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転生王子はスライムを育てたい ~最弱モンスターが世界を変える科学的飼育法~  作者: 宵町あかり


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第12話 新たな始まり

いつもお読みいただき、ありがとうございます。

転生王子はスライムを育てたい第12話をお届けします。


ついに第1章の最終話です!公開実験の成功により、レオンを取り巻く状況が大きく変化していきます。帝国内外からの注目、支持者と反対派の対立、そして国際的な緊張...。


そして何より、レオンとフィルミナの関係にも大きな変化が!


お楽しみください!

公開実験から一週間が経った。レオン・アルケイオス第三王子の研究室は、今や帝国で最も注目される場所となっていた。


実験室の扉の前には、毎朝数十通の手紙が山積みになっている。魔法学院からの共同研究提案、商人組合からの技術応用相談、遠国からの視察申し込み。そして、予想もしていなかった種類の手紙も混じっていた。


「レオン様、今朝も恋文が三通ほど...」


リヴィエルが困った表情で手紙を分類している。公開実験でのレオンの堂々とした発表ぶりと、フィルミナへの優しい眼差しが、帝都の令嬢たちの心を捉えてしまったのだ。


「恋文?」レオンが首をかしげる。「なぜ僕に?」


(前世では研究一筋で恋愛経験皆無だったし、この世界でもそのつもりなのに)


「第三王子として、そして革新的な研究者として、レオン様への注目が高まっています」


リヴィエルの声に、わずかな複雑さが混じった。主人が注目を集めることは喜ばしいが、同時に不安でもある。


フィルミナが実験台から顔を上げた。


「レオン様、『恋文』とは何ですか?」


「ああ、えーっと...」レオンが困惑した。純真な彼女に恋愛感情を説明するのは、なぜか気恥ずかしい。「好意を示す手紙のことだよ」


「好意...」フィルミナが小首をかしげる。「私のレオン様への気持ちと同じですか?」


リヴィエルが息を呑んだ。


(フィルミナちゃん、それは...)


しかし、レオンは科学的に答えてしまった。


「君の場合は、創造者への親愛だと思う。人工的に生まれた生命体が、最初に接触した相手に愛着を抱くのは自然な反応だ」


フィルミナの表情が微妙に曇った。


「親愛...ですか」


(恋ではなく親愛。研究対象としての感情分析...)


