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 今日はどれだけ客が入るか。ぼんやりと考えていると一刻が過ぎ、硝子の向こうに男や女の腕を引いて自分の店へ連れ込む者たちの姿があった。いつもより、早く、多くの人が入ってきている様子。相手につかれた売女や本命が高すぎて代わりにここで代用しようとする者なんかが雪崩のように金を置いていくのではないかと思っていた。

 戸を引いたのは私より少し上の女。

 ここらの者ではなさそうだった。色の薄い艶やかな長髪を綺麗にまとめ上げており、衣は上質。身売りしている様にはどうやっても見えない。だが、大人しそうでもない。南蛮の飾りをいくつも身に着けている。何より、下の丈が少々短い。肌も白玉というより小麦のようだ。それほど位が高いようにも見えないし、きっと商家の娘といったところだろう。

「ここって夢を売るっていう店でしょう? 私四半刻だけ見てみたいのだけれど」

 横に垂れる髪を耳に掛け、瞳を輝かせていた。

「金額は……」

 言いかけたところで、彼女はふふと笑って笑顔を見せた。

「知っているわ。彼から聞いたの」

 彼? そんなわけが無いと思いながらも不安が過る。

脳内に浮かぶ姿をどうにか消し去り、絨毯の上に横になるように言う。女は汚くないのか虫は居ないのかと煩く鳴くばかり。これではいつまでたっても夢を見せる事が出来ないと困り果てていると、また戸を引く音が後ろから聞こえてきた。

「いらっしゃい……ませ」

 振り返ってみると、そこには信じられない人が立っていた。

 戻って来た。

 帰って来た。

 私の元へ。

 やっと、これで、私は、幸せだ。

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