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最後の聖女  作者: 樋口 真生
第一章 その聖女、力技で巡礼を終える者なり
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聖女らしくないが聖女

最近現れたとかいう聖女はとにかく聖女らしくない小娘だった。


小柄で赤銅色の髪、やけに目が琥珀色に輝いていたのを覚えてる。戦いのたの字も知らなそうな小娘が騎士も付けずにやって来たかと思えば護身術を学ぶ手筈だったらしく、寄りにもよって団長のとこの生意気な坊ちゃんが先生ときたもんだ。


あの坊ちゃんは確かにそこそこ実力があるがまだ人に教えるなんて器じゃねぇ。というかご執心の令嬢以外には滅法冷たいと言われてる坊ちゃんが何故先生をやってるんだかねぇ。


周りの奴らも気になるのかチラチラと様子を窺っている。

すると木刀を握っことが無いであろう小娘にいきなりそれを投げて渡すと何も教えずに構えた。

そんで小娘が見様見真似で構えると


「では打ち込むので対処してみろ。」


って言いやがった。

基本も教えずに何が先生だ。戦闘経験のない女子相手に恐らくあいつは木刀を振るう。何故そこまでするのかわからない。


……いや、もしかしたら例のご令嬢を想ってのことだったりするのか?

騎士団の中にも何人かあのご令嬢を崇拝みてぇなことしてる奴がいるが、そいつらがその令嬢こそが聖女に相応しいって言っていたのを見たことがある。


だからって怪我させるのは良くないだろ!

俺含め心配になった騎士達が止めに入ろうと駆け寄るが、あいつは躊躇いなく木刀を振り下ろした。




…しかし小娘がその木刀を軽々と防いでみせたもんだから驚いたぜ。


え?坊ちゃんちゃんと手加減してるのか?


いや、本人も驚いてるっぽい。力を入れてるのがわかる程あいつの木刀はギリギリと音立てて震えている。


対する小娘の木刀は震え一つなく完璧に攻撃を防ぎきっていた。


何だ?聖女の力か何かなのか?


坊ちゃんは木刀を押し返されて、怒ったのか今度は首を目掛けて振り下ろす。

今度こそまずいと思い駆け寄ろうとしたらあっさり坊ちゃんの木刀は弾かれ地面に突き刺さった。

突き刺さるってやべぇな。実はあの小娘剣術ができたのか?


周りがどうしたもんかと静まり返ってるうちに坊ちゃんは理不尽なメニューを言い残して去るし、隊長には目をつけられるしであの小娘…本当に聖女なのか?


それから理不尽メニューの1つである訓練所内100周をすげースピードで終わらせた。

途中例の令嬢信者達が足を掛けて転ばそうとしてたが見事に避けて走っていたし、どこ吹く風って感じだな。


それを何となーく眺めていると、午後も来ていいかと尋ねられ、律儀だなーと思いながらいいーんじゃねと言っといた。

話してみても普通の小娘なんだがなぁ…。どっからあのパワーが湧いてくるんだか。


午後からは素振りをやりだしたがこれがまたすげぇ。

また俺に話し掛けて来たかと思ったら素振りはこう構えて振り下ろすって感じでいいのかって聞いてきて、大体合ってるからそれでいいーんじゃねって言うと素振りを始めた。


始めたんだが…尋常じゃないくらい風を切る音がするし振り下ろした先の地面から砂埃が舞う。


いや、舞っているのは地面が少しずつ抉れているからなのだ。

だからそんな小せぇ身体からどうしてそんなパワーでるんだ!


騎士達午後の訓練は2人ペアになって打ち合いをしたり、その他のやりたい訓練をできる割と自由な時間だからか、聖女にちらほらと話しかける騎士達が増えてきた。


その力は身体強化の魔法か?

身体強化ならばコツを教えて欲しい。

聖女は大変か?

虐められていないか?

