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こんなはずでは

私は虫が苦手です。

嫌いではなく、むしろ好きなんですが、触ったら死んでしまうんじゃないか、という命の儚さを感じてしまうのです。甲虫や蟻のように視覚的に硬そうな虫は捕まえられますが、蝶・蝉・トンボなどは、怖くて触れません。幼虫は触れるので、「羽」が儚さの象徴なのかもしれません。

小学校に入る前くらいまでは、捕まえられたのになぁ。

でも虫って面白い!人とは違う不思議ワールド全開!

人とは違うだけで、彼らにとっては当たり前の不思議な日常を、りくと一緒に楽しんで頂けたら嬉しいです。


ゴォォォ サァァ シャァァ

くぐもっているけど、水が流れるみたいな音がそこらじゅうから聞こえる。ときどきコポコポという音も。

ゆらゆら揺れる黄緑色の屋根がいくつも突き出ていて、ずっと上の方は太陽が透けて見える。

・・・ボクはこの景色を知っている。

アレは屋根じゃない。葉っぱだ。


ん?

んん?あれ?

もしかして、いつもの?

な、ん、で? なんで虫になってんの? 頼んだっけ?

意識がハッキリしてくるにつれて、ムカついてきた。

なんだってまたムシになんなくちゃいけないの??

「アリンコ!なんでまた虫にしたんだよー!」

思わず叫んだ。


・・・ オスは悲しいと言っておったろうが。体現してみれば、わかりおろう ・・・


「ええー!?そんなこと?だって、ハエトリグモのときに体現してんじゃん!」


・・・ アレは蜘蛛じゃ。昆虫でも体現せねば ・・・


がびちょーん。

思わず天を見上げた。コレからそんなんばっかなの?

「ちょ、ちょっと、ちょっと、アリンコ!」


・・・・・ 以上 終わり ・・・・・


「えー!?そりゃないよー!」

「ナニが、ないのダ?」

ん?

シャッ

振り向くと目の前にカマが振り下ろされた。

「ヒェェェェー!?」

すんでのところで避けることができたけど、絶対、絶っっ対、一瞬心臓が止まった!間違いない!

「な、なに!?なになに!?」

「オマエ、オレのエサ。」

「ヒ、ヒィィィィー!?」

脚をバタつかせながら必死に逃げた。なんだかものすごく歩きにくい。バッタじゃないことは確かだ。

「マテ。オレのエサ。」

うわわわ!めっちゃ追っかけてくるじゃん!!

グラグラする葉っぱの上を滑り落ちそうになりながら走る。落ちたほうが早く逃げられるかもしれないけど、そんな一か八かの賭けをする余裕はない。

バッタバッタ、ビヨーンと、なんとか草5本分くらい?走ったところで振り向くと、もう後ろにボクを襲ったヤツの姿はなかった。

ハァ、ハァ、なんとか撒くことができた。

「こ、怖くてよく見なかったけど、なんだったんだ?」

ボクのことを「エサ」って言ってたな。肉食の何かなんだろうけど、一体なんだろう。とりあえず、逃げ切れてよかった。また追いかけてくるかもしれないから、とりあえずもっと遠くまで逃げておかなくちゃ!とりあえず、とりあえず・・

心臓はバクバクいってたものの、ホッと一息ついて前を向くと

バササッ

「ヒェェェェー!?」

目の前に着地したのは、緑色の巨大なカマを持ったカマキリだった。

「オレのエサ、マテ。」

「えー!?飛んでくるなんて反則だよー!」

シャシャッ

「ぬおぉ!?」

身体を反らしてなんとか避けた。さすがに命が懸かると、鈍臭いボクも俊敏になるらしい。

「逃げ、ルナ。」

なにこのめちゃくちゃ強そうなカマキリ!?

テレビで観た武術の達人みたいな出たちに加えて、逆三角形の無表情な顔が、恐怖を倍増させている。

なにあの顎!!ギチギチいってるよぉ。

シャッ シャシャッ

「ヒェェ!」

シャッ シャッ

「ヒィィ!」

反撃なんてできっこない。右に左に前に後ろに、とにかく避けまくった。

カマキリはまるで舌なめずり(舌はないけど)でもしてるみたいだ。こんなのに当たったら死んじゃうよ!

キラーンッ シャシャッ

鋭いカマがダブルで振り下ろされた。

万事休す!


や、やられた〜〜!


・・・


あ、あれ? やられて・・ない?


顔の前で交差させた前脚と前脚の隙間から恐る恐る覗くと、ビビるボクの前に何かが立ち塞がっている。

「りくをいじめちゃダメなのーー!オローン!」

「やってやるっピ!」

人生・・いや、虫生最大のピンチを救ってくれたのは、ほかでもない愉快な仲間達だった。

オロンがグイングインと身体を左右に振っている横で、キュッピが両前脚を挙げて、ぴょんぴょん飛び跳ねている。オロンの動きが速いのは、こっちの世界でも倍速モードが適用されてるんだな。

「オマエ達、来てくれてたんだね!」

思わず泣きそうになる。虫だから涙は出ないけどね。

オロンとキュッピは幽霊だから、虫にも見える時と見えない時があるみたいなんだけど、おとなしくなったところをみると、このカマキリには2匹が見えているんだろう。

「ヘンな、ヤツ。コイツら、ダレ?」

そうだ!2匹を大きくすれば敵はビビって逃げるはず!

我ながらいい考えだ。カマキリめ、いまにみてろよ!

ふむむむむ、大きくなれ!

頭で強く念じる。

「おおっ!」

2匹はムクムクと大きくなった。よし、成功だ!

「どーだ!ビビったか!」

予想に反してカマキリは突進してきた。

あれ?

大きくなりすぎた仲間達は、すっかり背景として溶け込んでしまった。おまけに大きくなった分、透け感が増している。にも関わらず、おバカなボクは味方を得たことで強気になって、挑発してしまったんだ。

「ヘンな、ヤツ、消えた。コイツ、オレの、エサ。」

「ヒェェェェー!?」

まずいまずいまずい。小さく、というか適度な大きさにしなくちゃ!このままじゃ、間違いなくエサになっちゃうよ。

「ちっ、ちっ、小さくなれ!なれぇー!」

半泣きで念じた。

ギュイーーーン

2匹は元の大きさになった。こんなのコントじゃん。

なんだかヤケクソ気味になってきた。落ち着け、ボク。

「ヘンな、ヤツ。また来た。」

「オロロー?」

「キュピー?」

2匹とも混乱してるみたいだ。当然だよね。突然大きくなったり小さくなったりしてたら。

でも、でも・・

「だ、だずげで・・・」

鼻をズビズビさせながら2匹にしがみついた。

「りーくー、だいじょぶだよー。オロロン。」

「心配ないっピ!ボク達に任せるっピ!」

シャシャシャッ

「あぁ!?オロン!!」

オロンがこちらを振り向いた瞬間、カマキリのカマが振り下ろされた。

最後まで読んでいただき、どうもありがとうございました。

つたない文章ではありますが、今後も楽しんで頂ける作品となるように心がけて頑張ります!

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