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過去編:堺翔吾5話「手を汚すのは俺だけで良い」

「ぐすっ、ぐすっ」

詩織は泣きながら帰った。

これからどうしよう。

詩織が犯されている画像を太郎に撮られてしまったのだから。

 詩織は悩んだ。


 両親や兄に、今回の事を話すべきなのか?話しても良いのだが、その時の家族の反応や、太郎に画像をネット公開されるのも嫌だ。


 それとも、先生に相談しようか?


 それとも、太郎を児童ポルノ罪で訴えようか?


 しかし、今回の敵は太郎だけではないのだ。詩織が信頼し、愛していた利人も共犯者だった。

 それが詩織にとっては、最もショックな事であった。


 ◇


 詩織は帰って風呂に入る。


 今日太郎たちに汚された部分を洗っても──どんなにボディーソープで洗っても──、その汚れは詩織に染み付いているような気がして、落ち着かない。湯船に浸かっても、太郎たちの手の感触が消える事は無かった。


 風呂からあがって歯磨きをする。しかし、口に太郎の"モノ"を咥えていたのが気になって気分が悪くなり、トイレで1回嘔吐した。気を取り直して歯磨きをして嗽をするが、太郎が汚した部分はやはり取れていないような気がする。


 ──最悪だ。


 色々やったが、体に染み付いている太郎の汚れは落ちた気がしない。心は太郎を忘れようとしても、体に染み付いている太郎の汚れがそれをさせない。


 ──本当に気分が悪い。


 ベッドに寝転んで、好きなKーPOPを聞くが、気分は晴れない。


 このまま太郎の傀儡となって、奉仕活動をするのか。はたまた、太郎だけではなく、その仲間たちの奉仕までさせられるんじゃないか。


 そんな不安が、詩織をどんどん蝕んでいく。


 やっと寝付けたと思っても、目が覚める。太郎の夢を見るからだ。


 ──本当に心地が悪い。


 詩織は地獄に足を突っ込んでしまったのだ。


 それから詩織は強制的に太郎の彼女という事になり、太郎やその取り巻きの男たちの性欲処理係として、幾度も奉仕活動を行った。


 詩織は既に感情が抜け落ちていて、ただ奉仕、奉仕、奉仕。そんな感じでただひたすら奉仕活動を行う毎日。


 親に心配された時は「大丈夫よ」とだけ言い、部屋に引き篭もる様になった。


 ◇


 詩織の小さな口から出た驚きの体験談は、想像の100倍恐ろしい話だった。


 やっぱり花本太郎は花本太郎だった。アイツに救いようのある所なんて全く無いわ。やっぱり、アイツは完全なる悪だ。アイツに対して慈悲の心などは、微塵も無い。


 取り敢えず、まずは詩織ちゃんにお礼だ。

 太郎の断罪に、かなり有力な情報を沢山くれた。しかも、自分の思い出したくもないであろう辛い思い出まで話してくれたのだから。


「詩織ちゃん、必ず僕たちが太郎に詩織ちゃんが受けた苦しみを与える──」

「あの、翔吾さん。やっぱり太郎に苦しみを与えるなら、私自身が与えたいです。私が彼から受けた苦しみは、私でないと分かりません」

 

 僕が太郎の断罪宣言をしようとしたところを、詩織が遮る。

 その瞬間、全員が口を噤んだ。


 そして、詩織が続ける。


「決して、皆さんが私を理解していないとか、そういう訳では無いのですが、やっぱり自分で受けた苦しみは、自分で制裁を下すべき──」


 詩織がそう話すのを、兄である翔馬が遮る。


「おい、詩織!お前少し落ち着けよ!!」


 皆んなはまさか翔馬が喋るとは思っていなかったから、それぞれがそれぞれの驚き方で驚いている。


「俺はやっぱり兄として、お前の手を汚して欲しくないんだよ!!」


 一人称が「僕」から「俺」になっている所を見ると、かなり必死なのが伝わる。


「だから、手を汚すのは俺だけで良いから!!」

「ちょっとお兄ちゃん──」


 必死に説得しようとする翔馬を、詩織が止めるが、その直後、感動的なシーンがやって来る。


「大丈夫だ、詩織。お前の苦しみは俺が1番分かってるから。何せ、俺はお前の兄ちゃんだからな!!」

「お、おにぃちゃん……!!」


 翔馬と詩織が抱き合う。

 まさにドラマのような、感動的なシーンだ。もう本当に感動のあまり泣きそうだ。

"リア充撲滅委員会"はこのドラマで更に一致団結し、この元凶である太郎を倒すべく動き出したのだった。


もう絶対に許さないんだからッ!

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