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転生王子はスライムを育てたい ~最弱モンスターが世界を変える科学的飼育法~  作者: 宵町あかり


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第99話 闇の覚醒

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

転生王子はスライムを育てたい第99話をお届けします。


対極の調和の研究を本格化させようとしたその朝、突如として王都上空に巨大な影が現れます。「絶望の翼」—予言者が警告した七つの闇の一つが、遂に姿を現しました。人々の心を蝕む禍々しい波動、崩れ落ちる建物、そして漂う絶望感。レオン、フィルミナ、マリーナの三人も、闇の心理攻撃に晒されます。しかし、炎と水、対極のペアであるフィルミナとマリーナの絆が、光を生み出します。二人の手を取り合う瞬間、白い炎と青い水の光が融合し、調和の兆しが現れます。封印の間への道を進む三人。戦いの幕が、今まさに上がろうとしています。


お楽しみください!

 翌朝。


 レオンは、研究室で昨夜書いたノートを見直していた。


 『明日から、対極の調和の研究を本格化する。各ペアごとに、調和の波動を生み出す方法を確立する。炎と水、大地と氷、風と光。そして、三つの波動を統合する。それが、封印強化の鍵だ』


 ノートに書かれた文字を見つめながら、レオンは胸の奥に不安を感じていた。


 古代の人々と同じように、対極の調和を使えば封印を強化できる。理論的には、それが正しい。でも、僕たちはまだその力を完全には理解していない。六体との絆はある。それは確かだ。でも、本当に闇に対抗できるのか...?フィルミナたちに、こんな危険な戦いを強いていいのか...?みんなを守りたいのに、逆に危険に晒してしまうかもしれない...。


 ノートを閉じた時、扉がノックされた。


「レオン様、おはようございます」


 フィルミナが、部屋に入ってきた。


 レオンは、ノートを脇に置いて顔を上げた。


「おはよう、フィルミナ」


 フィルミナは、レオンの表情を見て、優しく微笑んだ。


「不安そうですね、レオン様」


「...そうだね」


 レオンは、正直に答えた。


 フィルミナは、レオンの隣に座り、静かに語りかけた。


「封印の弱体化は深刻です。それは、私たち全員が感じています。でも、私たちには可能性があります。古代の六体が成し遂げたこと、私たちも必ずできる。炎のフィルミナとして、私は全力で封印を守ります。リーダーとして、みんなを導く責任もあります。そして何より、レオン様を信じています。あなたの研究が、世界を救う鍵になる。私は、そう信じています」


 フィルミナの言葉に、レオンは少し救われた気がした。


 その時、扉が勢いよく開いた。


「おはよう、レオン!フィルミナ!」


 マリーナが、明るい声で飛び込んできた。


「私も仲間に入れて!」


 マリーナは、二人の前に立ち、両手を腰に当てた。


「封印のこと、心配だよね?でもね、レオンとみんなが一緒なら、きっと何とかなる!水のマリーナとして、私も全力で頑張るから!みんなの笑顔、守りたいんだ!だから、一緒に頑張ろう!」


