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不安
黎はそれから一月、どこへ行く事もなく、居続けた。たまに果物を買いにふらりと出て行く事はあったが、必ず戻って来ていた。
だから私も安心していた。もう何も言わずに行く事は無いだろうと。
「燐、ちぃと買いに出てくるわ」
数時間で帰って来ると思い、快く送り出した。
「いってらっしゃい」
私も彼も笑顔だった。きっとまた林檎でも買って来てくれるのだろう。もしかしたら、煙草が切れそうだと言っていたから、そちらだろうか。
帰ってきたら、食べたいと言っていた鶏肉粥でも作ろう。
「じゃあ、またな」
去り際の言葉が不安を煽った。




