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転生王子はスライムを育てたい ~最弱モンスターが世界を変える科学的飼育法~  作者: 宵町あかり


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第92話 経済戦略(後編)

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

転生王子はスライムを育てたい第92話をお届けします。


宗教、軍事、経済。三者三様の解釈が衝突する中、レオンは自分の道を貫く決意を固めます。そして仲間たちとの絆を改めて確認する温かな時間。しかし、突然訪れる不穏な気配。七人が同時に感じる古代の闇の兆候とは。第92話、激動の後編です。


お楽しみください!

 その日の午後、王宮の会議室には、三者が集められていた。


 メルキオール、ガルヴァン、チェン・ロン。宗教、軍事、経済。それぞれの視点から、レオンの研究を注視してきた三者が、初めて一堂に会していた。


 そして、その中央には、レオンとシグレが座っている。レオンの表情には、深い疲労と諦めが浮かんでいた。もう、何を言っても無駄だ。好きに解釈してもらうしかない。そんな心境が、レオンの姿から読み取れた。


「殿下、改めまして」


 メルキオールが、荘厳な声で口を開いた。


「あの光の奇跡は、神の御業です。各地の教会で、既に宣伝が始まっております」


「いえ、新兵器としての活用が先決です」


 ガルヴァンが、武骨な声で反論する。


「国防のため、この力を軍事的に...」


「お二方、商業化こそが最優先です」


 チェン・ロンが、二人の言葉を遮った。


「世界経済を変革し、全ての人々を豊かにする。それが、殿下の研究の真の価値です」


 三者の主張が、会議室に響き渡る。それぞれが、自分の解釈を譲らない。宗教、軍事、経済。全く異なる視点が、激しくぶつかり合っていた。


 レオンは、その光景を静かに見つめていた。もう、驚きもしない。呆れもしない。ただ、深い諦めが心を満たしていた。


「皆さん」


 レオンが、静かに口を開いた。


 三者の議論が、一瞬止まる。全員が、レオンを見つめた。


「それぞれの視点で解釈されるのは、構いません」


 レオンの言葉が、会議室に静かに響いた。


「宗教的にも、軍事的にも、経済的にも...それぞれの立場から見れば、そう見えるのでしょう。僕の説明が通じないのは、もう分かりました」


 レオンの声には、深い諦めが込められている。


「ただ、僕は...研究を続けます。スライムの可能性を証明する。覚醒個体たちと共に、新しい発見を追求する。それが、僕の道ですから」


 レオンの言葉が、会議室に静かに響き渡った。


 シグレが、レオンの隣で静かに頷く。


「その通りだ、レオン」


 シグレが、穏やかな声で言った。


「研究こそが、君の本分だ。周囲がどう解釈しようと、君は自分の道を歩めばいい」


「シグレ...」


「私も、科学者として君を支える。研究を続けよう」


 シグレの言葉が、レオンの心を温かく包み込む。そうだ。研究を続ければいい。誤解されても、批判されても、自分の道を歩めばいい。その決意が、レオンの心に静かに芽生えていった。


「殿下...!」


 メルキオールが、感動したように声を上げた。


「その謙虚な姿勢こそ、神の選ばれし者の証!」


「さらなる開発を期待しております!」


 ガルヴァンが、力強く宣言した。


「商業化に前向きということですね! 投資の準備を進めます!」


 チェン・ロンが、満面の笑みを浮かべる。


 レオンは、もう何も言わなかった。説明は無駄だ。何を言っても、別の意味に解釈される。この溝は、もう埋まらない。それを、レオンは完全に理解していた。もう、好きに解釈してもらうしかない。でも、研究は続ける。それだけは、絶対に譲れない。レオンの心の中で、そんな決意が固まっていった。