彼女の中で、言葉にできない複雑な感情が渦巻いた。しかし、レオンはその変化に気づかず、実験記録に向かった。


---


「第三王子殿下の実験は、まさに新時代の象徴ですな」


豪華な応接室で、数名の若手貴族が熱心に議論していた。公開実験以来、彼らは頻繁に集まるようになっている。


「あの人工生命体...フィルミナでしたか。あれほど美しく、知性的な存在を生み出すとは」


「技術的な応用も無限大でしょう。医療、建設、軍事...」


「軍事はどうでしょうか。第三王子殿下は平和的な研究を志向されているようですが」


「それこそが素晴らしいのです。純粋な探究心から生まれた技術こそ、真の革新をもたらすのです」


彼らの目は希望に輝いていた。古い慣習にとらわれない新しい帝国。科学と魔法が融合した先進的な社会。レオンの研究は、そんな未来への扉のように思われた。


一方、別の屋敷では、対照的な会話が交わされていた。


「危険すぎる」


ヴァレンタス宰相の重い声が、石造りの部屋に響いた。


「人工生命体の創造など、神への冒涜以外の何物でもない」


「宰相閣下のお考えはごもっともです」


老齢の公爵が頷いた。


「しかし、陛下が研究継続をお許しになった以上...」


「陛下は甘すぎる」ヴァレンタスが立ち上がった。「第三王子の純粋さに騙されているのだ」


彼の深い緑の瞳には、冷徹な計算が宿っていた。


「あの研究は帝国の根幹を揺るがす。伝統的な価値観、宗教的権威、既存の政治秩序...すべてが危険にさらされている」


「では、どうなされますか?」


「直接的な妨害は難しい。陛下の庇護があるからな」


ヴァレンタスが窓際に歩いていく。夕日が西の空を染めていた。


「だが、間接的な手段はある。他国の反応を利用すれば...」


---


その頃、レオンは実験室で新しい発見に夢中になっていた。


「信じられない...スライムの細胞分裂速度が、魔素濃度に正比例している」


顕微鏡のような装置を覗き込みながら、興奮した声を上げる。


「これまでの生物学では説明できない現象だ。魔素が生命エネルギーとして直接作用している」


フィルミナが好奇心いっぱいの表情で近づいてきた。


「私の身体でも、同じことが起きているのですか?」


「そうだと思う。君の形態変化能力も、魔素による細胞制御の結果だろう」


レオンは純粋な研究的興味で説明した。しかし、フィルミナには別の意味で聞こえていた。


(レオン様は、私を『現象』として見ている。一人の存在としてではなく...)


「フィルミナ、君の協力でまた新しいことがわかった。ありがとう」


レオンの心からの感謝の言葉に、フィルミナの胸は複雑に痛んだ。嬉しいのに、同時に寂しくもある。


(私は、レオン様にとって何なのだろう)


---


夜が更けた頃、王宮の一室で重要な会議が開かれていた。


「カドリア王国と東方連合から、正式な技術調査団派遣の申し入れがありました」


外務大臣が報告書を読み上げる。


「表向きは学術交流ですが...」


「スパイですな」ユリオス第一王子が冷静に断言した。「弟の技術を盗み取ろうとしている」


皇帝陛下が深刻な表情で聞いていた。


「レオンの研究が、これほど国際的な注目を集めるとは思わなかった」


「陛下」ヴァレンタス宰相が口を開いた。「この機会に、第三王子殿下の研究を一時中断されてはいかがでしょうか」


「中断?」


「他国の関心が高まりすぎています。このまで続ければ、帝国の技術的優位性が失われるだけでなく、国際的な緊張を招く恐れがあります」


ユリオスが宰相を見た。表面的には国家安全保障への懸念だが、その裏に別の意図があることを感じ取っていた。


「父上」ユリオスが立ち上がった。「レオンの研究は確かに注目を集めています。しかし、それは帝国の技術力の証明でもあります」


「ほう?」


「適切に管理すれば、外交的な優位に転換できるのではないでしょうか」


ヴァレンタスの表情が微かに変わった。第一王子が弟を庇うような発言をするとは予想していなかった。


皇帝陛下がしばし考え込んだ後、決断を下した。


「レオンの研究は継続する。ただし、外部への情報開示は慎重に行うこと」


「陛下、それは危険です」ヴァレンタスが食い下がった。


「危険を恐れていては、進歩はない」皇帝の声に威厳が宿った。「レオンの純粋な探究心を、政治的思惑で曇らせるわけにはいかない」


---


翌朝、レオンは実験室で予想外の訪問者を迎えていた。


「おはようございます、レオン」


シグレ・マカレアが、数名の研究者を連れて現れたのだ。


「シグレ、おはようございます。お仲間の方々ですか?」


「そうです。君の研究に興味を持った、帝国内の若手研究者たちです」


紹介された研究者たちは、皆目を輝かせてレオンを見ていた。


「第三王子殿下の理論をお聞きしたいのです」


「特に、魔素と生命の相関関係について」


「我々の研究分野でも応用できるかもしれません」


レオンは純粋に嬉しかった。これまで一人で続けてきた研究に、理解者が現れたのだ。


「喜んでお話しします。でも、僕の理論はまだ仮説の段階で...」


「それでも構いません。新しい視点を学びたいのです」


こうして、レオンの研究室は即席の学術サロンとなった。魔素理論、生命操作技術、応用可能性について、熱心な議論が交わされる。


フィルミナは少し離れたところで、その光景を見守っていた。


(レオン様が嬉しそう。たくさんの人に理解してもらえて)


しかし、同時に不安も感じていた。


(私は、もうレオン様にとって特別な存在ではないのかもしれない)


