白いフワフワ
パチッ
何だかスッキリ目が覚めた。
ザザザッ ザワザワザワ ビュウゥゥゥ
風の音と葉っぱが擦れる音が、そこらじゅうから聞こえる。
「オォォーっ!飛ばされる〜!」
あれ?めちゃんこ風が強いのに、全然へっちゃらじゃん。なんだろう、飛ばされる心配のないこの安心感。
目の前には、真っ白でフワフワしたヤツがいて、何も言わずにこっちをジーッと見ている。
「キミはダレ?」
「キミはダレ?」
「真似しないでよ。」
「そっちこそ真似しないでよ。」
「・・・・・」
「・・・・・」
何だろう、この生き物。虫・・だよね?
あれ?今回は、チュウゴクなんとかっていう虫になるんじゃなかったのかなぁ?
不思議に思って自分の脚を持ち上げて見てみると、向かい側にいる真似っ子に色は違うけど、そっくりな脚をしている。
「え?なんで?」
「なんでってなんで?」
揚げ足を取られているようでムカつくな〜。
「キミに言ってないよ。」
「こっちも言ってないよ。」
ほっぺたをぷうっと膨らませたけど、ボクは虫だからきっと誰にも気づかれないだろう。
「もういいよ!」
「いいんならいいよ!」
うむむ。今回は、チュウゴクなんとかじゃなくて、たぶん目の前の虫と同じ虫になったんだろう。
ちぇっ。アリンコのヤツ、間違えたんだな。
なんていう虫になったのか知りたいけど、話すと真似されるからしゃべらずに観察することにしよーっと。そのうちキュッピあたりが教えてくれるはずだもんね。
コイツ、見た目は可愛いんだよな〜。
脚を畳んで丸っこくなってるから、白に限りなく近い緑色をした(というより、緑がかった白?)丸いお饅頭って感じ。
脚から顔のあたりは緑色が他よりも少しだけ濃い。そこから白っぽくなっていくんだけど、薄茶色のシミみたいな模様があって、ところどころにある黒い点々がホクロのみたいで可愛い。そして、ボクが一番可愛いと思うポイントは、フワフワした白いモノ!このフワモコを、身体全体の上にふんわり乗せている。
・・そうか!ボクも同じ虫ってことは、ボクもこのフワモコを乗せてるってことだ!
見えるわけじゃないけど、すっごく見たい。
なんとか見えないかな〜と思って、横からチラリと見えるフワフワを追いかけてグルグル回ってたら、
「何してるの?バッカみたい。」
と言われた。
カッチーーン!
「なんでそんなこと言うわけ!?キミに迷惑かけてないでしょ!」
「フンッ。」
可愛くない!前言撤回!全っ然可愛くない!
「りくにそんなこと言わないでー。オロー。」
「そうだっピ!なんでそんなこと言うっピか?」
「キュッピ!オロン!」
うぇ〜い、これで愉快な仲間達が揃った。
なんだかんだいって、この2人がいるとすごく心強いんだよな。
「も〜、遅かったじゃん」
あんなに苦労した2匹のサイズ感も、ちゃんとボクの思い通りにできるようになった。慣れってすごいね!
さっそく2匹に
「コイツ、さっきからムカつくんだよ。真似っ子するしさ。」
と言いつけて、チラリと変な虫の方を見た。
「真似っ子じゃない!そっちが真似してんじゃん!」
むきになって言い返してきたけど、3対1だからこっちが断然有利だもんね。
「だいたい、誰かに話すふりして、わざとらしくワッチの悪口言わないでよね!」
なぬ!?
キュッピとオロンと得体の知れない嫌なヤツを、キョロキョロ見比べながら、
「ちょ、ちょっと待って。キミにはこの2匹が見えないの?」
と訊くと、
「何わけわかんないこと言ってんの?バッカじゃない。」
と言われた。
ガーーン。またしてもバカって言われた。
「このチュウゴクアミガサハゴロモには、ボク達が見えないっんだっピな。」
「あらー、残念なのねー。オロロン」
2匹は驚いてもいない。
まあ幽霊だから、虫によって見えたり見えなかったりしても、しょうがないよね。
ウンウンと聞き流そうとしたところで、キュッピが大事なことを言ってたのに気づいた。
「ねえ、いまチュウゴク何とかって言った?」
「そーだっピ。りくが寝る前に言ってた虫だっピ。」
え!?もしかしてコイツら、なんか勘違いしてる!
「違う違う!ボクが言ってたのは、ピラミッドみたいな虫だよ?三角形で立体的で、一見、蛾みたいに見えるヤツ。」
慌てて、ボクの見た虫の説明をした。
すると、2匹は「何を今さら」という雰囲気を漂わせながら
「この子はねー、幼虫なのー。オロロン」
「そーだっピ。りくも幼虫だから、ちゃんとフワフワが付いてるっピよ。」
と教えてくれた。
「ようちゅう・・・幼虫!?えー、全然見た目が違うんだね。」
「真っ白フワフワよ〜。ワタシも付けたいのー!オロロン」
オロンがグイングインしながら、そう言って騒いでいる。
どうせ、目の前の幼虫と同じなんだろうけど、いまここに鏡があったら、どんなふうか見れたのに、残念だな。
「あの子のフワフワも可愛いけど、りくの直毛も可愛いのねん!オロロン」
ん?ボクのフワモコは直毛って言った?
「ボクのフワモコは真っ直ぐなの?」
「そーそー。ボーボーよぉ。オロ〜ン」
目の前の幼虫は、外国の絵に描かれた天使みたいにカーリーなのに、ボクはボーボーなの?
え?日本人だから?まさかね?
なんて、俄然フワモコに興味が湧いた。
そうだ!他の幼虫を探せば、ボクのフワモコに似た形が見つかるかもしれない!
「ねえ、もしかしてフワモコの形って違うの!?」
「そうだっピ。1匹ずつ違うっピよ。」
「それって・・」
と言いかけたとき、
「違うに決まってんじゃん!」
誰かにピシャリと言われた。
へ?だれ?
キョロキョロ周りを見回すと、そう言ったのはフワモコを乗せた嫌なヤツだった。
「コレは蝋でできてるから、ちょっとしたことでも形が変わっちゃうの!だから、みんな違うってこと!」
嫌な言い方だったけど、それよりも『蝋でできてる』ってトコが気になった。
「蝋?蝋って、ローソクの蝋ってことだよね?えー!蝋でできてんの!?」
嫌なヤツはため息をつくと、ツイッと立ち上がって
「ワッチについてきな!」
と言うが早いか、ピョンッと飛び跳ねた。




