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兄と和解

ひとしきり三人で笑った後、アンがおずおずと兄を見ながら切り出す。

「兄様・・・あたしが運動できない兄様をこき下ろしたから、お部屋に閉じこもってしまったのですよね・・・ごめんなさい」

「それを言ったら、わたしがお茶会でもじもじしている兄様をあざ笑ったから兄様はお顔を隠すようになられて・・・ごめんなさい。でもひどい事をした私たちが言うのも何ですが・・・よく許す気になりましたわね。」

エルが続けて言うとタズは少し困ったように笑う。

「確かに二人にされたこと言われた事は今でもつらいよ、謝ってきた二人の声を聞いても何を今さらとも思った。」

タズの言葉に双子姉妹は顔を伏せる。そんな二人の頭をタズは優しく撫でる。

「でもね、二人が嫌いにならないでって言ったじゃないか、確かに傷ついてたし少しは怒っていたけれども僕が二人の事を嫌いになっているなんて思っってしまってたんだね、それで慌てて否定しようと部屋を出てきたんだ。」

「「なんで・・・」」

撫でられながらも不安そうに双子令嬢は兄を見上げるとタズは優しく微笑んで二人を見る。

「二人が生まれてきた時を今でも覚えている、小っちゃくてなんだかいい匂いがして、小さい手で僕の指を掴んできて、僕はこの子達を絶対に守ると決めたんだ。こんなに誰かを愛しいと感じたのは初めてだったんだよ。大丈夫、何があってもアンとエルを絶対に嫌いになんてならないよ。」

「・・・え?あたしの兄様が天使なんですけど?」

「いいえ、これはもう神ですわ!国を挙げて敬うべきですわ。」

そこから双子令嬢による兄様賛美はしばらく続き、兄は顔を真っ赤にしてただおろおろとしていたのだった。

「もう、二人ともそれくらいにして恥ずかしすぎて困る・・・」

「「ええ?!でも兄様はどのくらいすごいかをまだ語り切れていないのですが・・・」」

「ああ、もうっ、そうだ!!二人に見せたいものがあるんだ。僕の部屋においで。」

なかば強引に二人の会話を遮りタズは自分の部屋のドアを開けて部屋に入り、続けて二人を招く。

「ようこそ僕のお城に!!」

双子令嬢は兄が自慢げに紹介する部屋に入ると言葉を失った。

「「兄様・・・これは・・・」」

「僕の宝物だよ。」

部屋にはところ狭しと本が置かれていたのだ。ニコニコと満面の笑みで部屋を紹介する兄にアンがきっぱりと言い放つ。

「兄様・・・これはないですわ。」

「え?!」

「確かにこれはなしですわね・・・」

「えぇ?!」

続けて言うエルにタズは驚く。さっきの謝罪はいったい何だったのか・・・。

「ああ、兄様誤解なさらないで、この本たちは素晴らしいですわ。あたしなんか表紙を見ても訳が分からないもの。とても難しい本をお読みなりますのね、さすが兄様!!」

机の上に積まれた一冊を手の取りながら言うアンに続いてエルが部屋を見渡しながら続く。

「しかもこの量をお一人で…素晴らしいの一言に尽きますわ。」

また褒められてタズは笑みがこぼれる・・・が、それもつかの間、双子令嬢が声をそろえて叫ぶ。

「「でも兄様・・・部屋がモサ・・・いえ、汚すぎますわ!!」」

「え・・・。」

「なんで窓どころかカーテンすら閉まったままなのですか?かなりお部屋が埃っぽいですわ!最後に窓を開けたのはいつですか!!」

「えーと・・・」

アンの勢いにタズは気おされて言いよどむ。

「確かに兄様の蔵書と勤勉なところは素晴らしいですわ。で、す、が、この床に積まれた本と散らばる紙はなんですか!!えぇ、えぇ確かにこれは兄様の言う通り、本の城が建っていますわね。ところで兄様は本棚の使い方をご存じ?」

嫌味を混ぜながら散らばる紙を拾うエルはおろおろとする兄をちらっと見る。

「あのね、僕もなんとかしなきゃなぁとは思ってたんだよ?でも本を読むのが忙しくてつい・・・」

焦りながら言い訳をする兄に双子令嬢がにっこりとほほ笑む。

「「兄様のお部屋、掃除させていただきます!!」」

「えぇー・・・」

力ない兄の声が部屋に静かに響いた。

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