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最後の聖女  作者: 樋口 真生
第一章 その聖女、力技で巡礼を終える者なり
9/11

聖女達

騎士さん達のお陰でとても有意義な時間だった。

剣についての理解が深まっているのを感じる。


軽快な足取りで大聖堂へ帰ると神官長が慌てながら近付いてきた。


「護衛の騎士がいないようでしたが、彼はどこへ?」


ん?そう言えば朝に別れたきりだ。


「朝に歩くのが余りにも遅かったので、先に訓練所へ行っていますねと言って別れたきり見ていませんね。

きっと日々の勤務と訓練で疲れていたのではないでしょうか?」


「そんな筈はありません!聖女様の護衛が彼の務めなのですから!そう言われたとしても着いて行くのが普通です!

これは明らかな職務怠慢なので騎士団へ抗議してきます。


貴方も貴方です!護衛を付けずに出歩くなど言語道断!

聖女になった以上、どんな輩に目を付けられてもおかしくないのです。警戒心をもってください。


今日はもう外へ出ないようお願いしますね。」


めっちゃキレて去っていった。……なんかごめんね。


もう用事はないし、外へ出るつもりはない。

ずっと気になっていた聖女に関しての資料を読みに、図書室へ向かう。


そこで歴代の聖女達に関する本を見つけた。


聖女達は皆神聖力を持ち、女神の祝福によって身体のどこかに星と花の紋様が浮かびあがるというのが共通している。

私の手の甲にもあるやつだ。


それ以外は特に共通点はなく、様々な人達が選ばれた様だ。


そして…


ほとんどの聖女が災厄を封じ込める時の戦いで命を落としている。


封印の代償は大きい。


そう書いてあった。


災厄の正体ははっきりとした記述がないが、最果ての国の守り神が堕ちたものとざっくり書いてある。

最果ての国とは魔族の国のことだろう。災厄に精神を犯されるのと同時に強靭さと凶暴さが増し、魔王となって蹂躙を始める。

元々ある大きな山脈と、2番目の聖女との戦いでできた渓谷によって他国との交流はほとんど無い。国に入るのも出るのも大変すぎなんだそうだ。

それに災厄の手下と呼ばれている魔族は他の種族から現在進行形で忌み嫌われているらしい。


なんか根本的な部分は彼等のせいじゃないと思うんだけど…。だとしても他からすれば彼等に攻め入られたという事実は変わらないのだろう。

災厄が封印されている時の彼等はたぶん普通に正気なんじゃ…?

交流が無いため当然普段の彼等を知ることができる記述なく、なんだかモヤモヤする。


そして無事帰ってきた聖女が、実は2人いる。


最も野心家だったとされる聖女と最も優しかったとされている聖女だ。


最も優しかったという聖女はこの国出身の聖女で、最後に災厄が現れた200年前の時の聖女なんだとか。

つまり歴史上では先代の聖女。

ちなみに野心家だったとされる聖女は先々代だ。


とりあえず私の大先輩達ってことね。


この2人が助かっているってことは近代にいくに連れて聖女の犠牲以外の解決方法が生み出されたのだろうか?


それにこの国から聖女が現れたのは私で2人目ってことだよね。しかも連続して。


災厄を封印しても生き残った2人の共通点は自分ではないものが犠牲になっているということだった。


野心家の聖女はなんとドラゴンの心臓を3個使ったそうだ。

ドラゴンは絶滅したといわれている程最近では目撃されていないが、昔は結構いたんだろうか。

結果彼女の封印が1番長く耐え、700年もの平穏をもたらした。


そして優しかったとされる聖女の時は彼女の騎士だけが最後の戦いから帰らなかったと書いてある。……おそらくその騎士が犠牲になったのだろう。


この国から選ばれ、尚且つ1つ前の聖女だったからか彼女に関しての記述は多かった。


子爵家の長女であった彼女は心優しい性格で皆から愛されており、治癒魔法が得意だったらしい。そんな彼女が聖女に選ばれた時、周囲の人々は酷く絶望したのだとか。彼女が生贄に選ばれたようなものだったからだ。何人もの人が止めに入ったが心優しい聖女はきちんと自分の役目を果たすと言って旅に出た。


彼女やその仲間達も初めは聖女だけが犠牲になる事に疑問を持ち、生き残ったとされている野心家の聖女の国へと向かった。彼女がどのように封印を施したのか詳しく知り、打開策を得ようとしたらしい。

そこで沢山の生命力が宿っているものならばそれを原動力とした封印が施せるのではないかという結論に至ったのだ。現に野心家の聖女はドラゴンの心臓でそれをやり遂げている。しかしその様に膨大なエネルギーを持ったものは限られていた。この頃にはもうほとんどドラゴンは絶滅したと言われていたし、大体のドラゴンは知性があり喋れる個体も中にはいたという。優しい聖女はそういうもの達から命を奪うことを許さなかった。


だからと言って魔物など災厄の息がかかり瘴気に触れていたものは封印の威力が格段に落ちるためとてもじゃないが代わりにはならなかった。

魔物の様に襲いかかってくるものならば心優しい聖女でも代わりにできるんじゃないかという当時の魔術師の提案で、嫌々ながら簡易的な封印を試したそうだ。

そこで判明したらしい。災厄の力である瘴気は聖女の力で浄化できはするがやはり抵抗力があり、封印の術式を阻害してこようとするのだとか。


災厄の息がかかったものも駄目となると本当に代わりとなるものを探すのが厳しくなってくる。

そうしている間にも災厄は広がり続けた。もう時間がないと思った聖女は自分が犠牲になることを覚悟した。


魔王を打ち倒し、溢れる災厄へ蓋をするため。




封印の魔法陣を展開するだけでも膨大な神聖力と魔力が必要だった。


何とか展開させ、その魔法の中心へ行くと封印が施されるらしい。要はコアになってしまう?

まぁ、人またはそれ同等のエネルギーを持つものが封印の鍵みいなものになって初めて完成。ということになるらしい。


彼女が意を決して中心へ行こうとすると誰かが腕を後ろへ引きよろめいてしまう。

その隙に魔法陣の中心へ腕を引いた人物が入ってしまったのだ。


そう、彼女の騎士だ。


彼女は慌てて近寄るがもう封印は発動しようとしていた。

綺麗な粒子となって騎士の身体が魔法陣へ吸い込まれていく。

騎士は最後、泣きじゃくる彼女の額にキスをして消えてしまった。


彼女達はお互い口にすることは無かったが、愛し合っていたそうだ。



……まって、めっちゃ悲しいじゃん。

なにこの悲恋。辛い。



魔法陣の展開を補う為、そして無事に災厄の元へたどり着く為にに神は聖女以外にも加護を与えたのではないか。

と下に憶測が書いてある。

冷静にまとめやがって雰囲気ぶち壊しじゃねえか。



私にもいつかできるのだろか。…仲間。




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