過去編:堺翔吾2話「悪夢に立ち向かう者」
今日も一日が始まる。
それと同時に、"リア充撲滅委員会"が動き出す。
僕は一番乗りで教室に入る。
そして、昨日の会議通り、太郎が来るのを待つ。
…
……
………
「太郎は朝7:50にはやって来る。そこを委員長が絡まれに行く。で、そこで正の出番だ」
「うん。昨日の『いじめアンケート』に、太郎君の事について書いたから、僕が先生に『今日も太郎君が翔吾君をいじめてます!!』と言う」
「よし。そして次は、委員長の反撃だな」
「ああ。僕が先生に太郎の罪状を訴える。僕は太郎と違って先生には信用されていると思っている」
「そこで太郎に赤っ恥をかかせる!!」
それが昨日、僕たちが話した計画だ。
もう、ちらほらと人が登校して来ている。当然、教室内には正もいる。
正はドアの前で別の友達と話している。すぐに先生を呼びに行ける様にだ。
「うっす!よ、変態君!」
ここで今日のメインイベンターの登場。
「……」
「おいおい、俺様が挨拶してやってんのに、無視かぁ?俺様も舐められたもんだな!!」
そう言って、太郎は僕の腹に拳をのめり込ませる。
僕は足の力が抜け、地面に膝を着く。
「ガハハッ!!ざまぁ見やがれ!俺様を舐めるとこうなるんだ!!」
相変わらずのクソッタレだな。それは何があろうといつも変わらない。
そこで、僕は太郎に強い決意と敵意のある目線を向ける。
「……なんだぁ、その目は?まぁだ懲りてねぇなァッ!!」
太郎がもう1発殴ろうとした拳を、僕は避ける。
「あぁん?何避けてんだよ!!」
またまた太郎の拳を避ける。
「なっ、何故当たらん!?」
そう。それがプラン1にもある計画だ。
─────
昨日の会議で、重要な事が話された。
それは、太郎の拳の軌道が一定な事に気づいたという事だ。
大体だが、相手の顔、或いは腹を目掛ける拳は、かなりのスピードだが、そこまでの軌道は一定。
それさえ分かれば、どうという事はない。
当たらなければどうという事はないのだよ!!
そう言わんばかりに、僕は1発目以外の拳を避けている。更に、太郎が怒っているからか、拳の軌道が単調だ。
拳を避ける訓練だけを積んだ僕は、こんな拳を避ける事は簡単だった。
いやぁ、努力した甲斐があったよ。
「クソッ、何なんだ、コイツ!!」
…
……
………
僕は、太郎について聞き込み調査をしていた。
「最近、花本太郎さんはここに来てますか?」
「あぁ、あのクソガキか。アイツなら、最近女が出来て、その女と遊び歩いている。だから、すっかり衰えて太っちまってな。今度の大会のスタメンからも外したさ」
そう。太郎が通っているボクシング教室に聞き込み調査をしたら、太郎はここ3ヶ月程ボクシングをサボっているらしいのだ。だから、太郎の拳が圧倒的に鈍っているのだ。
しかも、最近の太郎は女遊びしかしておらず、お菓子を食べたり食事をした後の運動もしていないようで、見るからに太って来ている。
「クソッ、クソがァァアア──」
「太郎!!やめろッ!!」
弱い生徒の英雄、滝本浜和先生だ。
「──げっ、滝本!?」
「何だ、自分の担任を呼び捨てにして!!」
「──チッ、いやっ、滝本先生!!聞いて下さいよぉ。この翔吾が僕の腕を引っ掻いたんですよ!!なので、僕は正当防衛をしていた迄です!!」
気づかなかったが、太郎の腕には確かに傷がある。
当然、僕が付けた傷ではない。
「なので、仕掛けて来たのはアイツなんです!!」
太郎もテンパって、喧嘩をしていた事を認めてしまっている。
「ふむ。でもな、太郎。あの翔吾の目を見るからに、悪いのはお前だと物語っているぞ?」
「チッ──いや、それは誤解です!!無実な僕はアイツに『ふざけんなよ!!』と怒鳴っただけです!!決して喧嘩などしてません!!」
お、ここで太郎が自分の言葉の矛盾に気づかず、自分の首を絞めたな。
「さっき、『正当防衛』という言葉が聞こえたが?」
「──ち、違いますよ!!あくまで、言葉で正当防衛をした迄です!!」
「ただ、お前には前科があるからな……とても信じられんな。しかも、手を出したなら、尚更だ」
「チッ、マジでアイツが悪いんです!!」
「いや、もうお前の言う事は信じられん!太郎、職員室に来い!!」
「そ、そんなぁ!!」
よし、プラン1成功だ。
ちゃんと滝本先生は僕に親指を立てて見せた。これは、滝本先生独特の「後は任せろ」の合図だった。
この事の始末は滝本先生に任せよう。
さてと。プラン1が大成功(僕は殴られたけど)だったから、安心してプラン2に移ろうじゃないか!
花本太郎、お前が苦しめてきた数々の人たちの苦しみを味わうがいい!!