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最後の聖女  作者: 樋口 真生
第一章 その聖女、力技で巡礼を終える者なり
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決闘

図書館で聖女についての資料を読み漁っていると、神官長がやって来た。怒りは収まっただろうか。


「騎士団へ抗議し、護衛を変えて頂ける事になりました。

今日騎士達と交流なさっていた様ですのでその中から誰か護衛に推薦したい方はいますか?」


「…私が選んじゃっていいのですか?」


「もちろんです。」


んー。なんだか申し訳ない感じがするけど。

思い付くとすればやはり話しかけやすかったおっちゃんだ。


「あのー強いて言うなら。2番隊の無精髭の人なんですけど…。

名前を聞き忘れたので何ていう方なのか知らないのです。

気だるげな感じでしたが、色々と聞いたら親切に答えてくれたのを覚えています。」


寧ろそれが地元騎士っぽくてよかったなぁ。


(聞いた感じはあまり良い人に思えないが聖女様はその人の何がよかったのだろう…。)

「わかりました。一応その方について騎士団に掛け合ってみようと思います。」


「騎士団の方達は皆お忙しいと思いますので無理にとは言いませんからね。

基本私は誰でもいいので。」


無理強いはしたくないからね。


「とりあえず、もう一度騎士団へ行ってまいります。

今日はもう遅いのでそろそろ部屋に戻ってお休みになられてください。護身術も習い始めてお疲れでしょう。」


「お気遣いありがとうございます。

おやすみなさい。神官長。」


「はい、おやすみなさい。」


神官長は一見気難しそうに見えるけどとってもいい人だ。




翌日朝に私を迎えに来た騎士さんはおっちゃんだった。


「聖女様、彼はあんななりですが2番隊で戦闘経験も豊富な方なんだそうです。2番隊隊長のお墨付きなので大丈夫だとは思いますが、護衛としての任務を怠る様でしたら私に報告してください。」


昨日のことがあるので神官長は慎重になっているようだ。

大丈夫だと思うけどなぁ。



「えーと…、そんじゃいきますか嬢ちゃん。」


「はい、よろしくお願いします。」


頬をポリポリ掻きながら歩き出したおっちゃんに着いて行く。


「あの、護衛を引き受けてもらってありがとうございます。もし本来の任務に戻りたかったら遠慮なく仰ってくださいね。」


横に並んでからきちんと顔を見てお礼を言った。護衛は本来1番隊が担当するような任務らしいのだが、それを引き受けてくれた。2番隊として魔物から王都などを守ることに誇りをもっていたら私の護衛は苦痛かもしれないし。


「んあ?全然いーぜ。それにお礼なんていらねぇーさ。

むしろ任務に行かなくていいし、訓練はサボれるしでこっちがお礼言いたいくらいだよ。


あ、今のは隊長とか神官長には言うなよ?

まぁ、そのぶん嬢ちゃんのことしっかり護衛するから安心してくれ。」


ニヒルな笑みを浮かべながらゆるい返答をしてきた。

このくらい気の抜けた感じの方が私も気を使わなくて済むので助かる。


「ふふっ、よろしくお願いします。」


釣られて私も少し笑みがこぼれた。


(嬢ちゃんの笑うとこ今初めて見たなぁ。)


「そういえば自己紹介がまだでしたよね。

私はアンリと申します。」


「俺はジェイ。好きに呼んでくれていいぜ。」




それからぽつりぽつりと会話しながら歩いているとあっという間に訓練所まで着いていた。

そこで訓練しているのは昨日とは違う面々だ。


まずは隅の方で大人しく準備運動をする。

するとしばらくして先生がやって来た。


「木刀を持て。昨日の様にやるぞ。」


到着早々木刀を投げて寄こす。昨日の様にというのは実践形式のことだろう。私の立ち回りを見てから今日のメニューを決めるのかな。

チラリとジェイさんの方を確認したら頷いていた。昨日皆から教わったのを見せてやれということだろう。


「よろしくお願いします。」


構えてから挨拶をすると先生はすぐに切り込んできた。





……結論から言うと一瞬で勝負はついた。

先生の攻撃をいなした時に彼の木刀はまたしても手から離れ地面に突き刺さった。そして流れるように胴を狙いそこを打った。


先生は手加減してわざと基本的な動きで切り込んできてくれたのだろう。

昨日よりは滑らかに、かつほぼ一撃で決めることができたんではないだろうか?


