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嗚呼、文化祭

「なぁなぁ、何やるか決まった?」

「うんにゃ。決まってない。そっちこそ何か考えてよ。」

「りくは?」

「・・・眠い。」

そーじゃなくて!と、みんなから一斉にツッコミが入った。

今はホームルーム中なんだけど、グループに分かれて文化祭の出し物を考えている。

ボクの学校の文化祭は、各学年毎に美術または技術の授業で作った作品を、体育館に全員分展示する学年展示と、各クラスで展示や出し物をするクラス展示がある。

文化祭実行委員は、体育祭同様に各クラス2名と決まっている。うちのクラスは田端と渡辺だ。

文化祭の出し物を考えるのは、これで3回目。最初の2回はクラス全員で意見を出し合ってたんだけど、みんながおもしろがって「クレープ」「チョコバナナ」果ては「金魚すくい」「カラーひよこ」なんて言いだして収まりがつかないから、グループごとに意見をまとめて出して、そこから選ぶことになったんだ。今日で決めないと、間に合わなくなる。というか、しょぼい展示かやっつけの劇くらいしかできることがなくなる。ボクとしては、それでもいいんだけどね。

だいたい、食べ物は禁止だし、生き物なんかダメにきまってるじゃん!

去年ボクのいたクラスは、ダンボールで迷路を作ったし(あれはすぐに崩れて散々だった)、今年は的当てくらいしかないんじゃないかなぁ。そう思って口に出した。

「的当てとかは?」

「どんな?俺のクラスでやったけど、全っ然面白くなかったよ。あん時は、ボール使っちゃダメってことで、ティッシュを丸めてセロテープでぐるぐる巻きにしたんだけど、相当テープ使わないと軽すぎて飛ばないしさ。」

「ティッシュだから飛ばないんだろ。ガムテープに替えるとかさ。あとは、ちょっと雰囲気を変えて、例えば・・う〜ん、そうだなあ・・宇宙ってことにして、宇宙人かUFOを的にするとか。暗かったら、ちゃっちいのがバレなくていいんじゃない?」

「どうやって暗くすんだよ。」

「黒いカーテン使えば暗くなるじゃん。」

「う〜ん、なんかピンとこない。」

あ〜あ。どうせ大したことなんかできないのに、こんなに悩むのもなんだかな〜。

そう。舞台で出し物をするとか、作品展示以外に何かしようとしても、所詮ダンボールしか使えないから、できることなんて限られてるのだ。

去年、ボクらの1コ上の学年がカジノやってたけど、学年全クラスがカジノになっちゃってて、行っても景品が色を塗った松ぼっくりとか折り紙の風船とかで、あんまり面白くなった。

うん、カジノは無しだな。

「カードゲームなんかどお?」

「なんのカードゲーム?ドラパラカードとか、持ってきちゃダメだろ?」

「先生達をカードにしたら、おもしろいんじゃないかと思うんだけど。」

「お!いいかも。レアカードは校長にするとか。」

「写真は無理だよなぁ。」

「似顔絵でいいじゃん!コピーすれば何枚でも用意できるし。これに決まったら、みんなで必殺技考えようぜ。」

「よし!じゃあウチのグループはカードゲームな!」

はぁ〜、やっと決まった。

みんなでウェ〜イとハイタッチして、残りの時間は楽しいおしゃべりタイムになった。


「結局、モザイクかぁ」

「ぜ〜んぜん、面白くないよな〜。」

「しょーがないじゃん。やっぱ女子には敵わないよ。」

「だよな〜。」

恵太とハルキとソエジンと、ブツクサ言いながら下駄箱から靴を出した。

グループそれぞれが出した案は、メイド喫茶、モザイク、的当て、カードゲーム、迷路。男子共はメイド喫茶に色めき立ったけど(お年頃だからね)、女子からは大ブーイングで、結局メイド喫茶やるなら男子がメイド服(っていっても、女子が貸してくれっこないから、身内の服を着てエプロン着けるだけだけど)を着ることになった。それだけでもヤル気が無くなったけど、さらにジュースも食べ物と同じでダメなんじゃないかってことが追い討ちになって、一気に失速して案から消えた。

クラスでも目立つ女子達が提案したのはモザイクだった。いま女子の間では、海外ロックバンド『purple gems』と漫画『さくら團参る!』が流行っている。堀米が、2次元派と3次元派に分かれて2枚のモザイクを作ったらどうだろうと提案したら、大人しめの女子達も揃って賛成した。

「モザイク作るっていったって、何で作るんだよ。紙を使ったら、モザイクじゃなくて貼り絵になっちゃうし、本格的にやるとしたら、タイルなんて高くて買えないよ〜」

面倒臭がりの男子達は、ちまちま貼るのが嫌でちょびっとだけ抵抗したけど、女子に敵うはずはない。


「で?結局何を使うことにしたの?」

ママがキャベツをシャクシャク食べながら訊いてきた。

今日の晩ご飯は、カリフラワーのカレー煮だ。

本当は、昨日のカレーに麺つゆと水を足して冷凍うどんを入れたカレーうどんの日だから、キャベツを用意してたんだ。だけど、カリフラワーが値引シールで安かったとかで、明日のはずのカレー煮が今日になった。というわけで、いつもと違って麺つゆ入ってないカレー煮だけど、これはこれでまた美味しい。でもボク的には、キャベツはいらなかったな。ママには言えないけど。

「それがさ、卵の殻を使うことになったんだよ。」

「へ〜、卵の殻ねぇ。殻を割って何かに貼って、その上から色を塗るの?」

「違う違う。殻の表面に絵の具で色を塗って、乾かすんだよ。そんでね、それを割って貼っていくんだって。用務員さんに訊いたら古いベニヤ板があるって言ってたから、明日それをもらってくるんだよ。」

「あ、なんかママも中1の時に同じような事やったかも。あん時は畳1枚サイズのベニヤ板に模造紙貼って、その上から卵の殻を貼った、確かそう!富士山描いたな。うわ〜、懐かしい〜。」

「ボクらも確か畳のサイズだったと思うな。それを1枚ずつ。」

「えーー!!大変じゃない!2枚!?デザイン考えたり、卵に色塗ったりするのに、今から作って間に合うの?」

そーだよね。あと1カ月しかないのに、間に合うんだろうか?

「わかんない。だから、毎日帰りが遅くなると思う。」

ママにとろけるチーズを出してもらって、カレー煮にかけた。だいぶカレーがぬるくなっちゃったから、なかなか溶けないけど、まあいいや。パクリと口に放り込んだ。

「これからは卵の殻を集めなくちゃいけないってことか」

ボクが頷くと、1人何個ぐらい集めればいいのかしら。相当使うからな、なんてことをブツブツ呟きながら、ママはお皿を片付け始めた。

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