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プロローグ〜その路の途中で 1
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「行ってらっしゃい、お姉ちゃん」
果たして届いたのかわからないくらいの大歓声に包まれたわたしの言葉と想いは、なんとか伝わったらしい。わたしのお姉ちゃんーー小豆野路が、拳を高々に上げたからだ。そのまま大歓声の元のステージに向かっていく。
かと思えば。
ととと、と軽やかなステップでこっちに戻ってきた。そしてお姉ちゃんは、わたしにねだるように笑顔を振りまいた。
「終わったら、瑞のシチューが食べたいな」
なぜかその声は鳴り止まない大歓声の中でスーッとわたしに聞こえて来た。サムズアップしておくと、ガッツポーズ。笑顔をさらに綻ばせて、気合をもう一つ入れて、後ろ手を振って今度こそステージへと向かっていった。
彼女はわたしのお姉ちゃんで、アイドル。小豆野路ライブツアーの千秋楽、始まり始まり。