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最後の聖女  作者: 樋口 真生
第一章 その聖女、力技で巡礼を終える者なり
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護身術を学ぼう

続いて魔力も計る事に。少ないだろうとは言われたけど、一応土と水の魔法は結構使える。風と火はそこそこって感じ。でも戦いではこういう元素属性系の魔法をあまり使ったことが無いので量は正直検討もつかない。


魔力測定用の水晶へ手をかざし、魔力を注いでいく。茶色、青色、緑色、赤色の煙が水晶の中に溜まりだした。魔力は砂ではなく煙の様なものが水晶を満たしていく事で量がわかるようだ。


「…なんと!?」


「聖女様の魔力量があんなにも!」


「属性もこんなに使えるとは……。」


またしても神官達が騒ぎだした。


煙は既に水晶の半分を超えている。


「これは…魔法の授業を手配しておいてよかったですね。」


神官長が冷や汗を流しながら呟いた。

魔法は扱えるように神父様が一通り教えてくれたが、今回王都で教えて貰うことの中には新たに学ぶことが沢山あるかもしれないので楽しみだ。


そして煙が水晶の3分の2過ぎたところで魔力が無くなりそうな感じがしたので手を離した。


神官長に一般の人より大分多い方だと教えてもらった。神聖力が多いと魔力は少ないと言ってたけど結構多くて驚いた。何故だろう。

昔神父様が両方扱うのが難しいから片方が乏しくなる。お前さんは素質があるから両方鍛えなさい。わしみたいになれるぞいって言われたのと関係しているのか?

理由はどうあれ多いという事は色々出来ることが増えるという事だし前向きに捉えて鍛錬していかないとね。



無事測定も終わり、その日の午後は神父様や町でお世話になった人達に手紙を書き、残った時間は大聖堂の中の探索をした。

明日はいよいよ護身術を学ぶので楽しみだ。久々に身体を動かせる。





次の日になるとさっそく護身術を教わるために王国騎士団の訓練所に向かう。

王城と大聖堂のちょうど間に位置しているので簡単に来れた。動きやすい格好を用意してもらったし、護身術を学ぶというのは非常に興味がある。

そういえば護衛を1人つけてもらったのだがめちゃくちゃ後ろを歩いていてダルそうにしていた。とりあえず軽快な足取りの私に鎧が重くて着いて来れないようだったので置いてきた。

ちゃんとゆっくりで大丈夫ですよー。先に行きますね。と言ったが終始無言で睨み付けられたので気まづくて…。会った時から一言も喋らないので元々そういう人なんだろう。


訓練所にいた騎士さんに挨拶して護身術を習う者ですって説明したら、隅っこの方で待ってるように言われた。準備運動でもしておくか。

なんでも今日から3日間護身術を指南してくれるのは、将来騎士団長最有力候補の方なんだそうだ。王族の方々や謁見の時にいたご令嬢さんが話し合って選んでくれたそうで、他の授業の先生もその話し合いで決めてくれたらしい。時期騎士団長候補って言われてるんだからきっと物凄く強いのだろう。ふと故郷のゆるくていつもフワッとした笑顔を浮かべている騎士達を思い出して少し笑顔がこぼれた。場所が違えば騎士団の雰囲気というのは全然違うものだなと思う。

王都の騎士達は真面目そうな人達が多そうで、私がいた領地を守る騎士達はみんな穏やかな空気だった。


「おいそこの女。」


騎士達を観察していたら声をかけられた。この場に女ってたぶん私だけだから声をかけられたのは私でいいんだよね?

声のした方を向くと、短髪で眼光が鋭い青年がズカズカと近いてきた。


「君が聖女か。」


「はい。」


「ほう…本当にナタリアを差し置いて聖女だと思っているようだ。悪いがいきなり現れた君を俺は認めない。」


「…はぁ、なるほど。」


何だこの人こわっ。この人もナタリア様のことを聖女だと思っているってことは本当に彼女も聖女なのかもしれない。いや、彼の信じる者が聖女みたいな?


「大変遺憾だが俺が君に護身術を教えるラシード・サムセレムだ。」


「アンリと申します。指南のほどよろしくお願い致します。」


頭を下げると早速木刀を投げて渡された。


「構えろ。その位はできるだろう?」


突然の無茶ぶり。剣については習った事がないのでどの構えが正しいのかわからない。いや、むしろ常識で私が知らない方がおかしいのか?


