榮中祭と鈍臭いボク
ぜェェ・・ぜェェ・・
キッツー・・声も・・出ない・・・
今日は、うちの学校の体育祭である榮中祭を前に、体力測定をしている。
残念なことに、ボクの運動神経はパパに似ていて、球技はそれなり(というかまだマシ)だけど、それ以外は、からっきしだ。
特に走る系はヒドイ。短・中・長距離、どれも惨憺たる有様だ。
榮中祭は、タイムの近い人同士で走る。ぶっちぎりで差がついたら子どもが傷つく、という配慮らしい。
昔は背の順で走ったんだけどね、とママが言っていた。
今、50m走のタイムを測ったけど、11.4秒だった。
ぜェェ・・ぜェェ・・今日・・は、11秒切れる・・と思ったのに・・
「おぉ〜息あがってんね〜。」
恵太がニヤニヤしながら肩を叩く。
恵太は、リレーの選手に選ばれるくらい短距離に強い。今日だって、適当に流しても(ボクにはそう見えた)、7.2秒だった。息だって全くあがってない。
「りく〜タイムどお?」
ソエジンが記録表を持ってやってきた。
彼の記録は、ボクとどっこいどっこいだ。たぶん、榮中祭で一緒に走る5人のうち、1人はソエジンだろう。
ただ、コイツはやたらと肩が強い。ソフトボール投げで、ボクの記録が13mのところ、26mを超えている。
はあぁ〜。平均以下が多いよぉ〜。
バスケとかサッカーだったら、まだマシなんだけどな。
「恵太は・・相変わらず・・速いな〜。」
というと、おまえはフォームが悪いんだと言われた。
「ドテン、ドテン、って感じで走ってるんだよ。カッコだけでもいいから、速い人の走りを真似してみれば?」オレとかさ、と言うと、じゃあなと言って颯爽と次の計測場所に行ってしまった。
「颯爽」なんて、恵太のくせに生意気だ。
ボクは溜息をつきながら、記録表の次の項目にある長座体前屈の計測に向かった。
「はぁぁ〜。疲れた〜。」
みんなで食堂に集まると、榮中祭の話になった。
「榮中祭、何やるか決まった?」
「まだこれから〜。前にやった内容も確認してる。」
実行委員をやっている恵太が言った。
榮中祭では、いくつか決まった種目以外の全てを、実行委員が決めることになっている。実行委員は、各クラスから2名が出ていて、ウチのクラスは恵太と堀米っていう女子だ。
絶対やるのは100m走。ボクは本当にイヤなんだけど、運動でしか目立たない生徒もいるし、体力がついたことを示すためにあるんだ、って恵太が言っていた。恵太は勉強が苦手だから、榮中祭は晴れ舞台なんだと気合いが入っている。
他には、クラスの結束を固めるための、学年ごとのクラス対抗、1〜3年生をクラスで縦割りして協力するリレー、そして、最後の競技は大玉送りだ。大玉送りは配点が高くて、ほぼ毎回大玉送りで勝敗が決まるから、リレーの選手は責任重大ってことにはならない。
これ以外の全ての種目は、1〜3年生をクラスで縦割りしてチームを決めてから、体力測定の結果を基に、実行委員が、生徒全員が参加できる競技を考えるんだ。
借り物競走、障害物競走になることが多いんだけど、障害物競走だって、例えば反復横跳びや垂直跳びなんかをいれたりするし、針金ハンガーを変形させたものをバスケのリングに見立てて、玉入れの玉を入れたりする。子ども騙しかもしれないけど、自分たちで考えた内容だから、みんな飽きずに参加しているし、結構盛り上がる。アットホームな運動会ってトコロだ。
「あ〜あ。昔はパン食い競争とかやってたみたいなんだけどな〜。絶対盛り上がるのに〜。」
とソエジンが言うと、衛生面が問題なのよ、と恵太がいった。
食べ物じゃなくて盛り上がるものね〜
うーん、と考えていると、ハルキにオマエはもう少し早く走ることを考えろと言われた。
「お前の走り方盛り上がるんだけどさ。」
とみんなケラケラ笑っていた。
今日はミネストローネの日だから、パンがいいかな?と思って食パンを買ってきた。
最近は、ボクも料理を覚えるようにしている。
玉ねぎとセロリををみじん切りカッターに入れてみじん切りにしたら、カットトマト缶と同じ量の水、ベーコン(たまに一口大に切ったウインナー)、ミックスベジタブルとコンソメを入れて煮るだけ。ここて砂糖を少し入れて味を整えるのがポイントなんだよな。
パパに教えてもらった簡単ミネストローネだ。
次の日は、残ったミネストローネに、チューブニンニクとナスとズッキーニ,ママの白ワインをほんの少し入れればラタトゥイユになる。白ワインは無かったら入れなくてもいいけど、ママはお酒が好きだから、切らしたことがない。
バナナを食べながら、動画をみてみる。「走る」「フォーム」「速くなる」などなど、調べるとどんどん出てくる。これいいかも!という動画を発見したけど、見終わるまでに18分もかかる。
ダイパだよね、と思って1.5倍速で見てみたけど、ところどころで聞き取れないところがある。一時停止と巻き戻しを繰り返してしまってなかなか先へ進まない。
あ〜あ、パッとしないなぁ。
その時!
電気が一瞬、暗くなったかと思うと、
「我らの生きる道がどれほど厳しいかわかったか。」
という声が頭に響いてきたかと思うと、突然、めのまえにアリが現れた!!




