表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/72

大団円?

衝撃的な方法でカマゾーが眼を覚ますと、ヒナちゃんは、良かった良かったと言って、ピーピーと泣いた。

「エサを食べないのにオナカがパンパンだったから、オヨヨと思ってたっピ。」

キュッピは、自分のおかげでたすかったんだと言わんばかりに、エッヘンと胸を張って誇らしげだ。

全員が喜んでいる。ほんとに目を覚まして良かった。

「眼に光ガ、入ってキタ瞬間、キーンと、アタマに音がして、何ニモ、考えらレナク、なった。何モ聞こえナク、なった。ヒナちゃんゴメン、ね。」

その話しを聞いたキュッピが

「カマゾーよく頑張ったっピ。水に飛び込んだ時は、もうダメかと思ったっピ。」

と言ったので、ヒナちゃんは号泣、ボクとオロンも、つられておいおい泣いてしまった。

「ボク、身体もこんなふうに小さいし、羽もほとんどないから、他の肉食昆虫に「男女」とか「チビ」とか言われて、しょっちゅうエサを横取りされてたんです。」

カマキリでも、エサの横取りなんてされるんだ。意地悪するヤツがいるのは、人間と同じなのかなぁ。

「エサを追いかけるのに夢中になって、待ち伏せしてたハラビロカマキリに気づかなくて、食べられそうになったことがあるんです。そのとき助けてくれたのがカマゾーくんでした。カマゾーくんは、ボクのことを絶対にバカにしないし、一緒にいてすごく安心できるんです。でもそれは、彼が強いからなんじゃないんです。カマゾーくんには感謝しかないのに、ありがとうを伝えないままだったから・・グスッ」

ん?ボク?男女?

「助けラレたのは、オレの、ほう。ヒナちゃんハ、覚えてナイ。産まレテ、すぐノ時、オレは、ヘンなヤツ、こっち、来るナって、兄弟から言わレテ、独りボッチだった。そんな時、他のムシから、助けテくれた。その時から、大好キ。ボクのヒーロー。ヒーロー守ル、あたり前。」

ん?ヒーロー?

「カマゾーはおもしろいヤツだけど、変なヤツじゃないっピ。変わってるだけだっピ。」

「それって褒めてるの?」

そう言ってみんなで笑った。

「よかったオロー。もう2匹とも独りぼっちじゃないオロー。元気でねー。オロロン」

「これからは、ボクもカマゾーくんを守ります!」

「キュピ。敵が来たら教えてあげればいいっピ。」

カマゾーはヒナちゃんを背負うようにして、元の草むらへ帰っていった。


2匹が見えなくなるのを待って、疑問を声に出してみた。

「ねぇ、もしかしてヒナちゃんって・・・オス?」

「そうだっピ。今頃なに言ってるっピ。」

「オスだよー。知らなかったー?オロロン」

「えー!メスだとばっかり思ってた!」

「メスなんて言った覚えないっピ。」

・・・確かに言ってない。

「でも、でも!キュッピは「チョウセンカマキリのメスと間違えるんならともかく」なんて言ってたし、みんな「好きな子」とか言ってたし、オロンだって「純愛」だって言ってたし・・・」

「キュピ?純愛はオスとメスじゃなきゃダメなんだっピか?」

「そーそー。そしたらワタシなんて、1匹でオスとメスだから、純愛の完結体なのねー。オロロン」

「オロンは、雌雄同体だからでしょ。」

「そんなの関係ないのー。仲間になかなか会えないからなんだからー。オロロロ」

ありゃ。オロンがちょびっと怒って、目が三角になった。

「ボク達の場合、好きな相手を見つけることなんて、ほとんどないんだっピ。例えばボクは、メスのそばに行くだけで、食べられちゃうかもしれないっピ。それでもそばに行くのは、子孫を増やすためなんだっピ。だから、子孫繁栄を考えないで、好きな相手を見つけるのは、すごいことなんだっピ!」

「そんなもんか。」

「そーよー。好きもいろいろあるのー。オロロン」

「そうだっピ。ボクもいままで好きってどんなことか、わかんなかったっピけど・・・」

「?」

キュッピが少し溜めてから

「りくとオロンとずっと一緒にいたいっピ!きっとこれも、好きってことなんだっピ!」

と堂々と両手をあげて言った。

「ワタシもー!ワタシもなのー!オロロン」

愉快な仲間達は、キャッキャッと楽しそうにくるくる回っている。

「そうだね!ボクもオマエらが大好きだ!」

そう言ってオオカマキリのまま抱きつこうとしたら、2匹から見事に拒まれた。


目が覚めると、いつものボクの部屋だった。

両手を伸ばしてから勢いよくグイッと起きあがると、机の上ではアリンコが居眠りをしている。

キュッピとオロンはどこだ?

