表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/7

7.超視


 綺道が“スーパービジョン”の存在を知ったのは、在日アメリカ空軍の情報機関員との雑談の中でだった。


 ドローンが主戦力化するとともに、操縦士やセンサー要員として女性の採用を増やしているという。


 その理由の一つが、「スーパービジョン」だった。

 関係するタンパク質を製造する遺伝子がX染色体にしかないため、女性のみに起きる突然変異なのだ。


「光に波長があるのは知ってるよね?

 ざっくり言うと、波長が長いのは赤、短いのは青。真ん中は緑に見える。可視光線てやつだ。

 波長が長すぎると赤外線、短すぎると紫外線。人間には見えない」


 美鈴はうなずいた。


「人間は、赤錐体、緑錐体、青錐体という三つのセンサーを目の中、網膜に持ってる。可視光線で波長が長いの、中くらい、短いのにそれぞれ対応してる。

 それぞれ分解レベル百の感度がある。三つのセンサーが合わさると、百かけ百かけ百。つまり百万色を見分けられる」


「すごいけど、それが普通なのね?」


「うん。

 ところが、“スーパービジョン”は、四種類の視細胞を持ってる。

 つまり、百の四乗。一億の分解能で光を識別できる。

 キャッチできる波長の範囲も広いみたいだ」


 脳の処理能力の問題は別にあるが、光学センサーとしての機能に限って言えば、常人の百倍の情報収集能力がある。

 だから、軍事的にも利用価値が高いということだった。


「ちなみに、“スーパービジョン”は遺伝の関係で女性にしか現れない。

 だから、半グレの男どもには想定外だったろうね」


 警視庁組織犯罪対策部の刑事によれば、今回襲撃してきた半グレ集団は抗争を抱えていた。

 何かの手違いで、彩希は組織の裏切り者のオンナだと勘違いされたようだ。




 綺道はミルクティーの最後の一口を飲んで顔を上げると、美鈴があくびをするところだった。

 綺道も大あくびをした。


「俺も年だ。

 引き上げるよ。

 スズちゃんは、とりあえず絵麻の部屋を使ってくれ」


「ありがとう。絵麻さんにはママが連絡して、大丈夫ですって。

 シャワーも借りるわね」


 美鈴は満足気にウインクした。

「よろしくねっ!」


 外では、朝のヒバリがせわしなく鳴き始めた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