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11、隠れキャラを演じよう!

 朝、目覚めると、なんだか妙に静かだった。障子を開けて部屋から出ても、中庭にも誰もいない。


 昨日、そういえば、三成さんの様子がおかしかった。まるで、私をさっさと部屋に追い払いたいような雰囲気があった。


 それに、昨日の朝は、障子の外には常に誰かがいた。私の怪我を心配してのことかと思っていたけど、あれは見張りだったのかもしれない。


 昨日の夕方には誰もいなかった。だから、おにぎりに毒を盛る隙があったのかもしれない。


 もしかして、昨日の薬草集めから戻ったときには、何かが起こっていたのかな。




 食事に使っていた大きな広間に入っていくと、そこには何人かの人が、横になっていた。やはり、この部屋は、ぷんと血の臭いがする。


「あっ、姫様!?」


 木桶を持った人が、部屋に入ってきた。私の姿を見て驚いた顔をしている。ここに立ち入ってはいけなかったのかな。


「誰もいないから、どうしたのかと思って」


「あの、大丈夫なのですか。別の者から、姫様は怪我が悪化して重篤な状態だから部屋には近寄らないようにと言われていたのです」


 その後ろから、やはり木桶を持った人がやってきた。


「そこに立たれていると、水が運べま……」


 その声に、私は一瞬ゾッとした。深夜に障子の外で囁いていた声に似ている。


 彼は、私の姿を見て青ざめている。まるで幽霊でも見たかのような表情だ。紫の光を放っているように見える……敵ということか。私を毒殺しようとした一人ね。


 私は、逃げたくなった。でも、ここでひるんでいては、また私は命を狙われるだけだ。



「昨夜の姫様の警護は、おまえだったよな? さっき、姫様の怪我が悪化していると言っていたが、どういうことだ?」


「あ、い、いえ、いや……」


 毒殺されそうになったと話すべきか……でも、恨みを買うと、さらに狙われるかもしれない。


 彼らは、私がプレイヤーなら殺したいんだ。でも、プレイヤーでなければ、隠れキャラだと考えるのよね? ゲームなら、隠れキャラの攻略は、ポイントが高いはず。


 だから、お爺さんは、私がプレイヤーだとバレるとマズイと言っていたのね。命を狙われるから……だとすれば、身を守る腕力のない私には、対処法は一つしかない。



 隠れキャラを演じよう!



 私は、首を傾げ、やわらかな笑みを浮かべた。


「何かの誤解があったのかもしれませんね。それより、いま、どういう状況なのですか? 皆さんの姿が見えませんが」


「あぁ、昨日から近くでちょっと農民との小競り合いがありましてね……比叡山の僧兵の残党も混ざり込んでいるようで……」


「皆さんは、それを鎮圧しに向かわれたのですか」


 私がそう尋ねると、彼は頷いた。その後ろでは、私を毒殺しようとした男が混乱したような顔をしている。


「僧が民をそそのかしているようです」


 うん? 僧兵なら、唆すより強制してるんじゃないのかな。でも、残党? 延暦寺の焼き討ちは、既に起こったことなのかな。


「残念ながら、彼らの中には、僧にあるまじき行動をする人がいると聞きます。民は脅されているのかもしれませんね」


「確かに。お屋形様も、同じようなことをおっしゃっていたようです」


 お屋形様って、誰のこと? 秀吉さん? 信長さん? 


「そうですか。あの、ここに横になっている人達は怪我人ですか。血の臭いがしますが」


「はい、昨日の最初の被害者です。今朝、運ばれてきたばかりで……。昨日、姫様達が集めてくださった薬草から、塗り薬を作ったところです」


「じゃあ、怪我の手当てを手伝います。薬を塗るくらいなら、私にもできますから」


「はい! 是非、お願いします」



 私は、怪我人に近寄った。ここにいるのは、男性ばかりだな。男女逆転の世界だけど、兵は男性の方が多いのかもしれない。


 私は、木桶に入った水で手拭いを洗い、そして怪我人の傷口を丁寧に拭いていった。そして、ヨモギをすりつぶしたようなドロドロしたものを傷口に塗った。


 そっか、ヨモギって消毒効果があるのね。



「う、うぅ……」


「姫様、ちょっとこちらをお願いできませんか? 怪我がないのに、うめいていて……」


「はい」


 呼ばれた人の方へ移動すると、確かに外傷はないように見える。あれ? 右足首が変な方向を向いてる。骨折してるじゃない!


「右足が折れてます。そっと履き物を脱がせてください。あと、副木にできそうな板を持ってきて」


「ふくぼく? 薪でもいいですか?」


「厚くないものならいいよ」


 怪我人は、腹を押さえている。血は出ていないけど、きっと打撲ね。肋骨が折れているかもしれない。


 きっと、冷やす方がいいはず。シップがないな。私は、水で濡らした手拭いをその部分に当てた。


「持ってきました!」


 私は頷き、良さそうな板を折れた足に当てて、包帯で固定した。



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