24:意味ありげな宣告
昨日のぎくしゃくした感じにまだ慣れないけれど、なんとかなりそうだ、と思った。
若原が気づいてたのは意外というべきかさすがというべきか――まあ、本宮の一番の友達だからこそ、かな。今日本宮とは、朝挨拶したのと、休み時間にちょこっと喋っただけだったけど……これも少しずつ慣れてくるんだろう。
亜矢には、まだ話せていない。チャンスをうかがってはいるんだけど、今は亜矢、自分の新しい恋愛でいっぱいで、彼の話ばかりであたしのことや本宮のことを話題に上げなくても充分過ぎたから――まあ、あたしもこんな慣れない状況だから、もう少し時間を置いてからのほうがいいかなとも思ってるんだけども。相手が本宮なだけに、余計に気が重い。
「ねえ」
そんなことを考えながら放課後の渡り廊下を歩いていたあたしは、突然そう呼び止められた。
一瞬、あたしに向かって言ってるのかわかんなかったけど、すれ違いぎわだったし、他に人はいなかったし……反射的に振り返ると、厳しい顔があたしを見据えていた。
ええと――あの子だ。若原の彼女。内……沢雪緒、さん。
「……あたし?」
「昨日、希と会ってたわね」
鋭い声が鋭い指摘をする。昨日……そうだ、クリームソーダ。
「ああいうこと、しないで」
「ああいうことって……」
だって、昨日は若原がいきなり誘ってきたんだもん、別にあたしが誘ったわけじゃ……
「本宮くんと付き合うんでしょう?」
言い返そうとした瞬間、内沢さんがすばりと言った。それに驚いて、あたしは黙ってしまう。……なんで知ってるんだろう。
「ああいうことしないで」
「あれは……若原が」
「わかってるわ。希が誘ったにしろ、しないで」
語調を強めてそう言うと、内沢さんはきりりと眉を吊り上げる。いつもあたしのこときつく睨んでるけど、それ以上に怒りのこもった視線。
「本宮くんと付き合うなら、希には近づかないで」
「どういう意味? 別に、若原とはそういうんじゃなくて」
あたしが問い返すも、内沢さんは何も言わずにくるりと踵を返していってしまう。追いかけて――とまでは気持ちがついてこない。なんなんだろう。
あたしが若原のこと好きなんじゃないかって勘違いしてる……のかな。でも、本宮と付き合うことになったの知ってたし……なんなんだろう。
それにしても若原、内沢さんに言ったのかな、あたしと本宮が付き合うこと。昨日の今日だもんね。まあ別に隠すわけじゃないけど、そんなペラペラ喋らなくってもいいのに。それに――自分の彼氏が他の女の子誘うのがそんなにイヤなら。
「首に縄でもつけときなさいってのよ」
そうひとりごちずにはいられない。若原の方からちょっかい出して来るんだもん、あたしが好きであいつに近づいてるわけじゃないのに。