 マリーナの明るさに、レオンとフィルミナは顔を見合わせて微笑んだ。


「ありがとう、二人とも」


 レオンが、立ち上がった。


「君たちがいてくれるから、僕は戦える。炎と水、対極のペア。フィルミナとマリーナ。古代のイグニスとアクアのように、二人が協力すれば、きっと—」


 その時だった。


 窓の外が、急に暗くなった。


「...何だ?」


 レオンが、窓に駆け寄る。


 空が、黒い雲に覆われていた。


 しかし、それは普通の雲ではなかった。


 まるで生き物のように蠢き、禍々しい波動を放っている。


「レオン様!」


 シグレが、息を切らして研究室に駆け込んできた。


「遺跡の方角から、強大な魔力の波動が...!封印が...封印が崩れかけています!」


 レオンの顔が、蒼白になった。


「すぐに確認に向かう!」


 レオンは、フィルミナとマリーナを見た。


「二人とも、一緒に来てくれるか?」


「もちろんです」


「当然だよ!」


 三人は、研究室を飛び出した。


---


 王都の大通りを駆け抜けながら、レオンは空を見上げた。


 遺跡の方角から、黒い雲が急速に広がっている。


 その雲は自然のものではなく、まるで生き物のように蠢き、禍々しい波動を放っている。


 空全体が暗く染まり始め、王都の人々が空を見上げて不安そうにしている。


 風が冷たく、圧迫感がある。


 息が苦しい。


 何かが、間違っている。


 レオンたちは、遺跡が見える丘に到達した。


 そして、目の前の光景に息を呑んだ。


「これは...!」


 遺跡の上空に、巨大な影のような存在が浮かんでいた。


 その姿は曖昧で、実体があるのかないのか判然としない。


 しかし、その影の中から、巨大な翼のようなシルエットが時折浮かび上がる。


 翼は漆黒で、禍々しい波動を放っている。


 影は触手のように伸び、遺跡周辺の建物を破壊している。


 建物が崩れ、瓦礫が舞い上がる。


 人々の悲鳴が聞こえる。


 これが...『絶望の翼』...!予言者の警告が現実になった。あんなに巨大で、禍々しい存在を、僕たちは本当に封じることができるのか...?いや、できなければならない。あれを放置すれば、王都全体が、いや、王国全体が危機に陥る...!でも、どうすれば...?僕の研究は、本当にあの巨大な闇に対抗できるのか...?


 レオンの体が震えた。


 フィルミナも、影を見上げて息を呑んでいた。


 あれが、古代の人々が封じた存在...。あんなに巨大で、禍々しい。私の炎で、本当に対抗できるのか...?リーダーとして、みんなを導く責任がある。でも、私では...私では力不足かもしれない。それでも、炎のフィルミナとして、私は戦わなければならない。レオン様と、みんなを守るために...!


 マリーナも、影を見上げて体を震わせていた。


 あんなに大きな...怖い...でも、レオンとフィルミナがいる。私も、水のマリーナとして、全力で戦わなきゃ。みんなの笑顔を守るために。たとえ怖くても、私は逃げない。一緒なら、きっと何とかなる...!そう信じなきゃ...!


「レオン様...」


 フィルミナが、静かに言った。


「私たち、戦います」


「うん、一緒に戦おう!」


 マリーナも、明るく言った。


 レオンは、二人を見て頷いた。


「ありがとう。じゃあ、行こう」


---


 三人が王都の街に戻ると、人々が慌てて避難していた。


 しかし、その動きは鈍かった。


 まるで、力が抜けているかのように。


 レオンは、一人の老人に声をかけた。


「大丈夫ですか?避難してください」


 しかし、老人は虚ろな目でレオンを見るだけだった。


「...何もかも...終わりだ...あんな巨大な闇を前に...どうすることもできない...」


 老人の言葉に、レオンは衝撃を受けた。


 他の人々も、同じように絶望的な表情をしている。


 子供が母親にしがみつき、泣いている。


「ママ...怖いよ...」


「大丈夫よ...きっと、大丈夫...」


 母親の声も、震えている。


 レオンは、人々の様子に違和感を覚えた。


 これは...単なる恐怖じゃない。何かが、人々の心を直接侵食している...?


 その時、レオンは突然めまいを覚えた。


 胸の奥から、何か冷たいものが湧き上がってくる。


 まるで、希望が消えていくような...。


 ...何だ、この感覚...?胸の奥から、何か冷たいものが湧き上がってくる...まるで、希望が消えていくような...僕の研究は、本当に意味があるのか...?こんな巨大な闇を前に、僕なんかに何ができる...?フィルミナやマリーナを巻き込んで、無駄な戦いをさせているだけなのでは...?


 レオンは、頭を振った。


 違う、これは僕の本当の気持ちじゃない...!


 フィルミナも、顔を歪めている。


 ...リーダーとして、みんなを導けるのか...?私は、本当にその資格があるのか...?フィルミナという名に恥じない存在なのか...?いや、きっと私では...私では力不足で...みんなを危険に晒してしまう。炎は、時に制御を失う。私が、みんなを傷つけてしまうかもしれない...。


 マリーナも、涙を浮かべている。


 ...私なんか、役に立っているのかな...?レオンやフィルミナは強くて立派だけど...私は...水の力しかない...みんなの足を引っ張っているだけじゃないかな...?ここにいる意味、あるのかな...?一人で、どこかに消えた方が、みんなのためなのかな...?