「すみません。どのように構えればよいのでしょう?」


正直に聞いてみるしかない。


「そんなことも知らないのか。ナタリアは当然のようにできていたぞ。」


やはり知らないのが非常識ということだろうか。それにナタリア様はご令嬢だが剣もできるようだ。とても凄い方なんだなぁ。

とりあえず、ラシード様が構えたのでそれを真似する。


「では打ち込むので対処してみろ。」


まずは実践形式のようだ。どう対処したかで色々アドバイスをくれるのだろうか。


何故か周りで遠巻きに私達を見ていた騎士達数名がざわめきだした。慌てて近付いてくる人もいたので、時期騎士団長候補の彼の動きは騎士達も興味津々という訳だ。


そうしてる間に間合いを詰め、彼の振りかぶった木刀が目の前へ迫っていた。


それをまずは受け止める。


木刀がカンっとぶつかり合うと彼は驚いた様な顔をした。ここは受け止めるべきではなく、いなす、または避けるのが正解だったか?普段はそんなに考えず戦っていたのでいい経験だ。

しかし大分手加減をしてくれているみたいで、攻撃が軽い。

少し木刀を押し返すと、彼はキッと鋭い目付きになり今度は斜め上から首を狙って打ち込んできた。


カンッ


ドスッ


それを思い切り弾き返してみると、木刀は彼の手を離れ後方に突き刺ささった。


ざわめいていた辺りが静まり返る。

私の対応が悪すぎたのだろうか。確かに少々荒っぽい感じにはなってしまったが。


「剣術は不慣れなのでご指摘があれば何でも言ってください。」


無言で固まっている先生に指導を願う。


「…っ、は、話にならん!

お前は訓練所内を100周!それから素振り100回だ!」


しかしいきなり怒鳴りだして訓練所を後にする先生。

私にはまだ実践は早かったという事だろう。基礎体力作り、剣の太刀筋や筋力アップができる素振り。まずは基本メニューをやれということか。


一応訓練所内で基本メニューをやるつもりなので、今ここを使っている騎士達の代表か誰かに了承を得るべきだろう。そう思い辺りを見渡していると


パチパチパチッ


拍手をしながら糸目の騎士が近付いてきた。


「いやぁーお見事!素晴らしいパリィだったね。君は噂の聖女様かな?」


「はい、この度聖女となりましたアンリと申します。

申し訳ありませんがお見事とはどういう意味でしょうか?お世辞でしたらいりません。現に先生からは基本メニューを言い渡されるほどの実力なので。」


思わず姿勢を正し答える。



この人…かなり強い。


「いやいや、お世辞じゃなくそのままの意味だよアンリちゃん。そういえば自己紹介がまだたったね。俺は王国騎士団2番隊隊長のイアン・マッドリーニだよ。よろしくね。

そんなことより基本メニューとやらをやるつもりなの?」


「はい。

それに伴い訓練所内のランニングと隅でいいので素振りをする許可が欲しいのですが。」


「ははっ、あいつの言うことなんか真面目に聞かなくてもいいと思うんだけどなぁー。

でもまぁ許可するよ。訓練所内のどこでも好きに使いな。


本当は基本メニューなんかしないで今すぐ俺と打ち合って欲しいところだけど我慢するよ。

実はさっき遠征から帰ってきたばかりでね。団長に報告しなきゃいけないんだ。


じゃあ、またね!」


「ありがとうございます。あと、遠征お疲れ様でした。」


打ち合いしたいというのは光栄なことだし、血湧き肉躍りそうになるが私も我慢する。

隙の無い歩き方、立ち方、オーラ全てがあの人が強者だということを伝えていた。一戦交えてみたいと皆思うだろう。


しかし今は基本メニューを言い渡されているので早速ランニングだ。




王都の騎士団は1番隊から3番隊まであり、隊の中でさらに5つの分隊がある。

1番隊は主に近衛兵や王城を守っている。

2番隊は王都の外へ行き魔物を討伐したり辺りを巡回しているそうだ。

そして3番隊が王都の町を巡回したり、犯罪者を取り締まったりして治安を維持してくれている。


先程のイアン隊長は2番隊で遠征と言っていたので、王都から少し離れ魔物の討伐へ行っていたのだろう。


この訓練所では各隊からローテーションで1つ分隊を寄越して訓練しているみたい。

この様に普段から訓練を取り入れる事で剣の腕も鈍らないという訳だ。




王都の騎士の事やさっきの先生との実践訓練を思い返しながら訓練所内をランニングする。

内壁に沿ってできるだけ早い速度をキープして走り、100周を終える頃には午後を過ぎてしまっていた。昼食を食べ損ねてしまった。

大聖堂に戻らず神官達も心配しているだろうか。1度昼食ついでに大聖堂に戻り、また戻って来て素振りをしよう。


昼食を取りに行っているため訓練所にいる騎士達は少なかったが近くにいた無精髭を生やした騎士に午後もここを使っていいかと聞くと。


「んあ?いいーんじゃねぇか?」


と言っていたので大聖堂へダッシュで戻った。

先生も昼食を挟むくらいは許してくれるだろう。




というかあの無精髭を生やした騎士はどこか地元の騎士に似ていて話しかけやすかったなぁ…。










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