リヴィエルがフィルミナの隣に立った。


「フィルミナちゃん、寂しそうですね」


「リヴィエルさん...」


「坊ちゃまは、誰に対しても優しいです。でも、それは研究者としての態度。心の奥底では、フィルミナちゃんが一番大切だと思います」


「本当ですか?」


「ええ。坊ちゃまがあなたを守ると言った時の表情、私には忘れられません」


フィルミナの頬がほんのり赤くなった。


---


午後になると、さらに予想外の展開が待っていた。


「レオン様、お客様です」


リヴィエルが緊張した面持ちで報告した。


「どちらの?」


「カドリア王国の使者の方々です」


レオンが首をかしげる間に、豪華な服装に身を包んだ一行が実験室に入ってきた。


「第三王子殿下にお目にかかれて光栄です」


使者の筆頭が深々と礼をした。


「私どもは、殿下の研究について学ばせていただきたく参りました」


(学術交流?それは歓迎すべきことだ)


レオンは素直に喜んだ。研究成果が国境を越えて認められることほど、研究者にとって嬉しいことはない。


「どうぞ、お聞きになりたいことがあれば何でも」


使者たちの目が輝いた。しかし、その輝きには純粋な学術的興味以外の何かが混じっていた。


「まず、スライムの軍事的応用についてお聞かせ願えますでしょうか」


「軍事的応用?」レオンが困惑した。「僕は平和的な研究しか考えていませんが...」


「もちろんです。しかし、技術的には可能ということでしょうか?」


「技術的には...」レオンが考え込んだ。「理論上は様々な応用が可能でしょうね。でも、僕の目的は生命現象の解明で...」


使者たちは食い入るようにレオンの言葉を聞いていた。彼らにとって重要なのは、技術の詳細と応用可能性だった。


フィルミナが不安そうにレオンを見ていた。この人たちの視線が、何か冷たいものを含んでいることを感じ取っていたのだ。


---


夕方、使者たちが去った後、レオンは一人で考え込んでいた。


(なぜ軍事的応用について聞かれたんだろう。研究は平和のためのものなのに)


そこにユリオスが現れた。


「レオン、カドリアの使者と会ったそうだな」


「はい。研究について興味深い質問をいただきました」


「質問の内容は?」


「主に軍事的応用について...でも、僕の研究は平和的なものなので、あまりお答えできませんでした」


ユリオスの表情が厳しくなった。


「レオン、お前は分かっていない」


「何がでしょうか?」


「お前の研究は、もはや学術の範囲を超えている。国家戦略の一部になっているのだ」


レオンには理解できなかった。スライムの培養研究が、なぜ国家戦略と関係するのか。


「兄上、僕はただ...」


「ただの研究だと思っているのだろう?」ユリオスが立ち上がった。「しかし、現実は違う。お前の技術を狙って、複数の国が動き始めている」


「狙うって...」


「技術を盗取し、軍事利用しようとしているのだ」


レオンの青緑の瞳に、初めて現実の重さが映った。


「そんな...僕は生命の神秘を解明したかっただけなのに」


「純粋な動機と、その結果は別だ」ユリオスの声に憂いが滲んだ。「お前の善意が、戦争の火種になりかねない」


---


その夜、フィルミナは自分の部屋で窓の外を見つめていた。星空が美しく広がっているが、心は晴れない。


(レオン様が悩んでいる。私のせいで...)


彼女は自分の存在が、レオンにとって重荷になっているのではないかと感じていた。純粋な研究だったはずが、政治的な問題に発展してしまった。


(私がいなければ、レオン様は平穏に研究を続けられるのかもしれない)


