整理整頓
タズは自分の部屋の隅で立ち尽くしていた。突然やってきた双子の妹達は号泣謝罪仲直り怒りのコンボをしたのち、なぜか自分の部屋を片付けだしたのだ。
エルが床に散らばった紙を集め仕分けしながら指示を出し、アンはエルの指示を受け大量の本を軽々と持ち上げて綺麗に本棚に片付けていく。自分の部屋のはずなのに居場所がなくおろおろとしながらも妹達に話しかける。
「あ、あの・・・僕も手伝う・・・というか、僕の部屋だから自分でするよ?」
「兄様、適材適所ですわ。」
エルがびしっと指を指して言う。
「そうそう、エルは人を使うのがとても上手ですからね。」
アンはクスクスと笑いながらまた何冊も本を持ち上げている。
「えぇ、アンみたいな脳筋とは違いますから。」
嫌味を言いながらも手は止めない双子にタズはコテンと首をかしげる。
「え?アンは僕よりもすっごく運動ができるよね、毎日早朝から剣の稽古を欠かさずにしているよね、すごいと思うよ。それにエルは社交を頑張っているよね、その為に淑女としてのマナーを勉強しているし、それもやっぱりすごい事だと思うよ。」
真っ直ぐに褒めてくる兄に双子達はわなわなと震えている。
「「私達の兄様はやっぱり天使でしたわ・・・。」」
「もう、本当のこと言っただけなのになんでそうなるの?」
頬を膨らませながらタズが抗議しても双子はニコニコとしながら天使・・・と時折呟きながらサクサクと片づけをしていったのだった。
そして夕刻に近づくころには部屋は見違えるように綺麗になっていた。散らばった紙はまとめられて束ねられ、本は全て種類別に分けられて本棚にきちんと収まっていた。開け放たれた窓からは新鮮な空気が入り埃ぽかった部屋は今では立派な書斎に見える。
「ここが、僕の部屋・・・見違えるようだ。」
「兄様のために張り切りました」
アンが胸を張って得意げに言う。
「兄様が喜んでくれると嬉しいです。」
エルが続けて言うとタズは二人の頭に手を伸ばし撫でる。
「もちろん嬉しいよ、二人とも本当にありがとう。部屋が綺麗になったことはもちろん、二人とまたこんなに仲良くできることが嬉しいんだ。」
「「兄様・・・」」
今日何度目だろうか三人はまたぎゅっと抱きしめあったのだった。
そしてこの日を皮切りに三人の目まぐるしい日々が始まった。
「ねぇエル、あたし兄様は性格が良すぎるから心配ですわ。」
「ええ、わたし達がしっかりと守っていかないといけませんね、アン。」
「あと、もう少し体力もつけてもらって、兄様は勉学に全振りすぎですから。」
「たしかにあの本の内容と書類の数々、子供の知識量ではありませんでしたが、腹の探り合いの貴族社会・・・もっとマナーを身につけていただかないといけませんね。」
「それとあのモサい格好ももっとこう・・・」
「それを言うならモサい髪型も綺麗にして・・・」
双子がこっそりとモサ兄の改造計画を相談していることタズは知る由もないのだった。