先生を見ると脇腹を押さえ苦しげに膝をついていたので慌てて駆け寄る。


「大丈夫ですか先生!すみません。練習なのに攻撃が力みすぎたようですね。」


「近寄るな卑怯者!」


近付いた瞬間先生は勢いよく立ち上がり叫んだ。


卑怯者ってどゆこと?


「貴様どんな魔法を使ったか知らんが人をおちょくりやがって!」


え?いや魔法1つも使っていませんよ。


「あの別につかっ…」

「黙れ!神聖な騎士団の訓練所でその様な真似がゆるされると思うのか!」

「おいおいっ。坊ちゃん落ち着けっ…」

「一介の騎士が口を挟むな!こいつに毒されている者の話は聞かない。


そこの偽聖女。騎士団の訓練所を荒らした罪を見逃すことは出来ない!どうやらその性根から叩き直さなければならん様だ。俺の誇りにかけて決闘を申し込む!!


明日のこの時間にここへ来い!

俺は本気でいく。貴様もその小細工無しで本気でこい。その本気もどこまで通用するか分からんがな。」


先生は一気にまくし立て、フンスフンスと怒りながら去っていった。


え…、もしかして先生ってちょっとおかしな感じの人なのか?

いきなり根拠の無い事で怒り出したのでびっくりしてしまった。

驚きのあまりジェイさんと2人してポカンと固まってしまったじゃないか。


「嬢ちゃん…。衝動的に殴りそうになったが我慢した俺を褒めてくれ。」


「…ジェイさんすごく偉いです。」


「サンキュ。嬢ちゃんもあんなん相手しててよく耐えたな。偉いぞ。」


「ありがとうございます。」


ジェイさんとはなんとなく気が合う感じがした。


気を取り直して、元々午前中は護身術訓練なので自主的に訓練することにする。

その間ジェイさんが相手をしてくれたりなど、何だかんだ世話を焼いてくれた。やっぱりいい人だ。

チラホラと話しかけてくれる騎士さんはいたけど、さっきのやり取りを見ていたからか昨日の様に人が集まることはなかった。



そして午後になったので訓練を切り上げて帰路に着く。



「嬢ちゃん、あいつも本気でこいって言ってたし明日は得意な武器で相手していいんじゃないか。」


「メイスでですか?せっかく護身術として剣を学んだのにそれでいいんでしょうか?」


「あっちも本気でくるのにこっちが本気じゃなかったら失礼だろ?

あいつもきっと愛用武器でくるはずだからその思いに答えてやらなきゃな。」


「確かにそうですね。じゃあメイスでいきます。」


「その意気だせ嬢ちゃん。それに護身術として剣を習ったからって無理に使う必要はねぇんだ。既に打撃武器の心得はあるんだろ?巡礼に出た後もメイス使っていくみたいだしそれでいいじゃねぇか。」

(嬢ちゃんは気づいてねぇみてーだが、普通にあの坊ちゃんより強いだろ。明日はボコボコにしてやれ。)