構えはもう少しこうした方がいい。

いや、小柄だから違う構えもありだ。


などなどお前らは小娘の親戚かって程お節介な質問攻めをする奴等や、真面目に教える親切な奴も現れた。


更には一緒に素振りをやりだす始末。


一方小娘の方は律儀に全部答えていた。


今日は身体強化はしていない。

私で良ければ教えることはできる。

聖女の活動については今のところ苦労はしていない。

虐められていない。みんな親切だ。

ご指摘ありがとうございます。

違う構えや、剣術にも流派があると聞いたのでそういうのは是非教えて欲しい。


いや、身体強化じゃなかったら何なんだそのパワーは。


て言うか、あの坊ちゃん多少なりともあんたのこと虐めようとしていたっていうか、ちょっと痛い目みせて思い知らせてやろうみたいな魂胆が見え見えの顔してたぜ?


それにしても訓練を真面目にやっているようで実は上手くサボりつつやっている騎士達が一緒に汗かきながら素振りしたり、剣術についてあーだこーだ言っているのは誰の影響なんだか。


理不尽な扱い受けてんのに気づきもせず真面目にランニングや素振りしちゃう奴の影響かねぇ。

あと、その体力や怪力に興味があるんだろうなぁ。俺もちょっと気になるし…。


普段から気さくな3番隊の連中や変人揃いの2番隊の連中は言わずもがなその輪の中にいるが、珍しいことにお堅い性格が多い1番隊の奴らもチラホラといる。


1番隊の奴らは殆どが信者なのでそうじゃない奴等みてぇだな。



素振り100回はもうとっくに終わり、騎士達と身体強化や剣術について熱く語り合いながら実際にやってみている。

身体強化って確かに案外繊細な魔力操作が必要だから最初は難しいんだよなぁ。


さっきまでは見た目に騙されていたがこの小娘は間違いなく強者だ。

よく見れば手にちゃんと剣だこみたいなのがある。でも剣だことも少し違う気がした。


「こむす…コホンッ…嬢ちゃん、本当は剣とは別に何か違う武器扱ってたりしたのか?」


流石に本人に向かって小娘とは言えない。


それから聖女っぽく無い聖女ってのも…まぁありだよなって思う。


「はい、メイスを使っています。なので打撃系の知識はありますが剣術の知識はさっぱりです。」


「なるほどなぁメイスか。昔聖職者が使ってたとか言うしな。」


「聖職者は刃物を使ってはいけなかったみたいですもんね。」


まさかのメイスみたいにゴツい武器を使ってきたとは…。

得意な武器があるなら剣術を無理に学ぶ必要はないと思うんだがなぁ。


「えー聖女ちゃんメイス使ってるの意外。重くないの?大丈夫?」


3番隊の軽いノリの奴が聞く。

お前はさっきから嬢ちゃんの何を見てたんだ。少なくともあの坊ちゃんよりは力あるぞ。


「最近のメイスは結構軽量化がされているので普通に持てますよ。」


「へぇ。そうなの?

そもそも身体強化無しでラシードに勝ったことも驚きなんだけど。」


2番隊のシスコンって有名な奴がジロジロと舐め回すように視線を送り、嬢ちゃんに話しかける。

まぁそれは皆気になるところだが、お前はその視線をやめろ。


「ここは訓練所ですが王城の近くですし、不用意に魔法を使用するのはよくないと思って…。


なので先生との訓練の時にそういった類のものは…その、一応使っていません。恐らくまぐれか先生の体調が悪かったのだと思いますよ。」



「ふーん、そういうもんかね〜。色々気になるから隅々まで確かめたいけど、そうすると妹が悲しむ気がするから止めとくよ。」


黙れシスコン。気持ち悪いことを言うな。

いくら身体強化してないと言っても、確かに信じ難い光景だった。


「俺でいいなら少し立ち合いながら教えるよ。女の子だからって手加減しないからなー!」


3番隊の軽いノリの奴はノリノリみたいだ。



それから皆して素振り以外の事を教えだす。

要は立ち回りだ。




「ったぁー!そうそう!今みたいに切り込まれた時はその返し方でもいいと思う。てか一体どうなってんだか知らないけど、聖女ちゃん怪力だね!」


「そうなんですよね。少しばかり怪力でして…。私も詳しくは知らないんですが。」


「あははっ、自分のことなのに〜。」


ノリノリ野郎も指導しながら流石に驚いている様子だ。


とにかく、見た目に反して怪力というのは本当にらしい。



そんなこんなで聖女様はすぐに騎士達と打ち解けて、明日もまた来ると言い残して去っていった。


あと2日も護身術を習うと言っていたが、必要あるか?






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