閑話 三人の神
―メルガノス視点―
行ったか。
テトナがあんなに大きくなっているとは思わなかった。
タロスとは仲良くなってくれそうだ。
ダグとフランはいつの間にか俺の前のソファーに座っていた。
「メル、あの子がもしや」
ダグが気づいたように俺に問うてきた。
「ああ、『破滅の忌み子』だ」
「ゆうに千年ぶりじゃないか。どこで見つけたんだ」
「ウェグリアのセトレンダム公爵領だ」
「またあの豚野郎のところか。全く、あいつに関しては悪い話しか聞かないな」
「今代の“繁栄王”も排除を試みているらしいが、伊達にウェグリアの中枢を仕切ってない。あの慎重で狡猾な性格で知られる豚がそう簡単にやられるはずもない」
「どちらにしても見ていることしか出来ないな」
ダグは肩をすくめて言った。
「そういえばダグ、最近フランとはどうだ?仲良くやってるか?」
俺がにやにやしながら訪ねると、硬派なこいつはわかりやすく動揺した。
「…なんだ急に。別にどうもないぞ」
「なんともわかりやすいもんだな。そろそろ慣れとけよ娘もできたんだから」
「ふん。お前に心配されるまでもない」
そう言ってダグは拗ねたように押し黙った。
「ふふ。あなたのそういう子供っぽくてかわいいところに私は惹かれたんですよ」
横で座っていたフランは笑ってそう言った。
「私を幸せにしてくれるとあなたが言った日のこと、まだ覚えてますからね」
「と、お前の妻は言っているがどうなんだ?」
「知らん。もう俺は何も言わん。フランもそういうこというのはやめてくれ頼むから」
フランが飄々としている横でダグはガチ照れしている。
「ところで、メル」
突然フランが俺に問うてきた。
「何あの子?すごくかわいいじゃない。加護欲がすごく掻き立てられるのだけれど。持って帰っていいかしら?」
忘れてた。こいつ重度のショタコンだった。
「駄目に決まってんだろ。ひとりで盛り上がるのはいいが本人には迷惑をかけないと昔豪語してたの忘れたか」
「今までは天界から見守ることしか出来なかったからよ。目の前にダイヤモンドの原石があるのに触れずにはいられないわ」
「胸を張って言うな情けない。お願いだから手は出すなよ?」
「わかっているわ。彼に嫌われたくはないもの」
非常に心配なんだが。
「それで、タロス君をこれからどうするんだ?」
いつの間にか復活していたダグが真剣な表情で聞いてきた。
「まず一か月神界でタロスの自由に過ごさせる。これまでまともな生活してなかったらしいからな。そん時に他の神連中にも会わせておく。その後、お前と武神と魔術神を呼んで鍛えさせる。あいつが下界で過ごしたいらしいから冒険者になるのを薦めたんだ。やらせるからには頂点になってもらわないとな」
「そうか。うちのテトナにも頼む。いいよな、フラン」
「あなたが望むのなら。でも過度な厳しさは必要ないですよ、メル?」
「あ、ああ。わかっているさ」
いま、フランから黒いオーラが出かけてた。
「ああ、そういえば突然酒神がいい葡萄酒をくれてな。地竜のジャーキーで飲もうか」
昨日急に訪ねてきて「いい葡萄酒手に入ったからあげるね~飲んだら感想教えて~」って言って置いて去っていった。
勿論だがいつもの通り酔っ払っていた。
「そうだな。久しぶりに会えたからな。ゆっくり飲もうか」
「あなた、弱いんですから飲み過ぎないで下さいね」
「ははは、相棒の俺が責任をもって止めるさ」
真昼の酒盛りはタロスとテトナが帰ってきた夕方まで続いた。
タロスの虜になる神はフランティアのみではありません。
あと五人くらい出てきます。