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生ゴミは片付けましょう

我が家のルールでは、食事の2時間前までならフルーツのみ食べていい事になっている。

今日は、学校から帰るとすぐ、宿題をするために部屋へ直行した。珍しいって?楽しみにしているお笑い番組を観るために決まってんじゃん。とはいえ、腹が減っては戦はできぬ。バナナを持って部屋へいった。

漢字を書きながら、

「覚える気がないから、こんなのただの作業だよな。」

と独り言を言う。面倒臭いことこのうえない。

うーん、もう1本・・

気づくと3本食べていた。

食べ過ぎちゃったな〜と思いながらバナナの皮をキッチンに捨てに行った。前に部屋のゴミ箱に捨てたらめちゃくちゃ怒られて、それ以来、キッチンの生ゴミ用ゴミ箱に捨てるようにしている。

蓋を開けると、昨日食べたバナナの皮の臭いと一緒に、何かが飛び出してきた。

コバエだ!うへぇ〜。


パパはコバエくらいなら手で潰してたけど、ボクにはとても考えられない。気持ち悪いじゃん!

ビニール袋を持ってきて、なんとか捕まえようとするけど全然捕まえられない。

止まった!いまだ!!・・チェッ逃げられた!

今度こそ!そりゃ!!

・・・おかしい。こんなに捕まえられないもの??

コバエは想像以上に素早い。しかも、一瞬で見失う。

よし!・・・あれ?どこ行った?

袋を持って右往左往しているうちに、すっかり見失ってしまった。

「バカめ。ショウジョウバエは視力が良いのだ。オマエのように鈍臭いヤツに捕まえられるわけはなかろう。」

でたな!アリンコめ!

「なんだよ、失礼だな!油断してただけだよ。すぐ捕まえられるに決まってるじゃん。」

「さて、どうかな?」

周りを見回すと、流し台の端に止まるコバエ・・もとい、ショウジョウバエを見つけた。

「よーし・・そおっと、そおっと・・あっ!」

あーあ、また逃げられちゃった。

「ほらみろ。」

むっかー!!

「なんだよ、あっち行けよ!!」

手の甲でパッパッと払い除けたら

「ナニをする!無礼者!」

「イテーッ!」

アリンコにガブリと噛まれた。本当にムカつくヤツだ。


「ただいま〜。」

ママが帰ってきた!

あ〜、ショウジョウバエに気を取られて炊飯器のセットを忘れちゃった!

「ごめん、まだご飯のセットしてないんだ。」

「あらあら。じゃあ、さっさと炊飯器セットしちゃおう。ママはお風呂に入るから、10分後にスピードモードでスイッチ入れといてね。」

「ショウジョウバエがいるんだけど、捕まえられないんだ。」

「ええ!?どこどこ?」

ママはキッチンに入ってくるなり、

「エイッ」

手でパチンッと退治してしまった。

ヒェェー!?

「さ!ご飯頼んだわよー。」

ボクは洗面台で虫がついたままの手を洗うママの背中を呆然と眺めていた。


今週は定食の週だから、今日はおでん定食だ。定食って言っても、ごはんとおでん、あとはいつものカットキャベツをシャクシャク食べている。ママが、キャベツを食べると胸が大きくなるんだと言っていた。ボクも大きくなっちゃったらどーしよう。

「ママは、どうして手でムシを退治できるの?」

「え?さっきのコバエのこと?」

うんうんと頷くボクに、

「ママも昔は手で叩くなんてムリだったわよ。まあ、蚊は潰してたけど。でもね・・」

と言ってパチンッと手で退治するような身振りをしながら続けた。

「りくが1歳くらいの時、おばあちゃん家に行って帰ってきたら、台所でコバエが大量発生してたの。朝は1匹くらいだったのに、夕方には本当にいっぱい飛んでて・・たぶん20匹以上いたと思う。ショックで声も出なかったのよ。はっ!と我に返って、とにかく退治しなくちゃ!って。パパを待ってる場合じゃないと思ったの。だって、りくに何かあったら大変だから。」

「に、20匹も!?なんで?どーして??」

「20匹以上よ。それがね、そこの巾木。」

そう言って、キッチンとダイニングの間の廊下にある、床と壁の境目をカバーする塩化ビニルを指差した。

え!?ここ!?ここが何なの!?

ボクはドキドキした。

「りくを速攻でベビーサークルに入れて、キッチンでビニール袋をぶん回しながら、どこから?どこから?って周囲を見てたの。だって、生ごみは捨てるまで密閉容器に入れてたし、今まで1〜2匹だったら飛んでたこともあったけど、大量発生したことなんてなかったもん。んで、そこの巾木に小さな隙間があって、そこからコバエが這い出してくるところを見つけたのよ。」

こんなところから這い出してくるなんて。ゾッとする。

「でね、恐る恐る巾木をペリッと捲ってみたら・・・すごい数のサナギと、サナギの殻と、半分サナギから出かかったコバエがいたの。」

想像しただけで、背中に水を浴びせられたような感覚がして、ブチブチと鳥肌がたった。

「マ、ママもうわかった・・。」

イヤイヤ、食事中にする話じゃないでしょ。想像以上の重たい展開に、ボクは訊いたことを後悔した。そして、こうなったママはもう止まらない。ああ、パパがこの場にいてくれたら。

「ママもうビックリしちゃって、ギャーッとか騒ぎながら、とりあえず巾木をバンバン叩いて、そこにいたサナギ達を潰したのよ。で、そのままだと気持ち悪いから、お尻拭きをウエットティッシュの代わりにして、全部拭き取ったの。そうしたら、全部どうでも良くなっちゃって、手で退治し始めた、というわけ。だって、袋を振り回しても、全然捕まえられないんだもん。」

「何が原因で発生しちゃったの?」

とボソリと訊いた。もうすっかり食べる気が失せてしまった。

「わかんない。りくがハイハイしたり床に座って遊んだりしてもいいように、お掃除は欠かさずしてたのよ。すぐに拭き掃除ができるように、クイックルワイパーをセットしたままにしてたし。ご飯を手掴みで食べたり放り投げたりして食べ散らかしてたけど、それだって、ちゃんとすぐに掃除してたのよ。だけど、隙間に入っちゃったのかなぁ。」


結局ご飯を少し残してしまった。

だって、大量のコバエの話なんて、想像しただけでムリムリムリ。

ウチでは体調不良以外でご飯を残すのは御法度だから、ママは具合が悪いのかと、しきりに訊いてきた。

イヤイヤ、アナタのせいですからね!とは言えず。お腹が痛いと言ってみたら、早く寝ろ!と言われてしまった。

お笑い番組を観たかったのにー!「録画しておくから大丈夫」って、明日学校でみんなが話すに決まってるじゃん!

言い訳を失敗した・・・。

落ち込みながらベットに入ったら、

「想像しても気持ち悪くないようにしてやるから、安心せい。」

というアリンコの声が聞こえた。

ああ、不吉過ぎる。  

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