夢か現実か
夢のはずが、なんで現実と被ってるんだろう。
夢で見た『アリさんグッバイ』を、実際にママが使おうとしてた、とかさ。まあ、夢では使われてたけど、現実では使われてなかった、っていう違いはある。
でも、缶ビールトラップは?
夢の中で、オロロンオロロン言ってる変なナメクジとボクの2匹で、缶ビールトラップに登った。ママが庭に仕掛けた缶ビールトラップにも、途中までだけど、2匹のナメクジが這った跡があった。ボクが「鳥が来た」って叫んだことに驚いたナメクジが途中で落っこちたんだとしたら、現実と一致する。
それに、カタツムリの寄生虫をネットで調べてみたら、ロイコクロリディウム(舌を噛みそう)っていうのが、夢で見た寄生虫そのものだった。アレにはビビった。
全部単なる偶然?
確かにベッドに入って寝たし、朝もママに起こされた。だから、夢のはずなのに、夢で見たことが現実と重なっているのが解せぬ。全くもって解せぬ。
これがまだ、人に関わることだったら、例えば恵太と遊んだとか、そーいうことだったら、100歩譲って夢遊病(100歩譲って、だからね!)ってことも言えなくもなくもない、かもしれない。
でもさー、ムシじゃん。なんでなん?
まさか、実はボクはムシで、人間の夢を見ているとか?いやいや、そんなわけないでしょ!
何日も考えているけど、さっぱりわからない。
そこで、はたと気づいた。
そーか!ボクは超能力に目覚めたんだ!ボクが見ているのは予知夢なのかもしれない。
そう考えれば、すっかり辻褄が合う。
すごくない?訓練すれば、テストの問題だって予知できちゃうかもしれない!
「シャアッ」と声をあげたら授業中だった。
「何やってんだよ』
「スマホでも見てたんじゃね。」
授業が終わると恵太とソエジン寄ってきた。
「そんなことしてる訳ないだろ。」
と言うと、恵太が
「そーだよな。授業中にスマホなんて見てたら、没収のうえ、またトミゴンの説教部屋行きだよな。」
と言ってウハハと笑った。
「やらしいことでも考えてたんじゃないの〜。」
牛乳瓶の底みたいなメガネを掛けたソエジンこと副島がグフグフ言っている。お年頃だからね。
「うるさい、ビン底メガネ。それよりさ、なんか超能力に目覚めたみたいなんだよ。」
2人とも「は?」と言う顔をしている。
聞いて驚け!とばかりに、これまでの出来事と、ボクの見解を話した。
「な!すごくない?」
ドヤァという顔をしているボクに
「そんなのたまたまに決まってんじゃん。」
「お前、幸せなヤツだなぁ。」
と半ば呆れ顔をして、なーんだ、それより早く音楽室行こうぜ、と連れて行かれてしまった。
うーん。やっぱり偶然なのかなぁ。
アブラムシの蜜の味だって、ナメクジが葉っぱを食べる感触だって、鮮明に覚えてるのになぁ。
昆虫プチ情報?も、忘れてたことを夢で思い出しただけだろう、って言われたし。
でも、そう言われればそうかもしれないなぁ。
今日は雨だから、合羽を着て自転車置き場に向かう。
自転車置き場の横の壁にカタツムリがいた。
そうか。殻をつくるためにコンクリート食べなくちゃいけないんだもんね。
この情報を、ボクはいつ知ったんだろうか。夢ではナメクジが教えてくれたんだよな。
・・・アイツ面白かったな。
家に帰るとすぐにお風呂に入った。合羽を着てたとはいえ身体が冷えている。ゆっくり湯船に浸かって、予知ができればテスト勉強をしなくても楽勝なのになぁ、などと邪なことを考えながらスマホで動画を視聴する。
ママがいたら、お風呂で動画をみるなんて(ましてや宿題もしていないし)怒られちゃうけど、雨で濡れたんだから仕方ない。うんうん、と都合の良い言い訳をしつつ検索をしているけど、おすすめにアリとナメクジと寄生虫の動画ばかり出てくる。
あ〜。気になって何度も何度も検索してたからだ。
ゲーム実況とかお笑いやドラマなんかを何度も検索して、履歴の上書きをした。
そこそこ検索したところで疲れてしまい、お風呂から出ることにした。
リビングで動画を見ながらりんごを丸かじりしていると、ソファに蜘蛛がいた。そっと指を近づけると、ぴょんぴょん飛び跳ねて逃げる。跳ねる様子が面白くて、行くてを阻むようにしてぴょんぴょん跳ね回らせて遊んだ。
「ただいまー。」
ヤバッ!ママが帰ってきちゃった。ゆっくりお風呂入ってたから、何にもしてない!
ご飯を炊く準備だけは、ボクがすることが多い。お米を水に浸しておかないと、炊きあがりが固いからだ。何度か失敗してからは、早く帰った方が、炊飯器のセットをしている。
「おかえりー。濡れたでしょ。玉ねぎ切っとくから、ゆっくりお風呂入れば。」
今日は、ボクが「サバンナ定食」と呼んでいるサバ缶の日だから、すぐにご飯の準備ができちゃう。早くお風呂に入らせて、お米をセットしなくちゃ!長くお風呂に入っててもらえば、ある程度お米を浸水させることができるはずだ。
「もうご飯炊いてある?」
ビビクンッ
「あ、あの、まだご飯のセットが・・」
「じゃあ今日はパンにしよう!良いもの買ったの。」
なーんだ。拍子抜けした。動画の続きを見よう。
蜘蛛はもういなくなっていた。




