プロローグ 神と名乗る男
素人ながら頑張るんでよろしくお願いします
「・・・・」
僕は今日もゴミとして捨てられた角兎の生肉を食べる。
運よく近くで見つけた川で汚れを落としてから、ぼろい魔導ライターで十分に火を通して岩塩を少々。
何度も試行を重ねて編み出した技だ。
実食。うん、美味しい。
思えばこの路地裏で過ごすようになってから二ヶ月は経っただろうか。
自分に暴力をふるい続けた親のもとから逃げ、この街の住民の目につかないよう、路地裏の奥の奥でずっと過ごしている。
たまに森に行って角兎や野鳩を捕まえたりその皮で服を作ったりしてるけど、それにも飽きてきた。
この生活を始めたころは不安と恐怖で泣かない日はほぼ無かった。
知らない大人の人がみんな真っ黒な影に見えるものだった。
だけど、今はもう慣れたものだ。
それでも、慣れたら慣れたで新たに僕を悩ませることがあった。
「僕は何のために生きているのだろう」
誰にも認められないごみのような生活に疑問は尽きなかった。
まあ、こんなことを考えても意味がないだろうけど。
聞いても答えてくれる人なんていないだろうし。
「…こいつは惨めだ、黒髪黒目の忌み子は百年に一人生まれるかくらいなんだが…」
急に声が聞こえてびっくりした。しかし聞き慣れた罵倒ではない。
そもそも路地裏の奥に人が来るなんて珍しいのに。
「この歳で大したもんだ。野垂れ死んでいてもおかしくねえのに」
僕のことを言っているのだろうか。彼は何か知っているのだろうか。
僕は気力を振り絞って声を出した。
「…あの、すいません」
顔を上げてみると人がいた。
声の主は男性だったようだ。
髪は金髪で長く顔は整っており、背が高く見慣れない衣装を着ている。
僕が急に話しかけたので少し驚いているらしい。
「…何だ?聞きたいことがあるなら聞こう」
少し困惑した様子で彼は返答した。
「何故僕の人生は楽しくないのでしょうか?」
「…何?」
「僕は物心がついたころから親を名乗る人々に虐げられてきました。ですが僕は生まれてから罪を犯したつもりはありません。僕は今までの人生楽しいと思ったことが無いのです。何故なのでしょうか?」
一通り僕が自分の疑問を伝えると、話を聞いてくれた彼は何故か驚いたような顔をしている。
「…おかしいな、ひどく冷静だ。泣きつくか、襲い掛かるかと予想していたんだが…」
男性は小声で何かを言ったようだけど、よく聞こえなかった。
「…お前は今まで何をして過ごしてきたんだ?」
「そうですね…これといったことは何も」
「親はどこに住んでいる」
「命からがら逃げてきましたので、詳しい場所までは」
「食事はどうしてたんだ」
「ゴミや魔獣の死骸を食べられるところだけを」
男性は難しい顔をして頭をぼりぼり掻き出した。
かなり動揺してるっぽい。
「…わかった。ひとまず俺の元に来い」
「何をしてくれるのですか?」
「お前を養いながら世界を教えてやる」
男性は膝をついて、僕の頭に手を置いた。
されるがままに撫でられる。
「安心しろ、お前の人生に楽しみを与えてやる。この全能神の名において」
彼が指を鳴らした途端、僕は彼とその場から消えた。
―――――――
その後、豪華な衣服を着た偉そうな男と数人の兵士がその付近に現れる。
「おい!いたか!?」
「いえ!見当たりません!」
「こちらも念入りに探しましたが…」
「かっ!手早く見つけやがれ!市民に事情がばれてはたまらん」
男は心底苛立ちながら舌打ちをした。
「しらみ潰しに探せ!!いいか!?必ず見つけて殺すのだ!!この国のために!!」
「「「「「ハッ!!」」」」」
「クソ、二ヶ月前から探しているというのに!ガキは隠れるのが上手だな」
男は夜空の月を見上げて言った。
「・・国王様、必ずや『破滅の忌み子』を滅ぼして見せましょうぞ」
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