 レオンは、深呼吸をした。


 そして、気づいた。


 これは...心を蝕む闇...!物理的な破壊だけじゃない、精神に直接働きかけている...!僕たちも、影響を受けている。この絶望感は、『絶望の翼』が放つ波動のせいだ...!人々だけじゃない、僕たちも、この闇の影響を受けている...!


「フィルミナ、マリーナ!」


 レオンが、二人を呼んだ。


「これは、闇の心理攻撃だ!僕たちも影響を受けている!」


 フィルミナとマリーナは、レオンの言葉にハッとした。


「そう...なんですね...」


 フィルミナが、震える声で言った。


「私も...影響を受けています...」


「私も...」


 マリーナも、涙を拭った。


 レオンは、二人の肩に手を置いた。


「大丈夫だ。僕たちには、絆がある。闇に負けない」


---


 レオンは、フィルミナとマリーナを見つめた。


「君たちは、炎と水。対極のペアだ」


 フィルミナが、頷いた。


「ええ、古代の記録では、炎のイグニスと水のアクアが協力していました」


 マリーナも、明るさを取り戻して言った。


「私たち、対極だけど、一緒にいると何だか力が湧いてくるの!」


 レオンは、二人の言葉に励まされた。


 炎と水は、互いを抑制し合いながら、同時に高め合う。フィルミナの強い炎とマリーナの優しい水。二人が調和すれば、古代の六体と同じように、封印を強化できるかもしれない。対極の調和...それが鍵なんだ。僕の研究が、今、試される時だ...!


「フィルミナ、マリーナ」


 レオンが、二人に語りかけた。


「炎は攻撃的で、一点を焼き尽くす力がある。水は防御的で、全体を包み込む力がある。だからこそ、二人が協力すれば完璧なバランスになる」


 フィルミナが、マリーナを見た。


「マリーナ、私たちが先陣を切りましょう。炎と水のペアとして、古代のイグニスとアクアのように。私の炎があなたの水を温め、あなたの水が私の炎を制御する。この調和で、『絶望の翼』に立ち向かいます」


 マリーナが、フィルミナの手を取った。


「うん、フィルミナ!私、フィルミナと一緒なら怖くない!水は炎を消すこともできるけど、一緒に戦えば、もっと強くなれる!二人で力を合わせて、レオンを守ろう!そして、みんなも!」


 二人の決意に、レオンは深く頷いた。


 シグレが、騎士団と共に駆けつけてきた。


「レオン殿、人々の避難誘導は騎士団に任せてください。君たちは、封印の間へ」


「わかりました。お願いします、シグレ」


 レオンは、フィルミナとマリーナと共に、遺跡へ向かって走り出した。


---


 遺跡への道は、異変の影響でさらに深刻になっていた。


 フィルミナが、周囲を見回して言った。


「大気が...熱を失っています。まるで、炎の力が完全に消えてしまったかのよう」


 マリーナも、手を前に出して言った。


「水の流れも...完全に止まってる。水の精霊たちの気配も、全く感じられません」


 レオンは、二人の言葉に深く考えた。


 炎の力と水の力が、両方とも弱まっている...これは、封印に対応する力が失われているせいだ。フィルミナとマリーナの属性が、最も影響を受けている可能性がある。対極のペアの連動...それが、今、逆に働いている。二人とも、無理はしないで...でも、二人の力が必要なんだ...。


「フィルミナ、マリーナ」


 レオンが、二人を見た。


「無理はしないで。でも、君たちの力が必要だ」


「大丈夫です」


 フィルミナが、力強く言った。


「炎は消えていません。私の中で、まだ燃えています」


「水も、まだ流れてるよ!」


 マリーナも、明るく言った。


「私の心の中で、水は流れ続けてる!」


 遺跡の入り口に到着した。


 入り口からは、禍々しい波動が溢れ出ていた。


「ここから、封印の間へ...」


 レオンが、入り口を見つめた。


 フィルミナが、レオンの隣に立った。


「レオン様、覚悟はできています」


 マリーナも、レオンのもう一方の隣に立った。


「私も!」


 レオンは、二人を見て深く頷いた。


 ありがとう、二人とも。これから、僕たちは『絶望の翼』と向き合う。でも、君たちがいてくれるから、戦える。炎と水のペア、フィルミナとマリーナ。二人の調和が、僕たちの希望だ。古代の人々が信じた未来を、僕たちが実現する...!


