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 隙間風が頬を掠め、瞼を上げると陽光が枕もとを照らしていた。もう春の終りかけだというのに似合わない冷気が床を這っている。まだ温もりに包まれていたいと感じつつも、あの記憶のせいで背も胸の合間も汗が滲んでいて、気持ちが悪い。湯浴み……風呂は此処に備わってはいないし、洗濯桶に湯でも張るか。

 髪が濡れないように結い上げて、庭に桶を出し何往復かして股上まで湯につかる。日差しが降り注いでいてもやはりまだ肌寒い。

 湯気を上げる桶に手ぬぐいを沈めて丁寧に躰を拭いていく。まだ脳内に残っている感触のせいで反応を見せる腿や腕。

あんなものを見たせいだ。過去など、虚しくなるだけ。

考えるだけ無駄だと、背の汗を拭いとる。手の届く所に置いていた下着を手に桶から上がる。

髪を下ろし、香油で整える。台所に置きっぱなしの林檎とよく店に来る男娼が寄越した南蛮の菓子を適当に食んで、白湯で胃まで流す。

 店を開ける夕刻まで、軽い掃除と換気。少し汚れが見える商売道具を磨く。すぐに夢を見せられるか確かめるために咥えると、ゆらりと白煙がのぼった。何の味もしない。これでいい。

 煙管を離して、時を待った。

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