そんな時、扉がノックされた。


「フィルミナ、入っていいかい?」


レオンの声だった。


「はい、どうぞ」


レオンが部屋に入ってくると、フィルミナの表情が暗いことに気づいた。


「どうしたんだい?元気がないようだけど」


「レオン様...私のせいで、レオン様が困っていませんか?」


「君のせい?」レオンが首をかしげる。「何を言っているんだい」


「私の存在が、政治的な問題を引き起こしているのでは...」


「そんなことはない」レオンが彼女の隣に座った。「君は何も悪くない。問題があるとすれば、僕の考えが甘かったことだ」


フィルミナが不安そうに見上げる。


「でも...」


「フィルミナ」レオンが真剣な表情になった。「君は僕にとって、かけがえのない存在だ。研究対象としてではなく、一人の大切な存在として」


フィルミナの瞳に涙が浮かんだ。


「レオン様...」


「他の人がどう言おうと、僕は君を守る。君と一緒に、新しい未来を作っていきたいんだ」


その時、フィルミナは初めて確信した。レオンの言葉は、研究者としてのものではない。一人の人間としての、真心からの言葉だった。


「私も、レオン様と一緒にいたいです。どんなことがあっても」


レオンが微笑んだ。その笑顔には、これまでとは違う温かさがあった。


---


翌週、帝都では大きな変化が起きていた。


公開実験の成功を受けて、若手の魔法研究者たちがレオンのもとに集まり始めたのだ。彼らは「新世代研究会」と名乗り、従来の魔法理論にとらわれない革新的な研究を目指していた。


「第三王子の方法論は画期的です」


「魔素を科学的に分析する視点が素晴らしい」


「私たちも、生命と魔法の関係を研究したいのです」


レオンの研究室は、今や帝国最先端の研究拠点となっていた。様々な分野の研究者が訪れ、活発な議論が交わされている。


一方で、反発する勢力も動きを見せていた。


「第三王子の研究は、神聖な魔法の冒涜だ」


「人工生命体など、自然の摂理に反している」


「このままでは、帝国の伝統が失われてしまう」


宮廷内の保守派貴族たちは、密かに対策を練り始めていた。しかし、皇帝陛下の支持がある限り、直接的な妨害は困難だった。


そんな中、ヴァレンタス宰相は別の手を考えていた。


「国際的な圧力を利用すれば...」


彼の計画は、まだ誰にも明かされていない。しかし、その影響は帝国全体を揺るがすことになるだろう。


---


ある朝、レオンは新しい実験の準備をしていた。


「今日は、スライムの集団行動について観察してみよう」


複数の小さなスライムを水槽に入れ、それらの相互作用を記録する実験だった。前世の知識では、単細胞生物でも集団として知能的な行動を示すことがある。


「興味深いですね」


シグレが観察記録を取りながら感想を述べた。


「個体では単純な反応しか示さないのに、集団になると複雑なパターンを形成している」


「そうなんです。これは群体知能の現れかもしれません」


(前世で学んだスワーム・インテリジェンスの概念だ)


レオンの推論に、周囲の研究者たちが興奮した。


「群体知能?」


「複数の単純な個体が、集合することで高度な知能を発現する現象です」


「それは軍事的にも...」


「軍事的な応用は考えていません」レオンがきっぱりと答えた。「これは純粋に生物学的な現象の研究です」


最近、軍事応用について質問されることが増えていた。レオンは毎回同じように答えていたが、内心では複雑な気持ちだった。


(なぜ皆、軍事のことばかり考えるんだろう)


フィルミナが心配そうにレオンを見ていた。


「レオン様、無理をなさらず、お休みも必要ですよ」


「ありがとう、フィルミナ。君がいてくれるから頑張れる」


レオンの何気ない言葉に、フィルミナの頬が赤くなった。リヴィエルも、複雑な表情で見ていた。


(坊ちゃまの気持ちが、フィルミナちゃんに向いているのは明らか。でも、坊ちゃまはそれに気づいていない)


