夢、ふたたび
ゴォォォ サァァ シャァァ ピチョン
ここどこだ?
・・・なんかデジャヴ。
聞き覚えがある音がする。前回より音は小さいけど。またあの夢?続き?
と思ったけど、真っ暗だ。
真っ暗なんだけど、少しの光と匂いを感じる。
特に匂い!暗いのに、何がどこにあるかハッキリとわかる。わかり過ぎるくらいだ。だって、匂いで形のイメージができるくらいなんだもん。
強い匂いがだんだん弱くなって突然消える。この長さまでの物体があるってことだ。上を見る(感じる?)と、やっぱり匂いはだんだん弱くなって消える。この高さまでの物体があるってことだ。こうしていくと、平面に関しては何となくわかる。
・・前はアリだったけど、今回はアリじゃない。目の見え方も匂いの感じ方も違う。でもやっぱり虫なのかなぁ。
少し歩いてみた・・つもりだけど・・
ん?こりゃなんだ?
進もうとしても、後ろに引っ張られる感触。
足元が何かにくっついて、うまく進めない感じ。
手・・手!?
えーっ!?なになに!?今回は手がない!!
「ど・・う・・な・・っ・・て・・」
!? !?
何でしゃべれないの!?
違う。正確には「普通に話せない」だ。
口がカパカパする。なんで!?嫌だ!こんな夢!
「キミー、どーしたのー?オロロン」
何やら離れたところから声がする。
身体の変化に気を取られていて、近づく気配(匂い?)に気づかなかった。
「う・・ま・・く・・」
あーっ!イライラする!!
「うまくしゃべれない」って言いたいだけなのに!
「あー。うまくしゃべれないのかー。乾いちゃったのかなー?」
そう言うと、何か水分のあるものを食べるといいよ、と遠くから教えてくれた。
水分のあるものってナニよ!と思ったけど、声の主はなかなか近づいてこない。それでも、懐かしい匂いが少しずつ濃くなってきてはいる。
「すぐ横のー、葉っぱー。オロロン」
首を伸ばすとボスッと何かにあたった。たぶんコレが葉っぱだ。微かに水がなる流れる音と・・これは呼吸音だな。真っ暗だから、光合成はしていないはずだ。
これを食べろってことかな?どうやって食べるんだ?
口を開けてみた。だけど、食べるどころか、くわえることもできない。
えぇぇ。食べられないよぉ。
すごく悲しくなって、夢なのに泣いてしまった。
「泣かないでー。葉っぱー。葉っぱー。オロロン」
だーかーらー、食べられないんだよー!
声にならない声を出したとき、「ザマアミロ」と誰かの声が聞こえた。
誰!?なんでそんなひどいこと言うんだよ!
と叫びたかったけど声が出ない。キョロキョロしたり匂いをクンクン嗅いでも気配がない。
気のせいかなぁ。幻聴?
いくら夢でもこんなのは嫌だ!何とか水分だけでも摂りたい。もしかしたら、葉っぱに水がついてるかもしれない。とりあえず舐めてみよう。
ジョリジョリジョリジョリ
!?何この感じ??
口の中に、水分をたくさん含んだ細かい繊維質のナニかが入ってくる。口の渇きが潤っていくのがわかった。
もう一度舐めてみる。
ジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリジョリ
何これ!?すっげーーー!!
泣くのも忘れて目をひん剥いた、つもりが目が伸びた。
え?目が伸びた?
「よかったー。もう大丈夫ー。オロロン」
ズズズズ・・ようやくそばまできた声の主はナメクジだった。
ああぁぁぁ〜 ナメクジのほうか〜
今回もガッカリした。手が無かったから、ナニかの幼虫(美しいチョウチョとか)かな〜と思ったけど、目が伸びた瞬間、よもやカタツムリ?と悟った。
仕方ない。カタツムリでもいいや。殻に閉じこもって目が覚めるのを待てばいいだけだから、むしろラッキーかもしれない。一条の光を見出した・・とこだった。
でもナメクジとは。テンションはダダ下がり。
「どーかしたのー?オロ?」
ウゲッ!近い、近い!
とっさに離れようと思ったけど、ボクもゆっくりとしか動けない。
・・・うわぁ。
近くで見ても、やっぱり表面はヌルヌルしている。だけど、あんなに気持ち悪いと思っていたのに、近くで見ると複雑でキレイなのが意外だった。
「もうしゃべれるようになったでしょー。もしかして乾いたのは初めてだったのー?」
初めても何も、ナメクジになったのが初めてだ。
「やっぱりボクはナメクジなの?」
本当にナメクジになっちゃったのか、思い切って訊いてみた。どうせ夢だから、怖がる必要なんてないもん。
オロロン?と言いながら、ナメクジは首を傾げた。
「ナメクジだよー。ワタシ達は同じナメクジー。みんなはフタスジナメクジって呼ぶけどねー。オロロン」
フタスジナメクジ?ナメクジにも種類があるのか。
「自分のことがわからないんだ。教えてよ。」
このナメクジは大人しそうだし、この際だからいろいろ教えてもらうことにした。
「ナメクジはたくさんの種類がいるのー。ワタシ達は「ナメクジ」っていう種類なんだよー。でもねー、紛らわしいからって「フタスジナメクジ」って呼ばれてるのー。本当の名前は「ナメクジ」なのにー。」
ん?難しいな。犬で例えると、プードル、チワワ、イヌ、シーズーみたいな感じってことか。確かに、犬の中に「イヌ」っていう犬種がいたら紛らわしい。
「何食べるの?やっぱり紫陽花が好きなの?」
「うーん、紫陽花の葉っぱはちょっと苦いんだー。ガクとか新芽とかは美味しいけど、苦い時もあるー。」
そういえば、ママが紫陽花には毒があるって言ってたな。ナメクジにも効くのかな?でも苦いってことは、食べることもあるのか。
「さっき葉っぱを舐めてみたんだけど、食べ方はアレで合ってる?歯はないの?」
ナメクジはさらに近づくと、ペロリと舌を出した。
「ベロにねー、歯がいっぱい生えてるのー。だから、舐めるだけで食べられるんだよー。」
見ると、確かにヤスリみたいになっている。
「本当だ!これみんな歯なのか。」
「そー。10,000本よりもっといっぱいなんだよー。」
「え!?そんなに!?なんでわかったの?」
「数えたのー。オロロン」
ナメクジはすごいでしょ!と胸を張った。
「でもねー、そこまで数えたら眠くなっちゃって、明日数えればいいやって寝ちゃったのー。そしたらどこまで数えたかわかんなくなっちゃったのー。いつもわかんなくなっちゃうのー。オロー」
「?同じこと何回もしてるの?」
ナメクジはウンウンと頷いた。
・・・バカなのかも。




