表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/21

愚か

 愛を囁き合い、互いの熱を感じている夜長。

「燐……燐……」

 私を求める黎。蕩けている瞳には私しか映っていない。

「愛してんで」

 耳元で囁く声に心地良さを感じる。このまま溶けてしまいたい。そうして一つになれれば、もっと愛に溺れる事が出来る。

 

 それでは、夢でおぼれていた時と何ら変わりないじゃあないか。

 

奥底で考えてはいけない言葉が浮かんでいた。

意識を彼へと戻して、彼へと接吻をした。

「私も」

 沈丁花の香りはもう体に染みついてる。前までは一時だけだったのに、今は彼だけの香りではない。息を整えるとあまりの幸福で詰まってしまいそうだった。

 幸せ。幸せのはず。今の私は、満たされている。充たされて、いる?

 一度湧いて出た疑問は。不安は、確実に現実を突きつけてきていた。


 腕の中に居る私に起き抜けの彼は悪戯に下唇に触れ、拭い取った紅を己の唇に乗せる。

 今までであれば、焦れていた時ならば、動かされていたはずの感情。霞がかっているような、靄が覆っているような。積み上げてきた、つくって来た私がどうにも崩れる音がする。これは……これは。

「何か、違う気がする」

 必死に考えまいとしていたのに、簡単に気付いてしまう。あぁ、愚かだ。一度分かってしまったら、もう戻れないというのに。この生活ももうお仕舞だろうか。

「なんか言うたか?」

 聞き返す彼に、もう諦めて伝えてしまおうと思った。彼は、黎はどう思うだろうか。なんて言うだろうか。疲れた、やっと終わりかなんて、言われてしまうのだろうか。

 それでも、まぁ構わない。心は嘘のように軽かった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