---


夕方、レオンは一人で研究室の整理をしていた。最近は来訪者が多く、実験器具の配置が乱れがちだった。


そこに、予想外の人物が現れた。


「レオン」


ユリオス第一王子だった。しかし、いつもの厳格な表情ではなく、どこか疲れたような雰囲気を漂わせている。


「兄上、どうされましたか?」


「お前に謝らなければならないことがある」


レオンが驚いた。ユリオスが謝るなど、これまでほとんどなかった。


「謝る?」


「お前の研究を危険だと言った。確かに危険な側面はある。しかし...」


ユリオスが窓際に立った。


「お前の純粋さ、探究心は本物だ。それを否定するのは間違いだった」


「兄上...」


「帝国は変わらなければならない。古い価値観にしがみついていては、真の発展はない」


ユリオスが振り返る。その深紅の瞳に、新しい決意の光が宿っていた。


「お前の研究を支援したい。兄として、そして帝国の未来を考える者として」


レオンは感動した。兄の理解を得られることは、何より嬉しかった。


「ありがとうございます、兄上」


「ただし」ユリオスの表情が厳しくなった。「危険も増している。ヴァレンタス宰相は、まだ諦めていない」


「宰相閣下が?」


「お前の研究を止めるため、様々な手を打っている。国際問題として扱い、外部からの圧力で研究中断に追い込もうとしているのだ」


レオンには、政治的な駆け引きは理解できなかった。しかし、自分の研究が狙われていることは理解した。


「僕はどうすれば...」


「研究を続けろ。ただし、慎重に。そして、信頼できる仲間を大切にしろ」


ユリオスがレオンの肩に手を置いた。


「お前は一人ではない。僕も、シグレも、そしてフィルミナも、お前を支えている」


---


その夜、レオンは自分の部屋で日記を書いていた。


『実験開始から三ヶ月。スライムの研究は、予想をはるかに超える展開を見せている。フィルミナという素晴らしい存在との出会い、多くの研究者との交流、そして兄上の理解。すべてが新しい始まりのように感じられる』


『しかし、同時に困難も増している。政治的な思惑、国際的な注目、様々な圧力。僕が望んでいたのは、ただ純粋な研究だった』


『でも、もう後戻りはできない。いや、後戻りしたくない。フィルミナと出会えたこと、多くの人に理解してもらえたこと、すべてが貴重な経験だ』


『明日から、新しい章が始まる。どんな困難が待っていても、僕は前に進む。フィルミナと一緒に、仲間と一緒に、新しい未来を作っていく』


レオンがペンを置いた時、窓の外で流れ星が光った。


それは、新たな時代の始まりを告げる光のようだった。


---


翌朝、帝都全体に激震が走った。


東方連合から、正式な抗議文が届いたのだ。「アルケイオス帝国が秘密裏に開発している生物兵器について、国際的な査察を要求する」という内容だった。


皇帝陛下は緊急会議を招集した。


「生物兵器だと?」皇帝の声に怒りが滲んだ。「レオンの研究を、そのように曲解するとは」


「陛下」ヴァレンタス宰相が口を開いた。「この機会に、第三王子殿下の研究を一時凍結されてはいかがでしょうか」


「凍結?」


「国際的な誤解を解くためです。査察を受け入れ、研究の平和的性質を証明した後で再開すれば...」


ユリオスが立ち上がった。


「父上、それは罠です」


「罠?」


「研究を中断すれば、他国に技術的優位を奪われます。そして、一度中断した研究を再開するのは、政治的に困難になるでしょう」


ヴァレンタスの表情が微かに変わった。


皇帝陛下がしばし考えた後、決断を下した。


「レオンの研究は継続する。ただし、国際的な透明性を確保するため、適切な情報公開を行う」


「陛下、それは危険です」ヴァレンタスが抗議した。


「危険を恐れていては、真の進歩はない」皇帝の声に威厳が宿った。「レオンの純粋な探究心を、政治的思惑で曇らせるわけにはいかない」


この決定により、レオンの研究は新たな段階に入ることになった。国際的な注目の中で、より大きな責任を背負いながら、研究を続けていくことになったのだ。


レオンはまだ知らない。自分の研究が、やがて帝国の命運を左右する大きな変革の始まりとなることを。


そして、フィルミナとの関係も、新しい局面を迎えようとしていることを。


第一章「最弱との出会い」は終わった。


しかし、真の物語は、今ここから始まるのだった。

第12話、いかがでしたでしょうか?


第1章「最弱との出会い」の締めくくりとなる今回は、レオンの研究が個人的なものから社会的・国際的な関心事へと発展していく様子を描きました。純粋な研究者としてのレオンと、複雑な政治の世界との対比が今後の展開の鍵となります。


そして、フィルミナの気持ちにも変化が!レオンの「かけがえのない存在」という言葉に、彼女の心境がどう変わったでしょうか。


第2章では、より大きな試練と新たな発見が待っています。ヴァレンタス宰相の策略、国際的な緊張、そして恋愛関係の進展も...?


感想やご意見、いつでもお待ちしております。

評価・ブックマークもとても励みになります!


第2章も引き続きお楽しみに!


Xアカウント: https://x.com/yoimachi_akari

note: https://note.com/yoimachi_akari

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