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これって夢だよね?

「ふぅ〜、おなか苦しい。食べ過ぎちゃった。」

宿題もせず、おなかをさすりながらベットにごろりと横になる。

今夜は春巻だった。

ママは月曜から金曜まで同じジャンルのご飯を作る。毎日の献立を考えるよりも、決まっていた方が楽らしい。

中華の週は(最近中華の週が多い)、月曜から焼売、餃子、麻婆豆腐、回鍋肉、炒飯。土曜と日曜は、ジャンルに関わらず麺類になることが多くて、ボクも焼きそばや焼きうどん、ラーメンなんかを作ったりするし、たまに2人で外食することもある。

今日は餃子の日だけど、春巻が特売だったらしい。

それにしても、さっきは危なかった。

ママにあんドーナツ食べたのがバレるとこだったから、焦っていつも以上に食べちゃった。


「りく〜。窓際で何か食べたでしょ。」

無言でご飯を食べていたママは、スッと目を細めると横目でボクを見ながらと低い声で言った。

ギクッ!

「えー?別に食べてないけど。何で?」

「なんかザラザラした。まさか砂糖じゃないわよね?」

ギクギクッ!

「まっさか〜。砂じゃないの?」

「そう思って掃除機で吸ったら落ちてたツブが白かったし、お掃除シートで拭いてもシートが黒くならなかった。」

するどい!普通なら「あら砂埃〜」とかいって掃除機をかけるかお掃除シートでキュキュッと終わらせるだけなのに。

うちの晩ご飯は8時頃だから、食事の2時間前までならフルーツのみ食べていい事になっている。だけど今日は帰りが遅くなったから、おなかが減って我慢できなくて、つい買い食いをしちゃった。大好きなあんドーナツには粒あんとこしあんの2種類があって、思わず両方買ってしまった。1個はすぐ食べて、もう1個は明日にしよう!しよう・・とは思ったんだけど、どうしても我慢できなくなって、もう1個のほうも食べちゃったんだよね。だけど、食べてる最中にママが帰ってきたもんだから、慌てて窓際までいって、外を見てるフリしながら口に詰め込んだんだ。

ママは料理が大の苦手なのに、それでもボクのためにと晩ご飯を作ってくれてるんだから、ご飯の前に買い食いなんかしてたら怒られるのも当然っちゃ当然だ。

「本当に食べてない?ルール違反も問題だけど、こぼしてるのが砂糖なんて最悪だからね!ベタつくし、アリが来るから絶っっ対やめてよ。」

「はいはい。」

フゥ〜とりあえず誤魔化せたみたいだ。

帰りが遅かった理由までバレたら、大目玉をくらうところだったからね!


人には得て不得手があるけど、ママは掃除や洗濯が好きなかわりに、料理はからっきし駄目だ。料理が得意でご飯を作る担当だったパパは、半年前から2年間の予定で単身赴任している。パパの単身赴任が決まった時、ママが一番落ち込んだのは、ご飯を作らなくちゃいけないということだった。その時はまだカレーしか作れなかったボクは、毎日カップ麺でもいいよ、と言ったけど、ママは育ち盛りのボクのために、苦手な料理を頑張ってくれている。ありがたや。


満腹は眠気を誘う。「腹の皮突っ張れば目の皮たるむ」とはよく言ったものだ。

うとうとしていると、少し暗くなった気がした。

・・あれ?・・ママが・・電気消した・・のか・・?

いやいや、宿題してないのに寝かせてくれるはずがない。それにそこまで暗くない。

・・あれ?・・なんだ?

ボーッとしながら薄目を開くと、部屋の中に巨大な顔をした宇宙人がいる。重くなった瞼が落ちてきて目を閉じそうになるけど、また薄く開いてみる。黒い顔に黒い目。植木バサミみたいなのが付いてるけど、あれは口?目と口の間にあるのは・・ツノ?あんなところにツノなんかないよな。・・触角???

ギチギチ音を出しながら顔を近づけてくる。

・・アリだ!!

突然氷水をかけられたみたいにブワッと毛穴が逆立って飛び起きた。

「我らの生きる道がどれほど厳しいか知るが良い」

頭の中で声がした。

見回しても何もいない。いつものボクの部屋だった。


あれアリだったよな?なんでアリの夢見たんだ?

宿題をしながら首を捻った。

数学の宿題がわからなすぎて集中できない。

他の教科だったら答えを調べることもできるけど、数学じゃお手上げだ。諦めて今日はもう寝ることにしよう。 

部屋を出て洗面所で歯を磨いていると、リビングから「宿題終わったのー?」とママの声が聞こえた。

少しのビールを飲みながらTVドラマをみたり本を読むのがママのリラックスタイムスタイルだ。

パパが単身赴任になる前は、パパとママで350mlの布袋ビール1本を半分こして楽しそうに飲んでいた。すぐに飲み終わっちゃうけど、それがいいんだと2人とも言っていた。パパがいない今は、ちょっと足りないけどと言いながら、125ml缶をママ1人で飲んでいる。20歳になったら一緒に飲もうと言われるけど、会社の飲み会からヘベレケで帰ってくるママを見るたびに、一緒に飲みたくないなぁと思う。内緒だけど。

リビングの方に顔を出して、歯ブラシをくわえたまま「ほわっは」と言うと、ちゃんと言えと言われたので、歯ブラシを口から出して洗面台にペッと吐き出してから「終わった」と言った。ママは「なら良し!」と言ったけど、本当は「諦めた」方の「終わった」なんだよね。


おやすみを言って部屋に入ると、電気を消そうとして躊躇った。

怖いから今夜は点けたまま寝ようかな。

でもまてよ、と思い返す。

もし電気が消えたらどうしよう。

さっきのアリを思い出して背筋がヒヤリとした。

恐怖チャンネルとかだと、突然チカチカッとしたりバチッという音とともに電気が消えて、幽霊が出てくるんだよな。幽霊じゃないけど、アリの宇宙人だって十分怖い。突然電気が消えて、あのアリが目の前にいたら。

やっぱり電気は消すことにした。

眠れないかもしれない。どうしよう。

そう思う間もなく眠りに落ちていた。

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