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短編「恋愛物、令嬢物、その他の短編」

なぜ私は追放ざまぁされたのか?

作者: ヒトミ

私は乙女ゲームのヒロインに転生した。


転生した当時すでに物語は中盤を迎えており、形勢はなぜだかライバルご令嬢の方に傾いていたのだ。


前世の記憶によると、攻略対象は王子、魔法使い、神官、従兄、ライバル令嬢の弟の五人で、どのルートに入っても、バッドエンドはただヒロインが自立して生きていく人生になるだけだったはずである。


ハッピーエンドだと、そりゃ王子妃や魔法使いの最愛、神殿の聖女、従兄の花嫁、公爵夫人になったりはするけど、ライバル令嬢がそのせいで悪い扱いを受けるという展開は無かったと思う。


それなのにどうして私は今、国外に追放をいい渡されているのだろうか?


ライバル令嬢すなわち、マリアローズ・フロイライン公爵令嬢の婚約者、カイルーズ・エヴァン王子と生徒会の関係で親しく会話をしてしまったせい?


それとも、前世で一番気に入っていた攻略対象、ルナリスタ・フロイライン公爵令息を、可愛い可愛いと愛でてしまったからですかね……。ただただ弟を愛でる感覚だっただけで悪気は無かったはずですよ。


いやー、前世の記憶が戻る前から、前世の私成分があって驚きですな。


私を不敬罪として断罪した公爵令嬢は、なんだかホッとした表情をしてて、王子と話していたのは事実の私。罪悪感が込み上げてきた。例え生徒会の仕事だったとしても、ご令嬢を通して王子にお声をかければ良かったのかなと反省中。


国外追放だとルナ君を目の保養として眺めることができなくなると思うと、身を切るような切なさを感じてしまった。見納めとして、令嬢の横にいる彼を穴が空きそうなほどに見つめておいた。


ルナ君は今まで私に絡まれ続けたせいか、スイッと視線を避け私を絶望の縁に追い落とす。そんな冷たいところも可愛いよね!


「婚約者がいる男性に近寄った罪、公爵令息を誘惑した罪、神殿で聖女を騙り、魔力量の虚偽申告その他多くの大罪により、ユリス・ベルーナ男爵令嬢の身分を剥奪の上、永久国外追放の刑と処す!」


この時をもって私、ユリスは平民の身分に落とされ、魔物が蔓延る危険地帯へと放り出されることになったのでした。終わり……、いや辛くない!? 私聖女詐称や、魔力量の虚偽申告とか覚えがないんですけど?


着の身着のままとかあまりに酷い。なんで追放、ざまぁされたのか、原因を追求して安全地帯で暮らせるまで、諦めきれないからあぁ!


◆◆◆


さて、追放されてから早一年。


魔物が蔓延る荒野でも、余裕でサバイバル生活ができました。できてしまったのです。自分でも驚き。


乙女ゲームのヒロインは伊達(だて)では無かった。


聖女を騙りとか言われたけれど、現に聖なる結界で魔物を跳ね除けてるし、魔力量のおかげか望んだものは大体手に入るから、衣食住にも困らない。


結論、私は誰かに嵌められたのである! 許し難しっ。


誰だ……、誰が私を陥れたんだあ。出会ったら細切れのみじん切りにしてやる。


家のノックの音で現実に戻った私は、扉を開けに行く。


最近、私の居場所を突き止めた従兄のグエンがよく尋ねてくるのだ。


曲りなりにも大罪人である私のところに、こんな頻繁に訪れて大丈夫なのだろうかと、他人事(ひとごと)ながら心配になる。


それでも一年間一人で暮らしていた私は、人恋しかったのか、甲斐甲斐しく接してくるグエンに、次第に絆され、とうとう先日、彼と恋仲となった。


ある日のこと、グエンの独り言を聞いた私は、全ての謎を解き明かした名探偵がごとく、メガネをクイッといじる仕草をし、ビシッと彼を指さす。メガネはしてないけど!


グエンはこう言ったのだ。


「追放案を出して正解だった」


詰めが甘い! 詰めが甘いぞ黒幕め!!


バレたらまずい秘密は墓の中まで持って行きなさいよ! どんな顔して罵ればいいのか分からんっ。


◆◆◆


衝撃の事実、犯人は従兄のグエンでした。


供述によると、彼は私を独り占めしたいが為に、公爵令嬢と手を組み、果ては国までも巻き込んで、このような事件を起こしたとのこと。


さすがに幼い頃から仲良くしていた従兄を細切れにする訳にもいかず、私は半年間口を利かないという刑を彼に言い渡した。


その時のグエンの顔は、この世の全ての不幸を背負ったかのように暗くなり、少し胸がスッとした私です。

お読みいただきありがとうございました。

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