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第3話 ここは⋯⋯どこ?

 再び走り出して15分ほど経ったか⋯⋯。

 小さな村が見えてくる。


ーシンシア地区ボコレ村ー


「さぁ、着いたぜ。オレが世話になってる ”ボコレ村” だ」


 そう言うと、真奈美をそっと下ろす。


 なんだか久々に踏む地面に、膝がガクガクと笑っている。


「はぁ~」


 彼女は、静かにため息をつくとゆっくりと顔を上げた。


 そして、その視界に飛び込んできた光景に驚愕する。


 全て木でできた建築物の数々。

 地面も土がむき出しで舗装など何もされていない。

 その街並みは、開拓時代のアメリカ西部を思わせる。


 皮の防具を着け、弓矢を背に悠然と通り過ぎて行く若い女性。

 その後ろを、ブレストプレートを装着し、長剣を下げた青年が追う。


(⋯⋯何かのイベント?いや、村おこしかなにか?)


 そう思いながらも、()()()見覚えのある光景な気がしてならない。


 空から降り注ぐ青く淡い光。

 村には、街灯一つ付いていないが全体がハッキリ見渡せた。

 光に包まれた村は、これまた幻想的であったりする。

 それにしても、月明かりにしてはやっぱり明る過ぎる。


 真奈美は、ふっと空を見上げると思わず膝から崩れ落ちた。


「つ⋯⋯月⋯⋯月が二つ。しかも、でっか⋯⋯⋯⋯」


 空には、普段見てきた満月の四倍はあろうかという大きさの星が昇っていた。

 しかも、二つ。


 今にも泡を吹きそうな彼女を不思議そうに見下ろす毛皮の男。


「そりゃそうだろ?二重(ふたえ)の月は、明日だからなぁ」


「二重の月?はっ?なにそれ?」


 そう言うと、男の顔を見上げる。


「ははは。姉ちゃん、まずそのヨダレなんとかしな。あんた上から下まで汚れ過ぎだぜっ!」


 真奈美は、袖で口を拭うと顔を真っ赤にして俯いてしまう。


 怒りなのか、恥ずかしさなのか⋯⋯


「なぁ、姉ちゃん。ホントに二重の月を知らねぇのか?」


 コクっと頷く彼女。


「マジ⋯⋯かよ。あんた、文字通りの箱入り娘かなんかか?⋯⋯まぁ、いいや。知らないって言うなら教えてやるけどよ」


 頭をポリポリ掻きながら続ける。


 男が言うにはーーーー


 ひと月のうち一週間、星の周期の関係で一夜に二つ月が昇る。そして、この二つの月が半年に一度だけ同時に満月になる。それが、二重の月。

 明日だということだ。


 混乱しそうな頭を、常識も非常識も織り交ぜて必死に状況を理解しようとする真奈美。


(⋯⋯どうやら常識らしいこの “二つ” の月。大きすぎるオオカミ。人間離れした強さのこの人に、おかしな格好の人達。落ち着いて私。⋯⋯ここは、素直にまず認めよう。ここは、日本⋯⋯いや、ち⋯⋯地球じゃない。⋯⋯たぶん、い⋯⋯異⋯⋯)


 異世界。

 認めてしまえば納得のいく点は多い。

 まず、拉致後、居場所を知られない様にするならスマートフォンを盗むなり壊した方が手っ取り早い。

 そもそもスマホの電波が入らない。GPSが取得できない事態おかしな話だったのだ。

 今時、アフリカのマサイ族だって携帯電話を持っている。モンゴルの大草原でも電波が入る時代なのだ。

 寝ていたのも数十分か長くても小一時間程度。

 ほんとに拉致されたのだとしても、国外はありえない。国内で、集落から走って一時間圏内の所で電波が入らない場所なんて今時ありえない。


 そして、この男を含め人々の格好だ。


 胸周りと、骨盤周りには防具があるくせに、腹周りにはどの人を見ても何もない。何なら肌が露出している人も多い。そもそも、守る気あるのか?と疑問になるような格好なのだ。

 きっと、防弾チョッキの方がよっぽど防御力が高いだろう。

 この男に至っては、黒の皮のパンツに何かの動物の毛皮をマントのように羽織っているだけ。

 正面から見たら上半身なんて裸と変わらない。


 さらに、この風景。

 見覚えがあるはずだった。

 散々漫画やゲームで見てきた景色と雰囲気がほぼ一緒なのだから。



「ここは、ホントに⋯⋯」



 空いた口が塞がらない彼女も、月たちは等しく優しい光で包み込んでくれた。


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