表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/40

06:日ごろの行い

「あれえ、希くん? どうしたのー?」

 ちょっと大きめの紙袋を手に、亜矢が戻ってくるなり若原を見つけた。レジ最中の若原が「お〜」と軽く片手を上げてそれに答える。

 小走りにあたしに駆け寄る亜矢の手の紙袋から、赤いリボンがこぼれている。

「決めたの?」

「うん! 可愛い置時計があってね。それにしちゃった〜」

「あーよかった、これでゆっくり出来る」

 わざと溜息をついてそう言うと、亜矢はニッコリ極上の笑顔になった。

「あはっ、ありがと結ちゃん、お礼にケーキセットご馳走する!」

「……クロスハウスのね」

「え〜〜、あそこ高いよ〜。でもおいしいよね、クロスのチーズケーキ!」

 このあたりで一番人気のあるカフェの名前を挙げると、亜矢は唇を尖らせて抗議したあと、思い出し笑いをふふ、とした。

「亜矢ちゃん、もしかして亮輔の?」

 レジを済ませた若原が亜矢の手の紙袋を覗き込んでそう聞いた。

「そう! 来週だもんね、亮くんの誕生日。希くんは? もしかしてひとり?」

 亜矢がわざとらしく周囲をキョロキョロと見回す。大概、若原は誰かと一緒だ。それも女の子。学校でも、登下校でも。……しかも、同じ子じゃないのがすごい。

「何その意外そうな顔。たまにはひとりがイイときもあるんだって」

「ふう〜ん……んじゃ結ちゃん、二人でカラオケ行こっ」

 亜矢があたしの腕に自分の腕を絡めてそう言うと、若原が「ツメタイ……」とがっくり肩を落とした。

「たまにはひとりがいいんでしょー?」

「んーなつれないこと言わないで、亜矢ちゃーん」

「そーだよね、若原っていつも女の子と一緒だし」

「ちょちょ、紺野ちゃんまで!」

「あたしたちが相手しなくても、いーっぱいいるんだもんねぇ〜」

「うわあオレ、何気に酷い言われよう……」

「残念、若原。日ごろの行いって大事だね」

「ううう、酷い誤解だ……」

 泣き真似をする若原を亜矢と二人でクスクス笑って、あたしたちは腕を組んだまま歩き出す。途中でくるりと亜矢が振り返る。

「希くーん、ホントに置いてっちゃうよーお?」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