プロローグ
この世界の名は、アキレア。
雲霞の如く魔道士で溢れるこの世界は、世界的規模の魔法戦争が絶えず勃発していた。
かつて世界最強と呼ばれ、そして唯一平和を願った大魔女『レイナ』が、上空に巨大な大地を召喚し、世界は二つ分断された。
世に言う『世界大分裂騒動』である。
その偉業が実を結び、このアキレアに一時の平和が訪れた。
後に、名付けられたこの二つの世界。
召喚されし大地を新たに地面と称して上空に住する者の世界、『アキレア天空界』
誇りと共に歴史を辿った大地を踏み、召喚されし大地を空として仰ぐ者の世界、『アキレア地底界』
清純な空と湧き立つ白雲が眩い天空界に住まう子供たちは、地平線の彼方まで広がる海を知らない。
陽光は遮断され、常夜と化し、それでも生命の灯火とも思わせる灯りが儚く尊い、地底界に住まう子供たちは、水平線の彼方まで広がる空を太陽を知らない。
互いの欲求が欲求を呼び、絶えない渇いた声。
海が、光が、空が、太陽が、平和が、軍事力が、魔力が、欲しい。
欲に欲を重ねた、両世界が行き着く先は結局――
「奴らが消えてなくなればいい」
「あの性悪魔女め、大地を生むなど、余計なことをしやがって」
皮肉にも、また始まった。
――大地戦争