キョロキョロと見回すと、部屋の隅で2匹でお互いに寄っかかりながらグースカ寝ていた。

起こさないように、静かに、静かに。

ボクの大好きな仲間達だ。

思わず顔がほころんだ。

そっと部屋を出て扉を閉めると、キッチンのママに

「おはよー。」

と言った。

ママは、

最近早いのね、と言ってカフェオレの用意をしてくれている。

「ねぇ、ママ。カマキリの寄生虫って知ってる?糸みたいなヤツ。」

「あら珍しい。りくの方から寄生虫のこと訊いてくるなんて。」

そう言って、ボクの前にいつもの甘いカフェオレを置いてくれた。

最近ちょっと甘すぎる気がする。次からは、少し砂糖を減らしてもらおう。でも待てよ。甘くなくなったらアリンコ怒るかな?

そんなことを考えていると、

「ハリガネムシっていうのよ。」

「え?」

「だーかーらー、カマキリの寄生虫でしょ?糸みたいな。ウニョウニョっていうより、どっちかっていうとウネン、ウネンって少し固い動きをするヤツ。

「うん、そうそう。」

「あれはハリガネムシっていうの。最終宿主はカマキリだけじゃないけどね。ハリガネムシは、交尾のために、宿主を水辺まで連れていくのよ。」

へぇ。あの気持ち悪いニョロニョロは、ハリガネムシっていうのか。交尾のために水辺に行くっていうのは、キュッピが教えてくれたから知ってるんだな〜、これが。

「それがね、最近の研究で、カマキリの光を感じる仕組みを利用して、水に飛び込ませてるのがわかったらしいよ。」

「光を感じる仕組み?」

「光っていってもただの光じゃなくて、水面を反射する光のうちの、決まった性質に反応するみたいだ、ってことまでわかったみたい。アスファルトの反射する光も、似たような性質を持ってるから、寄生されたカマキリが道路に集まることが多いんだって。」

「へぇ〜。カマキリを道路で見かけることがあるけど、ハリガネムシに寄生されてるのかな。」

「かもね。しかも、水たまりとかだと干あがっちゃうから、ちゃんと深い水を選ぶ傾向にあるんだって。」

カマゾーは水たまりに飛び込んでたから、珍しいタイプだったのかもしれない。

「道路にいるカマキリは、ハリガネムシをオナカから出せないから、長生きできないね。」

「そうね。でも、どっちにしても寄生されたカマキリは長生きできないのよ。」

「え?」

「寄生されてたカマキリは、ハリガネムシを追い出したとしても、長生きできないってこと。」

「なんで!?だってオナカからいなくなってるんだよ?だったら、エサもまた食べられるようになるじゃん!」

ボクは驚いて、思わず立ち上がってしまった。

「や〜ね〜、どうしたのよ。ほら、座って。一度でも寄生されたら、身体はそんなに簡単に元通りにならないのよ。」

じゃあカマゾーは?せっかく助かったのに、すぐ死んじゃうの?

カマゾーの憎たらし気な顔を思い出した。何度もボクを「エサ」だって言ってたっけ。でもボクに、エサって言って悪かった、って言ってくれたんだ。

「すごいよね。やっぱ寄生虫って奥が深いわ。」

「ボク!ボクは!・・・寄生されても頑張ってるカマキリがすごいと思う・・!」

そう言うと、涙が溢れてきた。

ママは、びっくりした顔をしたけど、すぐに

「そうね。頑張ってるカマキリもすごいね。」

と言って、泣いているボクを抱きしめて、小さい子にするようにアタマを撫でてくれた。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

次回は文化祭です。つたない文章ではありますが、今後も楽しんで頂ける作品となるように心がけて頑張ります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