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「転生〜未来への約束」  作者: 蒼い月光
第1章:闇の中の絆
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第1話「作戦」

「うーん……何て名前やったかいなー……」

健人は耳を傾けている。

「えーっと、最初に結婚したのは原西さんって人やったと思う。その後は大山さんって人と一緒に住んでたけど、籍は入れてたんやったかな……?わからんわ!なんせ私5回以上結婚してるからね!」

相談に来た老人は高らかに笑った。

「5回以上ですか?失礼ですけど、何でそんなに多いんですか?」

健人は気を遣いながらも問いかけた。

「いや、借金があったからよ。借金取りに追われるでしょ、その度にね名字を変えて引っ越すの。そうしたら居場所が特定できなくなるでしょ?」

老人はサッパリと答えた。


「成瀬さん、お疲れ様です。あのおばあちゃん話長かったですね。何の相談だったんですか?」

持っていた書類を棚に直しながら、林が聞いてきた。

「なんか自分が亡くなったときに誰が葬儀とかしてくれるんだろう?って。たくさん結婚してるけど、関係が続いてる家族がいないみたい。旦那も兄弟も子供も絶縁なんだって」

健人はズレたマスクを直しながら答えた。

「ビックリした。5回以上結婚してて、もう相手の名前もうろ覚えだった。結婚とか家族とか……重みは人によって違うってつくづく思うよ……」


ここはとある市役所の福祉相談窓口だ。健人はここで働いて4年目になる。ここには日々悩みを抱えた市民がやって来ては相談を持ちかけてくる。健人の仕事はその相談を親身になって聞き、できる限りの解決策を提案することだ。業務はそれだけでは無く、相談に来た人の様子を見るために街に繰り出すことも多い。困ったことが有れば駆け付ける。いわゆる福祉の何でも屋である。

「でも、成瀬さんって今日みたいなややこしい相談が来ても冷静だからすごいですよね。僕とか態度に出てしまうから……」

林はいつものようににこやかな笑顔で言った。

「いや、俺も怒ったり悲しんだりするよ?まあ、心からそうしてるかは別だけど。」

いつからだろう。

この仕事をしてから素直に感情を表すことが少なくなった。

常に相手の相談内容や生き方に怒りや悲しみ……色々な感情を抱えているが、相手の反応を考えて振る舞っている。

怒ったり、諭したり……相手に効果的な反応はするが、それが心からのものではなく段々と「作戦」になっている。それに気づく度に寂しい気持ちになっていた。

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