「わかりました。私もメイスが好きですし、剣術を習ったのはいい経験でしたがそれは糧としてこれからもメイスを使っていこうと思います。

まぁいつどこでメイス以外の武器を使って敵を倒さなければならない状況に陥るかわからないので習っといて損はなかったですよ本当。」


「…真面目だねぇ〜嬢ちゃんは。」




そして次の日……


先生に言われた通り訓練所へ来た。背中には相棒のメイスを装備している。やはりメイスを背負っていると落ち着くな。


ちなみに神官長にこの話はいっていないのか何も言われなかった…。知ったらめちゃめちゃ怒るだろうな…。心労を多くして申し訳ないとは思うけど、騎士さんにとって決闘はものすごく大事なものだと聞いた。だから全力で挑もうと思うのだ。ごめんね。



待機中、ジェイさんは興味深そうに私のメイスを見ていた。


「嬢ちゃん質のいい武器を使ってるな。作った職人は相当腕が良いんだろ。」


「はい。町で1番の鍛冶師です。」


「ほぉ〜。俺にもいつか紹介してほしいもんだぜ。」


「是非いらしてください。あと地酒のビールがめちゃくちゃ美味いんですよ。ジェイさんがお酒好きならオススメの居酒屋も紹介します。」


「お、そりゃありがてえ。

嬢ちゃんの地元っつうとセザンタール領だったよな?

あそこのビールはうめぇんだよ!最高じゃねぇか。」


本当にこれから決闘するのかという雰囲気で会話していると、城の方向から何やら大人数でぞろぞろとやって来た。


先生以外にもミカエルと言われていた王子とナタリア様、鎧を着たすごくガタイのいい人、そして2番隊の隊長であるイアンさんというメンバーだ。


鎧を着たガタイのいい人が私の目の前まで来て腕を組む。


「騎士団長のアルバート・サムセレムだ。

今回の決闘で審判をさせてもらう。


騎士である愚息が決闘の宣言をしてしまった以上取り下げは難しい、決闘中危ないと思ったらすぐ降参してくれ。

すぐ感情的になるあいつには注意しとく。聖女様も大聖堂ではゆるされているかもしれんが、一応城の敷地でもある騎士団の訓練所でむやみやたらに魔法を使うのはお控え下さい。」


騎士団長というお偉いさんただったとは…。

そして先生のお父様なんだそうだ。何やら勘違いしているようだし。何故私がそんなにも魔法を使っていると思うのだろうか。


「はじまめして騎士団長様。

どのように伝わっているかわかりませんが、私は訓練所で魔法を使ってないです。今日はその勘違いを正せればと思います。本当は言葉で穏便に済ませたかったのですが。


正々堂々と決闘に望むのでよろしくお願いします。」


とりあえずこちらの主張は言っとかないと。



まず決闘する前に不正が無いようにするため、お互いの装備を確かめられる。


先生は上半身に前側だけだけ覆える鎧をまとうだけの軽装。そして武器はサムセレム家に伝わるという立派な剣を持っていた。


対する私は無装備に。メイスだけだった。私の方が軽装だったわ。

公平にするために何か装備することを進められたので、騎士団から上半身の前側だけ覆える鎧を借りた。1番小さいサイズと言えど私にとってはやはり大きい。

まぁとりあえずこれで先生と大体同じ条件になったので良しとしよう。


次に、契約状という一種の魔法契約書にサインする。

内容は3つ。

1つ目はお互いの出した条件をよほどのことがない限り変えてはならない。

今回は魔法を使ったか使ってないかみたいことかな。先生は性根を叩き直すとかも言ってたけど…。

2つ目は怪我の責任は自己責任。

3つ目は魔法の使用を禁ずる。

というものだ。

その時の決闘内容で変わってくるらしい。

魔法契約書は特殊で、これにサインすると内容が守られるように魔法が発動する。

今回で言うと2つ目までは物理的なことじゃないのでわかりにくいが、3つ目の魔法は決闘が終わるまで本当に使えなくなるらしい。

そして更に不正が無いように魔法の発動を阻害するブレスレットをお互い着用する。


すごい厳重だ。魔法使うの絶対に許さないマンがいるな。

それだけ決闘というのは神聖なものなのだろう。





そしていよいよ決闘が始まろうとしていた。



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