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ドタバタの末に

「キュッピー!キュッピー!」

キュッピはミクロの世界へ行ってしまった。

「ああぁ〜〜〜どうしよう・・・」

四つん這いになって、いや、脚は6本だから六つん這いになって頭(頭部?)を垂れた。気持ち的には、頭を抱えてるんだけど、身体の構造上ムリなんだ。

すべての複眼を凝らしてみても、キュッピは見つからない。

どうしよう。大騒ぎしてたから、もうどこかへ飛ばされちゃったかもしれない。

さっき辛うじて見えていた(気がした)土の粒に混ざった小さな点も、果たしてキュッピなのか他の何かなのか、区別のしようがない。もしかしたら、ダニ(ダニもよくわかんないけど)とか、偉い人にしかわからない、図鑑でしか見ることができない生き物なのかもしれない。

「あああぁ〜〜〜キュッピ〜〜。」

もう会えないのか。愉快な仲間達の能天気な掛け合いも見れないんだ。しかも、ボク自身のせいで。

隣では、小さくなったオロンが「キュピー?キュッ・・ピー?消えちゃったーのー?オロー?」

と、ウロウロキョロキョロしている。

スピードが遅いから、どちらかというとウネウネグネグネ、って感じだけど。

コイツ、なんにもわかってないんだな。

オロンごめん。ボクのせいで、もうキュッピには会えないんだよ。

そう思うと、なんだか泣けてきた。

「グスッ・・グスン・・キュッピ、ごめんね、キュッピ・・」

ココロの中では涙が溢れてくる。無表情で、角ばった折り紙みたいな顔に見えるんだろうけど。


・・・はぁ、情けない。なんというバカなのだオマエは。・・・


「ア、アリンゴー。ボ、ボグ・・グスン・・ギュッビを・・うわあぁぁん。」


・・・泣くでない!もう一度念じればよかろう。念じれば大きさが変えられるのだと、やってみてわかったではないか。情けなくて我のほうが泣きたくなるわ。・・・


「え?元に戻るの?」

びっくりして涙が止まった。鼻水を流しながら(鼻があればだけど)、いそいそと念じ始める。

うーーーーーーーん、うーーーーん、今のボクから見て、小型犬くらいのサイズ、サイズ、サイズ!


ポンッ

 

「キュピ!」

両手(脚?)をあげたキュッピが現れ、飛び跳ねた。

「ギュッビー!!」

アリンコの溜息が聞こえてきたけど、腹も立たなかった。とにかく嬉しくて、思わずキュッピを両前脚で抱えて泣いてしまった。キュピいたー、と言いながらオロンが寄ってきたけど、泣いているのはボクだけだ。


チキチキチキチキ!!

え!?

突然、ザザザザッと音がすると、チキチキという爆音を立てながら、頭の上を竹が飛んでいく。

薄黄色い竹の両脇は赤みがかっていて、竹からは枝が出ている。

枝は6本あるから、アレが脚なんだろう。

緑色の絵の具に白絵の具を溶いたような色の羽を、真っ直ぐに伸ばしていて、黄色から徐々に緑色になる後羽をしている。後羽は透けていて、陽の光で金色に輝いて見える。すごく、すごくキレイだ。「羽」ではなく「翅」という字を使うことがあるけど、確かに「翅」という漢字がピッタリだと思う。

「うわぁ・・。緑色の飛行機だ・・。」

涙の再会?だったのに、思わず泣くのを忘れて見惚れてしまった。

「チキチキチキータだねー。オロロン。」

「違うっピ。チキチキバッタだっピ。」

「チキチキチキバッタ?」

頭をバチコーンと勢いよくはたかれた。

「違うって言ってるっピ。チキチキバッタだっピ。」

「チキチキバッタ?ふぅん。キレイなバッタだね。顔が三角で折り紙みたいだったから、ボクとかショウリョウバッタの仲間なのかな。」

「?」

「?」

オロンもキュッピも首を捻っている。

ん?ボク変なコト言った?

「キュピ!チキチキバッタは、ショウリョウバッタのことだっピ。」

「え!そーなの!?へぇ〜、ショウリョウバッタって、あんなにキレイなのかぁ。しかも鳴くんだね。」

「オスー。オスが鳴くのー。オロロン。」

キュッピはオロンをバチコーンと勢いよくはたくと、

「鳴いてるわけじゃないっピ!前羽と後羽をぶつけて音を出してるっピ。」

と言った。

オロンは、痛いのーと言って目を引っ込めた。

キュッピって、オロンのこともはたくんだ。ちょっとびっくりした。

「アンターー!ドコ行ったのーーー!!」

凄まじい声が聞こえてきた。声というより轟音だ。

思わず耳を塞ごうとしたけど、耳は頭にないんだった。

「うるさい、うるさい、うるさーーい!!オナカに響くんだってばー!」

そう叫んでいると、オロンが片方の鼓膜を覆ってくれて、キュッピがもう片方の鼓膜を抑えてくれた。

「ボクは音を感じるコトはできるけど、鼓膜があるわけじゃないから平気だっピ。それより、さっきからオナカに響くって言ってるけど、鼓膜があるのはココだからオナカとはちょっと違うっピ。だから、オナカは心配しなくても大丈夫だっピ。」

?確かにキュッピが抑えてくれているのは、後ろ脚の付け根だ。コレってもしかしたら胸なのかなぁ?でも、オナカに響く感じがするんだよ、って言おうとしたけど、キュッピがボクを安心させようとしてくれたのがわかるから、言わないでおいた。

「ありがとう、キュッピ。オロン。」

ザザザザッと音がして、巨大な緑色の三角が見えたかと思うと、轟音と暴風を残して巨大な竹が頭の上を通過して行った。

「・・ジャンボジェットだ・・」

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