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何がハプン?

「痛っ!」

頭を押さえる間も無く、

「爆ぜるように跳ぶんだ!早くっっ!!」

そう言って、ボクの脚を1本引っかけるように持つと、


ピチーーーーーンッ


2匹一緒にすごい勢いで跳ね飛んだ。

爆ぜるって、爆発するみたいってことなんだろうなぁ。

そういや、栗が爆ぜたとか言うもんなぁ。

ぼんやりそんなことを考えたまま、宙を舞いながらスローモーションのように見えた景色は、ボクらがいた茎の下の方にあるさらに太い茎?枝?と、そこに止まっている黒と白と灰色をした3色の鳥だった。

アイツに食べられちゃうとこだったのかー・・。


ポスンッ


落ちた場所は、草むらだった。

虫である今のボクにとっては、さっきまでいたところからすごく離れたような気がするけど、きっとそうでもないんだろうな。

それでも、さっきの鳥が襲ってくることはないから、無事に逃げることができたみたいだ。

「ふぅ。とりあえず、ここなら平気だろ。」

「あ、ありがとう。」

嫌なヤツは、立ち上がるとキッとボクを睨みつけて(表情わかんないけど、そんな雰囲気だ)、

「調子に乗んじゃないぞ。」

と凄んできた。

「な、な、な、なんで、そ、そ、そんなこと言うんだよ。」

ビビビビビビっちゃったけど、逃げ出したい衝動を堪えて、なんとか言い返した。

だって、助けてもらったのは感謝するけど、なんで怒られんのかわかんないし、虫に負けるなんて嫌だ。

もし凄んできた相手が人間だったら、言われた瞬間、一目散に逃げ出すんだけど、なんたって相手は虫だから、負けるはずない。

殴られたり蹴られたりしないと思うし・・たぶん。 

口だってストロー状だから、噛まれないし・・たぶん。

「だいたいねぇ!」

顔をグッと近づけてさらに凄んでくる。

うわわわわっ!やっぱ怖いぃっ!

言い返した事をちょっと後悔して、ギュッと目を瞑った。

「なんだよ、キミのその毛は!!」

「へ?け?ケ?」

「毛だよ!白い毛束!!」

嫌なヤツは、凄みながらフワモコを動かしている。

「・・これ?」

コイツの言っている毛束というのは、どうやらボクの頭の端っこにチョロリと見えている、フワフワのことを言っているようだ。

これがどうかしたのかな?なんか変ってこと?

ボクにはボクのフワフワが見えない。さっきも散々試したけど、見ることができなかったんだ。

もう一度、視線を動かしたりクルクル回ってみたけど、やっぱり見えない。

「ごめん、ボクには見えないわ」

「見えないじゃないじゃん!なんだってその毛束を、爆発したみたいに、吹き出したまんまにしてんのさ!」

「・・・・・・?」

言ってる意味がさっぱりわかんない。これって、なんかするもんなのかな?

黙っていると、嫌なヤツはイライラしたように声を荒げて、話しを続けた。

「身を守るために、毛束でカモフラージュしたり、身体を隠したりすんじゃん!みんなそうしてんじゃん。わっちだってそうだ。だのに、キミは放ったらかしじゃん!そんなん、目立ってしょうがないじゃん!キミのせいで鳥に見つかったのかもしんないし、一歩間違えば、仲間が全滅してたかもしんないじゃん!」

「え!これって、そんな役目してたんだ。」

びっくりして口をついた言葉を聞いて、嫌なヤツは拍子抜けしたようだった。

「なんだよ・・そんなことも知らないのかよ。」

コイツ、なんにもわかってないんだと思ったに違いない。声が和らぎ、ちょっとだけ優しい説明口調になった。

「あのねぇ、さっき言ったとおり、この毛束を使えば身を隠したり守ったりできるし、蝋でできてて水を弾くから、雨が降ったって平気の平左。つまり、わっちら幼虫にとっては、どえらい大事なもんなんだよ。だけど、フワフワしてると目立つから、鳥なんかに見つかっちゃうじゃん。だからみんな成虫になるまで、爆発させたまんまになんかしてないんだよ。」

ついてくるように言われて、草むらの中を連れ立って歩き出した。

「この毛束を使うと、風に乗って遠くまで飛んでいけるんだよ。わっちもそうやって、ここまで飛んできたんだ。あん時は、風に乗ってるっていうより、風になったみたいだったな。デカい木も小さく見えるし、すごく面白かった。」

飛んだ時を思い出すのか、その時見た光景を興奮した様子で話して「また飛びたいんだ」と言った。

しばらくいくと、一本の木を脚差して

「ちょうどいいじゃん。みんないるし、ここならある程度は安全だろう。」

そう言って太い木にピョンピョンと跳ねながら登り始めた。木っていっても、すでに何匹もくっついているフワモコの皆さんが、ストロー状の口をブッ刺して食事をしていたから、たぶん樹木じゃないんだろうな。よくわかんないけど。

後ろにくっついて登って行くと、枝分かれした先にピラミッド型の虫が何匹か止まっていた。

「あ!チュウゴクなんとかなんとか」

「ああ、チュウゴクアミガサハゴロモの成虫じゃん。わっちらは不完全変態だから、このまま休むことなく敵から逃げ続ければ、わっちもあんな風になれるんだ。もう少し、もう少しじゃん。」

「早く大人になりたいわけ?」

「決まってんじゃん」

嫌なヤツは、意外そうにそう言った。

「風に乗るだけじゃつまんないじゃんよ。大人は空を自由に飛べるから、さっきみたいに、鳥に襲われそうになっても、他の危険からも、跳ぶんじゃなくて飛んで逃げられんじゃん。まあキミらには、わっちら外来の苦労なんざわかんないよ。」

一瞬ドッキリした。

何でこいつは、ボクには苦労がわからないって知ってんだろ。それに、「キミら」って言ったよな?

もしかして、人間だって知ってたりして。

・・・まさかね〜。

外来っていうのも気になるよな。

「ねえ、なんでボクが苦労を知らないってわかるんだよ。あと・・外来ってなに?」

「だってお前、チュウゴクアミガサハゴロモじゃないじゃん。」

おずおずと質問してみた結果、返ってきたのはボクにとってビックリな答えだった。

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