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プロローグ

「魔女には死をっ!」


「「「魔女には死をっ!」」」


満月の夜。

青く淡い光に包まれた処刑場。

木々達のカサカサと鳴らす葉音が、幾度と繰り返されてきた惨劇をより高揚させる。


その中心には、2メートル程の高さに作られた木製の処刑台(ステージ)がある。

所々赤黒く染まったその上で、杖を高々と掲げながら叫ぶ司祭の声に民衆が沸き立っていた。

何百人いるのだろうか?

皆、拳を高々と上げ、目は血走っている。

司祭の言葉を合図に漆黒の鎧を纏った5人の騎士が松明を片手に歩みを進める。

その炎は禍々しく闇を照らしていた。


騎士の進むその先には、5メートル程の高さだろうか?

木製の十字架に架けられた女がいた。

恐らく、まだ、二十歳にも達していないのではないだろうか?

年若いその女は、あちらこちらが破け泥まみれになった見窄らしい服を纏っている。

縛られた両手足は鬱血し、既に紫色に変色している。

よほど抵抗したのだろう、縄には血が滲んでいた。


破れた服から見える透き通るような白い肌は、所々裂けひどく痛々しい。

きっと鞭を何度も打たれたのだろう。


しかし、目隠しと猿ぐつわをされている彼女は、自らの身体を確認することも苦しみを訴えることもできず、群衆を見下ろすようにぐったりしていた。


そんな彼女の足元には大量の藁が敷き詰められている。


黒い騎士たちは、正にそこへ向かっていた。



「やめろっ!やめてくれっ!彼女が何をしたっていうんだ!」


ステージ上の断頭台に首を置かれた男が必死に叫ぶ。

男は拘束具で固定され、身動きが取れないでいた。


「んんー!んーーー!んーーー!」


その声を聞いた十字架の女は必死に声を絞り出す。

残り少ない力を振り絞って必死に首を大きく横に振った。

彼女はまだ知らない。

彼が断頭台に上げられていることを。


「彼女が魔女なんかじゃない事ぐらい皆も知っているだろう!もう、こんな事はやめ⋯⋯グフゥッ!」


口から小さな肉片が勢いよく飛び出す。

それは、赤い飛沫を連れながら弧を描くように地に落ちた。

断頭台の男は執行人に顎を蹴り上げられ、そのまま頭を踏みつけられていた。

木製の断頭台が首にミシミシとめり込んでいく。

男は血を吐きながらみるみる鬱血していった。


グチュ、グチュ


噛み千切れた舌を踵で擦り潰すと、ニヤニヤと笑う司祭。


「ふん。これで、少しは静かになるだろう。ん〜、予定を少々変更する。この男から殺れっ!そっちのほうが盛り上がりそうだ」


小さな声で執行人に伝えると、右腕を上げる。

処刑執行の合図だ。


無言のまま大きく剣を振り上げる斬首役の執行人。


「いや、待て。女の目隠しを外せ」


別の執行人に、司祭はそう指示を出す。


果実をむしり取るように目隠しを外された彼女は、慌てて男の声のした方へと向く。

男は十字架の女の方を向くと静かに微笑んだ。



「フフ。殺れっ!!」


そう言うと、司祭は右手をスッと下ろす。


大きく振りかぶられた剣は一気に振り下ろされる。

と、同時に大きな塊が勢いよく吹き飛んだ。


「んんーーーーー!んんーーんーー!んーーーっ!!」


目を見開き、気が狂ったかのように絶叫する彼女。

縛られた両手両足をガタガタ振るわせ思いっきり暴れる。

十字架がミシミシと音を立て今にもへし折れそうだ。

手首や足首に減り込む荒縄が赤く染まっていき次第に雫を垂らし始める。

猿ぐつわを噛み切る事が出来なかった歯はへし折れ、口からヨダレのように血を流し始めた。

目頭からは赤く染まった涙が流れ始める。

その目は怒りと憎しみを混ぜ合わせた呪いを漂わせていた。



「民衆よ、見よっ!この顔を。やはりこの女は魔女だ!」


左腕を彼女の方へ大きく広げアピールする司祭。



うおおおおおおおおお!


民衆のボルテージは最高潮に達していた。


「燃やせっ!」

「焼き殺せっ!」

「聖火にて粛正をっ!」


司祭は両手を広げ天を仰ぐとそのまま膝から崩れ落ちる。その目は大きく見開き、すでに絶頂に達しているようだった。

止まぬ罵声に心の底から快楽を感じている司祭。

人を絶望のどん底にたたき落とすことで快楽を得るサディストだった。


(頃合いか)


「さぁ、火を放てっ!!」


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