 三人は、封印の間へと進んだ。


---


 封印の間へ続く通路を進みながら、レオンは不穏な空気を感じていた。


 壁から、微かな唸り声が聞こえる。


 闇が、確実に近づいている。


 その時、フィルミナとマリーナが、少し後ろに下がった。


 二人だけになる瞬間があった。


「フィルミナ...」


 マリーナが、小さな声で言った。


「怖い...?」


 フィルミナは、少しの間黙っていた。


 そして、静かに答えた。


「...正直に言うと、とても怖い」


「私も...」


 マリーナが、フィルミナの袖を握った。


 フィルミナは、マリーナを見て、本音を語った。


「リーダーとして、強くあらねばならないと思っています。でも、内心は不安でいっぱいです。本当に、あの巨大な闇に対抗できるのか...私の炎で、何ができるのか...自信がありません。でも...」


「でも...?」


 マリーナが、フィルミナの顔を見上げた。


「あなたがいてくれる。それだけで、少し楽になる」


 マリーナの目に、涙が浮かんだ。


「私も...!フィルミナがいてくれるから、頑張れる。一人だったら、きっと逃げ出しちゃうかもしれない。でも、フィルミナと一緒なら...そして、レオンがいるから...私、全力で戦う!絶対に、みんなを守る!」


「マリーナ、ありがとう」


 フィルミナが、マリーナの頭を優しく撫でた。


「私も、あなたがいてくれて本当に良かった」


「ううん、こちらこそ!」


 二人は、手を取り合った。


 その瞬間、二人の手に、ほんのりと光が宿った。


 白い炎と、青い水の光。


 二つの光が、互いを包み込むように輝く。


 レオンは、遠くから二人を見ていた。


 二人が...調和し始めている...。炎と水が、互いを高め合っている。これが、対極の調和...!古代の六体と同じだ。二人なら、きっと闇を払える...!


 レオンは、二人に声をかけた。


「フィルミナ、マリーナ、行こう」


 二人は、手を離して頷いた。


 そして、三人は封印の間へと進んだ。


 不穏な空気が、一層強まる。


 しかし、レオンの心には、希望があった。


 フィルミナとマリーナの絆が、闇を払う力になる。


 それを信じて、レオンは前に進んだ。


---


 封印の間の扉が、目の前に見えてきた。


 扉からは、強大な魔力の波動が溢れ出ている。


 レオンは、深呼吸をした。


 これから、僕たちは『絶望の翼』と対峙する。


 でも、フィルミナとマリーナがいる。


 二人の調和が、僕たちの希望だ。


 レオンは、扉に手をかけた。


 戦いは、これから始まる。

第99話、お読みいただきありがとうございました。


対極の調和の研究を本格化させようとした矢先、遂に「絶望の翼」が姿を現しました。王都上空を覆う巨大な影、崩れ落ちる建物、そして人々の心を直接蝕む禍々しい波動。レオン、フィルミナ、マリーナの三人も闇の心理攻撃を受け、それぞれの内面の不安と向き合います。レオンは自身の研究への疑念、フィルミナはリーダーとしての資格への不安、マリーナは自分の存在意義への疑問—それぞれが抱える恐怖と絶望。しかし、レオンは気づきます。これは闇による心理攻撃だと。そして、炎と水、対極のペアであるフィルミナとマリーナが互いを支え合い、手を取り合った瞬間、二人の力が調和し始めます。白い炎と青い水の光が融合し、古代のイグニスとアクアのように、対極の調和が生まれました。遺跡へ向かう三人。封印の間で、遂に「絶望の翼」との対峙が始まります。フィルミナとマリーナの調和が、闇を払う希望となるのか。次回、封印の間での決戦が始まります。


次回もお楽しみに。


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