フワフワがいっぱい
「うわぁ〜!」
ついていった先には、フワモコがたくさん並んでいた。
植物の茎に行儀良く一列になって、熱心に何かをしている横を、嫌なヤツと一緒に進んでいく。
「ほえ〜・・」
お饅頭みたいな体はみんな同じなんだけど、その上に乗っているフワフワは同じものが一つとしてない。それぞれ形や色までがビミョ〜に違っていて、そのどれもが、音楽室に貼ってある昔の音楽家のヘアースタイルをしたカツラみたいだ。クルクルカール、くせっ毛、外ハネ。短毛もいれば、長毛もいる。ロン毛ってヤツ?
もちろん、ボリュームも1匹ずつ全然違う。ペタリとしているのは、まるでヘアクリームをつけ過ぎたママみたいだし、広がってるのは、雨の日に湿気で収集がつかなくなった時のパパみたいだ。
「よく見ろ。みんな違うでしょ。」
嫌なヤツは、なんだか威張ってるけど、フワモコのことが気になって腹も立たない。
「ねえ、みんな何してんの?」
もの珍しくて、キョロキョロしながら進んでいく。
「なに言ってんの?食事してるに決まってんじゃん」
「えっ!?」
近づいてよく見ると、ストローみたいになっている口を茎にブッ刺して、ちゅーっと吸っている。
ジロリと睨まれて、お食事中すみませんとぺこぺこ謝った。
「カメムシの仲間は、ストローみたいな口で植物の液を吸うんだっピ。」
後ろからキュッピの声がした。
「そっか!加藤さんもカメムシの仲間だって言ってた!そういえば、セミもそうだったよね。」
「大正解よ〜。オロロン」
「チュウゴクアミガサハゴロモは、なんでも食べるっピ。木でもフルーツでも野菜でも、なんでもござれなんだっピよ。」
「なにブツブツしゃべってんの?気持ち悪いな。」
嫌なヤツが振り向いた。
気持ち悪いだってぇ!?
「なんでそんな嫌なことばっか言うわけ?キミには見えないんだろうけど、ここにはボクの友達がいるんだよ!」
「何それ。変なの。」
「変じゃない!ボクの大事な・・家族みたいな友達なんだ!バカにすんな!」
言った途端、愉快な仲間達は「家族っピー!」「家族なのぉー!オロロロ!」と大騒ぎでくるくる回っている。
それを見たら、言ったボクのほうが小っ恥ずかしくなってしまった。
まあ、嬉しそうだからいっか。
そんなこと思ってる自分も、喜んでいる2匹を見ながらニヤけているのに気がついて、慌てて真面目顔に戻した。見た目にはわかんない(虫だからね)から、アイツらにはバレてないだろうけど。
嫌なヤツは、言い返すこともなくジッと押し黙っている。
「・・・・・」
およよ?何にも言ってこないのかな?絶対、絶っ対言い返してくると思ったのに。
う〜ん、キュッピ達と違って表情が読み取れないから、何を考えてるのかわかんないな。
そこで、はたと気づいた。
なんだボク、あの2匹の気持ちならわかんじゃん。
アイツらは虫じゃないけど、ボクにとっては虫と同じようなもんだ。だから、表情が変わんないアイツらの気持ちなんか、本当だったら人間のボクには全然わかりっこないはず。それでも、ボクにはアイツらが何を考えてるのか、ちゃんとわかる。
なんだかめちゃくちゃ嬉しくなって、クルクル回る2匹と一緒に回りながら、「イェーイ!」と思わずハイタッチした。
「・・・あっそ。良かったじゃん。」
嫌なヤツはボソッとそれだけ言うと、ピョンと飛び跳ねて、どっかへ行ってしまった。
「ふん!なんだアイツ」
あんなヤツのことは放っておいて、向こうへ行ってみようか、とキュッピ達に声をかけたその時、
バサッ バサササッ
という音がして強い風が吹いたかと思うと、周りが暗くなって、枝がグイーーーンと大きくしなった。
「うわっ!?なんなんだ!?」
あんまりグイングイン激しく動くので、脚を縮めて必死に枝にしがみついた。
こんだけしなってるってことは、油断したら、どこへともなく飛ばされるのは間違いない。現にオロンとキュッピは、「オロー?」「キュピー?」という声だけを残して、クルクル回転しながら飛んでいってしまった。
残るはボク1人。いや、1匹。
「うわわわわ!ジェ、ジェットコースターより怖いんですけどーー!」
上下にユサユサ揺れて、キュッピとオロンを心配する余裕もない。アイツらは幽霊だから、心配ご無用なんだけどね。
ひたすら身体を枝にくっつけて、飛ばされないようにしがみつきながら、ふいに並んでご飯を食べていた他のフワモコ達を思い出した。
みんな飛ばされたりしてないかな?
気になって周りを見回すと
「・・・あり?」
そこには誰もいなかった。
顔をペタリと枝につけるようにしたまま、前足で眼を擦ってみたけど、ただただフワモコ達に汁を吸い尽くされたであろう、萎びた枝が伸びているだけだ。
え?全員飛ばされちゃった・・なんてことないよね?
だって1匹もいないんだよ?そんなことってある?
その時、グンッと叩きつけるような、下に向かう風が吹いたかと思うと、
ザシュッ
激しい揺れと共に、突然周りが暗くなった。
前後からは光が漏れていて明るい。
「あ、あれ?いつの間にトンネル?あれ?」
今度は、明るくなると同時に上に向かう風が吹いた。
「うわわっ!?え?トンネル・・じゃないよね?え?」
またしたも、グンッと下に向かう風が吹いた瞬間
「早く跳んで!!」
大きな声がして、脚を強く引っ張られた。
意味がわからずボケっとしているボクの頭を、バゴン!と思い切り叩いて連れ出したのは、さっきいなくなったはずの嫌なヤツだった。