 会議は、やがて終わった。三者それぞれの解釈を抱えたまま、彼らは会議室を後にした。レオンとシグレも、立ち上がる。


「レオン、研究室に戻ろう」


「はい...」


 二人は、会議室を出た。廊下を歩きながら、レオンは深く溜息をついた。


「疲れたな...」


「無理もない。これだけの誤解を一度に受けたのだから」


 シグレが、優しく微笑む。


「でも、君の決意は素晴らしかった。研究を続ける。それこそが、科学者の本分だ」


「ありがとうございます、シグレ」


 二人は、研究室へと向かった。新しい騒動の後、静かな時間が訪れようとしていた——。


---


 研究室に戻ると、全員が待っていた。


 フィルミナ、マリーナ、テラ、クリスタ、エオリア、ルミナ。六人のスライムたちが、心配そうな表情でレオンを見つめている。そして、シグレも静かに寄り添っていた。


「レオン様、お疲れ様でした」


 フィルミナが、優しく声をかける。


「大変だったね、レオン!」


 マリーナが、明るく飛び跳ねる。


「...お疲れ様です」


 テラが、短く労ってくれる。


「ご苦労様でしたわね」


 クリスタが、優雅に微笑む。


「お疲れ様ですわ、レオン」


 エオリアが、風のように軽やかに言葉をかける。


「レオン様、無事で良かったですわ」


 ルミナが、安堵の表情を浮かべる。


 レオンは、みんなの顔を見渡した。心配してくれている。支えてくれている。この絆が、どれだけ心強いか。レオンの心が、温かい感謝で満たされていく。


「みんな...ありがとう」


 レオンが、小さく微笑んだ。


 そして、レオンは一人ひとりに向き合った。これまでの感謝を、言葉にしたかった。この絆を、改めて確認したかった。疲労と混乱の中で、レオンが気づいたこと。それは、この仲間たちがいるからこそ、自分は研究を続けられるということだった。


「フィルミナ」


 レオンが、フィルミナに向き直った。


「いつも冷静に支えてくれてありがとう。君のリーダーシップがあったから、僕は研究を続けられた。今日も、助けに来てくれて...本当に感謝してる。これからも、一緒に歩んでくれるかな?」


 フィルミナの瞳が、潤んだ。


「レオン様...そのお言葉、本当に嬉しいです」


 フィルミナの声が、微かに震える。


「私は、レオン様と出会えて、本当に幸せです。最初は、ただのスライムだった私を、レオン様は対等な仲間として扱ってくださった。研究パートナーとして、信頼してくださった。それが、どれだけ嬉しかったか...言葉では言い表せません」


 フィルミナの目に、涙が浮かんでいる。でも、その顔は笑顔だった。


「これからも、ずっと、どんな時も、レオン様を支え続けます。それが私の、生きる意味ですから」


 フィルミナの言葉が、研究室に静かに響いた。レオンの心が、温かい感謝で満たされる。


「マリーナ」


 レオンが、次にマリーナに向き直った。


「君の明るさにどれだけ救われたか。いつも笑顔で励ましてくれて...君がいなかったら、僕はもっと早く心が折れていたかもしれない。その元気さが、本当に心強かったよ」


 マリーナが、満面の笑みを浮かべた。


「レオン、私もだよ!」


 マリーナが、飛び跳ねながら答える。


「レオンと一緒にいると、毎日が楽しいの!研究も、冒険も、全部楽しい!辛いことがあっても、レオンが笑ってくれると、私も嬉しくなる。だから、これからも一緒にいたいな!ずっと、ずっと一緒だよ!どんな時も、私はレオンの味方だから!」


 マリーナの言葉が、研究室を明るく照らす。その無邪気な笑顔が、レオンの心を温かく包み込んだ。


「テラ」


 レオンが、テラに向き直った。


「君は静かに支えてくれていたね。言葉は少ないけど、いつもそばにいてくれた。その存在が、どれだけ心強かったか...大地のように、しっかりと僕を支えてくれてありがとう」


 テラが、穏やかに微笑んだ。


「レオン...私は、言葉は得意ではありません」


 テラの声が、静かに響く。


「でも、心は通じていると思います。レオンの傍にいられること、それが私の喜びです。大地は、静かに全てを支えます。私も、そのように、レオンを支え続けます。これからも、静かに、でもしっかりと、ずっとそばにいます」


 テラの言葉が、大地のような安定感をもってレオンを包み込む。その穏やかさが、レオンの心を落ち着かせてくれた。


「クリスタ」


 レオンが、クリスタに向き直った。


「君の冷静な助言にどれだけ助けられたか。300年の経験から来る知恵は、僕にとって宝物だった。いつも的確なアドバイスをしてくれて、本当に感謝してる」


 クリスタが、優雅に微笑んだ。


「レオン様、私こそ感謝しております」


 クリスタの声が、知性と温かさに満ちている。


「300年生きて、初めて『本当の絆』を知りました。封印の中で孤独に過ごした日々...それが、レオン様と出会って全て変わりました。研究者としての孤独を理解してくださる方と出会えたこと、それは私にとって奇跡です。これからも、共に歩みましょう。私の全ての知識と経験を、レオン様のために」


 クリスタの言葉が、優雅に研究室に響く。その知性と温かさが、レオンの心を満たしていった。


「エオリア」


 レオンが、エオリアに向き直った。


「君の軽やかさに何度救われたことか。重い空気を一瞬で変えてくれる、その力は本当にすごい。風のように自由で、でもいつもそばにいてくれてありがとう」


 エオリアが、くるくると回りながら笑った。


「レオン、私も楽しかったよ!」


 エオリアの声が、風のように軽やかに響く。


「風のように自由に、でもいつもレオンのそばにいたいって思ってた。500年の追放を経て、やっと見つけた居場所。それが、レオンと仲間たちとの絆だった。これからも、一緒に風に乗って、どこまでも行こうね!辛い時も、楽しい時も、ずっと一緒!私は、レオンの風になるから!」


