んでおいた炊き込みご飯に手が移った。


 「ふーおいしかった」


 「そうだね」


 二人で出されたお茶で喉を潤しながら、食後の満足感に浸っていた。


 「そろそろお風呂入りに行く?ここ温泉が付いてたよね」


 「うん、いいね。そうしよ」


 会計を済ませた後急いで部屋に戻り着替えを取って温泉の前まで来た。


 「それじゃあ、また後で。先にあがったら部屋に戻ってていいから」


 「分かった。じゃあまた後でね」


 彼女と別れた後、垂れさがった暖簾を潜り中に入っていった。着ていたものを脱ぎ捨て中に入ろうと脱衣所と風呂場を区切る扉を開けると、湯気が全身を撫でまわして後ろに抜けていった。


 かけ湯をしてから、全身を洗いジェットバスのついている湯船につかった。泡が四方から噴き出しており、ここまでの疲労が泡と共に弾けて行った。次は外にある一人専用の風呂につかった。貯められていたお湯が一気に流れ出し、思わず破顔した。その後しばらく徘徊して設置してある一通りの温泉を楽しんだ後、締めとしてサウナに入り、血液が全身を世話しなく駆け巡り、汗が吹き出し始め我慢していたが、ついに耐えられなくなりサウナ室から出て汗を洗い流し、隣の水風呂に浸かった。途端に血管が締め付けられていくのを感じながら、しばらくして外に出て備え付けのサウナチェアに座りこみ、体が弛緩していくのを心地よく、気が付けば暗くなっていた夜の空を眺めていた。


 部屋に戻ると彼女は既に寝間着に着替え、髪を乾かしていた。


 「あっ、お帰り」


 「ただいま」


 ドライヤーの音で声がかき消されてしまわないように少し声を張るように言った。


 「いやーさすがに脱衣所で髪を乾かしきるのは無理っぽかったからさ」


 「へー」


 自分のすっかり乾ききった髪の毛を右手で一撫でして、男女の違いというものを感じた。喉が渇いていたので、先ほど買った炭酸飲料の蓋を回して、一息に気が済むまで飲んだ。炭酸の刺激が喉に嬉しい。


 喉を潤しながら、髪を乾かす彼女の姿を見ていた。普段から化粧をあまりするタイプではないようだが、おそらく今はノーメイクだろうに彼女の顔はこれまで見た人達と比べるとあまりにも頭一つ突き抜けて美しかった。肌の白さが特に窓の外の暗闇との対比で際立っていた。


 「ん、どうしたの?」


 視線を感じ取り、髪を乾かしきった彼女がドライヤ―をおいてこちらに振り向いて言った。


 「なんか、ついてる?」


 「あっ、いや、綺麗だなって思って」


 「えっ、あっそうなんだ。ふーん」


 風呂に入った後だからか顔が紅潮していた。普段小学生を相手にしているからだろうか、似合ってるやかっこいいや可愛いと言った言葉を多用しているためこういう時、躊躇いもなく言ってしまう。傍から見れば口の軽いヤツだと思われるだろうが、既にそうした言葉に対しての羞恥心のようなものは消えていた。


 「嬉しいけど、あんまり人前では言わない方が良いと思うよ。まあ小学生相手だったらいいと思うけど、大人の女性には簡単に言わないほうがいいかな」


 「感じたことを言ってるだけなんだけどな。まあ、西宮さんが言うならそうするよ」


 「偉いね」


 満足したように彼女は僕の側に寄ってきた。同時に温泉で使ったであろうシャンプーやリンスの香りも漂ってきて変な気分になってくる。だが、彼女には今考えているような邪な気持ちは無いらしく、パークの園内地図をもって隣に座ってきた。信頼されているのは分かるが正直我慢するのもしんどい。


 「とりあえず、明日はまず自転車借りよーね」


 「自転車?」


 「うん。ここってさ調べたんだけど土地が広いから自転車の貸し出ししてるんだって。それにただの自転車じゃなくて二人乗りとか四人乗りとか結構面白そうじゃない?」


 「そうなんだ。知らなかった。確かにいいね。面白そう。そのラインナップだったら二人乗りの自転車借りようよ」


 「うん、いいと思う。それじゃあ明日はとりあえず自転車借りてからだね。でさ・・」


 そうこうしているうちに時計は10時を過ぎていた。一通り明日行く場所を決めた後、二人で少しばかり晩酌をした。程よいアルコールのおかげかその後ベッドに潜り込み天井を眺めていると、気が付けば隣から寝息が聞こえてきて、その音を聞きながら目を閉じた。

 ここまで読んでいただきありがとうございます。インフルに罹っており、1週間ほど床にふしていました。今は何とか体調も回復してきており、後遺症の咳なども収まりつつあります。

 さて、これからも不定期で更新していく予定ですので、よろしくお願いします。

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