 エオリアの言葉が、優雅に舞い上がる。その自由さと温かさが、レオンの心を軽やかにしてくれた。


「ルミナ」


 レオンが、最後にルミナに向き直った。


「君と一緒に光属性研究ができて、本当に楽しかった。二人で新しい発見をした時の喜びは、忘れられない。研究パートナーとして、最高の仲間だよ」


 ルミナの顔が、輝くような笑顔に変わった。


「レオン様、私もです!」


 ルミナの声が、喜びに満ちている。


「光の研究を一緒にできて、本当に幸せでした。500年間、光の中で孤独に過ごした私にとって、レオン様との研究は、初めての『共有』でした。発見の喜びを分かち合えること、それがどれだけ嬉しかったか。レオン様の情熱に触れて、私も研究者としての喜びを知りました。これからも、光を極めましょう。そして、その先の未来へ...!」


 ルミナの言葉が、光のように輝いて研究室を満たす。その情熱と喜びが、レオンの心を高揚させてくれた。


「みんな...本当にありがとう」


 レオンが、全員を見渡した。


 そして、七人が円を作って手を取り合った。レオン、フィルミナ、マリーナ、テラ、クリスタ、エオリア、ルミナ。七人の手が、温かく繋がっている。


「レオン様!」


「レオン!」


 全員の声が、一つになる。


 温かい沈黙が、研究室を包み込んだ。互いを信じ合う瞬間。この絆があれば、どんな困難も乗り越えられる。レオンの心が、そう確信していた。フィルミナも、同じことを感じていた。私たちは、ずっと一緒。そう、心の中で誓っていた。


 七人の絆が、目に見えるように輝いていた。


 しかし——


 その時、突然空気が変わった。


 レオンの背筋に、冷たいものが走った。


「...嫌な予感がする...」


 レオンが、小さく呟いた。


 ルミナが、窓の外を見つめた。


「光が...揺らいでいるような...」


 ルミナの声が、不安に満ちている。


「まるで、闇に押されているような...いつもと違う、この感じ...」


「私も感じます...」


 クリスタが、静かに頷いた。


「300年の経験で初めて感じる、この禍々しい気配...まるで、古代の闇が蘇ろうとしているような...」


「風が冷たく...そして、重い...」


 エオリアが、不安そうに呟く。


「いつもと違う...自然の調和が、乱れているような...」


「大地が震えています...」


 テラが、床に手を置いた。


「何か巨大なものが、目覚めようとしているような...大地の記憶が、警告を発しているような...」


「水の流れが乱れている...」


 マリーナが、心配そうに窓の外を見た。


「自然の調和が、崩れかけている...水が、恐怖しているような...」


「これは...ただ事ではありませんわ」


 フィルミナが、真剣な表情で言った。


 レオンの心に、深い不安が広がっていく。みんなが同時に感じている...これは、もう偶然じゃない。何か大きなことが起きようとしている。僕の研究が原因なのか...?いや、でも...この気配は、もっと根源的な何か...古代の闇?それとも、別の何か?分からない。でも、確実に何かが近づいている。この不安。この恐怖。みんなも同じことを感じている。だからこそ、僕たちは一緒に立ち向かわなければならない。そう、レオンの心が決意していた。


「レオン、準備をしておこう」


 シグレが、穏やかな声で言った。


「何が来ても対応できるように。私も、科学者として君たちを支える」


「はい...」


 レオンが、深く頷いた。


「みんな、一緒に乗り越えよう」


「はい!」


 全員の声が、一つになった。


 窓の外では、夕暮れの光が王都を照らしていた。しかし、その光は、どこか冷たく感じられた。闇の兆候が、静かに広がり始めている。各国の過剰反応は、ただの始まりに過ぎなかった。本当の試練は、これから訪れようとしている——。


 レオンと仲間たちは、その予感を胸に、静かに決意を固めていた。どんな困難が来ようとも、この絆があれば乗り越えられる。そう、信じて。

第92話、お読みいただきありがとうございました。


三者の解釈が衝突する中、レオンは「好きに解釈してください」と諦めつつも、研究を続ける決意を固めます。そして仲間たち一人ひとりと改めて絆を確認する温かなシーン。フィルミナからルミナまで、それぞれが語る感謝と誓い。しかし最後に訪れる不穏な気配。全員が同時に感じる古代の闇の兆候が、新たな試練の始まりを予感させます。


次回もお楽しみに。


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